【感想・ネタバレ】決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月のレビュー

あらすじ

辞任させられたCEOが挑んだ勝ち目のない戦いは類例を見ない大逆転劇を生んだ。ドラマよりドラマティックな企業ノンフィクションの新たな傑作!

コーポレートガバナンスとは何か?
会社とは誰のものか?

(目次・抜粋)
第一章 霹靂
LIXILグループの社長兼CEOの瀬戸欣哉のスマートフォンが突然鳴った。「急な話だけれど、あなたには辞めてもらうことになりました」

第二章 齟齬
なぜ瀬戸は辞任させられたのか。取締役会議長で、事実上のオーナーである潮田洋一郎とはいくつかの点で経営への考え方が異なっていた。

第三章 真相
電話での「通告」から四日後、CEO交代を発表する記者会見は異様な雰囲気に包まれた。その日の晩、瀬戸の事実上の解任の経緯が明らかになる。

第四章 波紋
瀬戸の辞任劇を異常なことと感じ、LIXILグループの幹部、マスメディア、機関投資家など、社内外の関係者が動き出した。

第五章 決断
第六章 蜜月
第七章 反骨
第八章 仰天
第九章 秘密
第十章 共闘
第十一章 布告
第十二章 集結
第十三章 正義
第十四章 援軍
第十五章 混沌
第十六章 深謀
第十七章 激突
第十八章 敗北
第十九章 不屈
第二十章 奇跡

ついに運命の日は来た。二〇一九年六月二十五日、LIXILグループ第七十七回定時株主総会で待っていたのは信じられないような大逆転劇だった。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

実際に2018年に起きたLIXILでのCEO解任劇のドキュメンタリー。
LIXILはトステムとイナックスが対等合併してできた会社(他3社)だが、実質はトステムのほうが影響力があった。そのトステムの創業家で株式を3%所有している潮田氏が自身の私利のために会社を利用するために、モノタロウから招いたCEO瀬戸氏を突如解任するところから本書は始まる。

瀬戸氏は住友商事からモノタロウを創業から上場まで果たした人物で、このまま下がって別のオファーを受けたほうが、キャリアにも傷がつかず、金銭的、体力的、時間的にも合理的だったはず。

だが、自分の信条「Do the Right Thing」を貫くために、勝率の低い戦いに挑むことになった。

実際に、株主提案の取締役が承認されることは少ないらしい。

コーポレートガバナンスを学ぶのに良いと聞いたが、どのようなサポート会社が動いているのか(弁護士事務所、IRサポートなど)実名と日付入りなので、臨場感もあり楽しく理解できた。

以下、指名委員会等設置会社について

設置組織:
・株主総会
・取締役会(3名以上、社外取締役が過半数):監督
 取締役は業務を執行しない。監督する。
 取締役会の中に3つの委員会を設置
  指名委員会
  報酬委員会
  監査委員会
・執行役:業務

特徴:
・代表取締役がいない
 代表執行役、執行役がいる
・監査役がいない
 会計監査法人設置義務

指名委員会等設置会社は取締役が多くなり企業負担が大きい。
そのため、指名委員会と報酬委員会がない監査等委員会設置会社もある。

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2025年03月22日

Posted by ブクログ

経営はアートをサイエンスに変える作業だ
一回きりの状況判断はアートと言っていい。しかし、その中身を分析し、再現性を高めるとサイエンスになる。経営の要諦は再現性を高めること。だから経営とはアートをサイエンスに変えることだ

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2025年02月03日

Posted by ブクログ

一気に読みました。有名企業の経営層で起こった、有名なこの出来事の8ヶ月間を追体験した読後感です。
昨今揶揄されるJTC(古いタイプの日本企業)における不条理が、法のルール、それだけではなく、というよりも人々の義憤、正されるべきは正すべきというシンプルな考えが、一人ひとりの行動に結びついていき、物語はクライマックスへ。
この物語は、集まった人々とそのタイミングが作用して、大きな流れができた結果なのだと感じました。
そのような機会が到来せずに、無念の継続が続くケースもまた多くあるのだろうと、この物語を読んでいて感じ入りました。
いずれにしても、こういう事例があったことは大きな学びで、何か明日への活力をもらったような気がしました
是非ご一読を

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2024年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

傍から見てこんなに面白い話はないというくらいな逆転劇。瀬戸氏側に立ったストーリーなので、潮田氏側からはどういう言説が語られるのか興味深くはあるが、瀬戸氏側視点が圧倒的に正しいと思わせる説得力があった。
企業の経営層の内部の実情は伏魔殿なのだなといろんな企業関連の本を読むと思う。
バーバラ・ジャッジ氏がフィクサーな感じで、なぜこの人が社外取締役として変な動きをするのか疑問だった
騒動の1年後に亡くなっているのを見ると、とっくに限界だったのではと思い、それでも本能的に権力にしがみつく姿に暗澹たる気持ちになった

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2024年03月08日

Posted by ブクログ

リアルな内情が包み隠さず書かれていて、吸い込まれるように読み終えた。
会社を良くしたいと奮闘するには、相当な知恵と力が必要であると感じた

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2023年08月22日

Posted by ブクログ

最近はどの上場会社も「ガバナンス至上主義」の傾向が強い。持続的で透明な会社経営という観点でガバナンスが目指す独立性・客観性は確かに重要だが、余りにやり過ぎるとその会社が持つ独特の色や特徴が失われてしまうのではないか、監督と執行のバランスはとても難しいと感じた。

あとがきにある「ガバナンスの実効性を高めるのは社外取締役の数ではなく、社内外の人材の意識」はごもっとも。形式的な体制を整えるのが目的ではなく、それを運用する人達の意識・責任感が伴って初めてガバナンスは機能する。

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2023年05月28日

Posted by ブクログ

LIXILで約3%の株式しか持たない創業家出身者が、外から呼んできたプロ経営者を追い出すという事件。勝目の薄い戦いに臨んだプロ経営者がこの戦いを勝ち取った。経済小説やドラマのようなノンフィクション。凄まじい攻防に臨場感あり、ページを捲る手が止まらない。

プロ経営者というのが瀬戸欣也。東大ではあの村上世彰とも同級生。本著には村上ファンドも瀬戸欣也の見方として登場してくる。瀬戸は住友商事出身でモノタロウを立ち上げたやり手社長だ。

対して創業者側。そもそもLIXILは、2011年に誕生。トステムとINAXが統合した後、住生活グループに社名変更。その後、サンウエーブ工業や新日軽、東洋エクステリアとくっついて今の形。相手はトステムの創業家で現役のLIXIL経営者。

外遊中の瀬戸に一本の電話。「指名委員会の総意で、あなたには辞めてもらう」物語はここから始まる。片方には、瀬戸が自ら辞めたいと、片方には皆んなの総意だと。偽計によって人事を左右した結果として株価を下げたのであれば、株主代表訴訟の対象にもなる。経営陣が割れる。

コーポレートガバナンスの是正に挑む死闘の記録。お家騒動とも異なる、権力と組織の私物化の果て。どんな集合にも、ルールで他者を操る構造には誤った支配が及ぶリスクはあり得る。戦うなら、戦う意志と力が必要だ。

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2023年03月30日

Posted by ブクログ

シンガポールに移住するという潮田さんのニュースは見たことがありました。この本は、そんな気まぐれな創業家とスカウトされ社長就任されながら、解任されたしまった人が復活する物語です。経営の勉強にもなるし、一気に読めます。

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2023年01月06日

Posted by ブクログ

ドキュメンタリーだ。LIXILの社長交代劇に端を発した、8ヶ月に及ぶ経営陣の 内部紛争の物語である。

LIXILの母体であるトステム創業家の潮田氏が、プロ経営者として招聘した瀬戸氏に偽計を用いる場面から物語は始まる。

経営の方向性の違いから、瀬戸氏はトップからひきずりおろされる。しかしその経緯の不透明さから調べていくと、辞任劇そのものが潮田氏の二枚舌から発生していたことが分かる。この出来事を蟻の一穴として、瀬戸氏はLIXILに闘いを挑んでいく。

創業家への忖度でガバナンスの効かない経営陣、それをいいことに会社を思うままに動かそうと暗躍する潮田氏。無理な闘いと思われた瀬戸氏の周りに援軍が現れ、最終的にCEOに返り咲くまでの、見事な逆転劇。

トステムや瀬戸さんを始め様々な方への丹念な取材力が、時間を忘れるほどの物語のテンポの良さにつながっている。

企業といっても人間のなせる技であり、そこにはややもすると人のエゴが混ざり込んでしまう。現在の会社に求められるコーポレートガバナンスを学ぶ意味でも、一級の書籍であると断言できる。

企業もののドキュメンタリーは大好物とはいえ、350ページの ハードカバーを1日で読み終えてしまった、、、

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2022年12月18日

Posted by ブクログ

【決戦!株主総会。LIXIL死闘の8カ月】
1.物語
ノンフィクションです。2018年から2019年に発生した東証1部上場/LIXIL社の物語です。3%株主かつオーナー経営者と雇われ社長が経営方針と経営権をめぐり対立します。その一部始終が記載されています。

2.購読動機
株主総会は、会社が起案する議案と株主が起案する議案の2種が存在します。外部からはどちらの議案が決議されたのかは?判断することができます。
一方で、議案が決議されるにあたってどのような議論がされたのかは?議場に出席した株主でない限り判断することは困難です。
このLIXILの経営権をめぐる対立は、当時の報道を通じて目にする機会が多かったです。
そこで、株主総会と経営権の2つを勉強する意味で手に取りました。

3.学び
LIXIL現CEOの瀬戸社長(Monotaro創業者)の考え方、行動、そして人となりが記者の取材を通して感じ取れる内容です。
①正しいことを行う。
②あきらめない。
③何がために、誰のために経営をするのか?
この3点がぶれることはありませんでした。また、朝5時に起床してルーティンを行っていることも大変に関心深かったです。

経営権を取り戻す過程についても学びがあります。
1)臨時株主招集に向けて。3%株主をどう集めたか?
2)元CEOとして、どのように事実・意見を公表していくか?広報活動。
3)議案賛成の取得に向けて機関投資家とどのように対話をするか?
アクティビスト、パッシブ、アクティブ。3タイプ使い分け。

4.読み終えて
瀬戸社長そして瀬戸社長を支えるチームが相当の量をこなしていたことが読み取れます。
瀬戸社長は武蔵から東大に進学した実績をもつ方です。それほどの方が、情熱と努力をもって経営を為していることにまず感化されました。
そして、経営権を取得していくにあたっての戦略策定です。会社側提案の議案事項のどこを弱点として戦いを挑むのか?
LIXILで実際に起こったことがこうして書籍になり、読者として学び、感じ取ることができることに感謝します。

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2022年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

真実は小説よりも、、、

ページをめくる手が止まらなかった。

瀬戸さんの胆力、人望、これまでの「do the right thing」に従った実直な行動が、吉野さんをはじめとする沢山の人を惹きつけ、ワンチームとなって巨悪を倒した!

自分も機関投資家の1人として、ISSやグラスルイスのレポートにそのまま従うことが殆どだが、それを覆して50%超の賛成を瀬戸チームの力は、本当にすごいと思った。

瀬戸さんが社長をするLIXILの株は成長間違いなし!と言いたいところだが、インフレや利上げによる不況見込みで簡単には行かなそう。でも、方向性は間違っていないと思う。
ただ、あまり株が上がると、背任、犯罪者であるはずの潮田一族が保有している株が巨額を益を持ってしまうのが、なんとも歯痒い。。。

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2022年09月18日

Posted by ブクログ

LIXILの経営陣を巡る株主総会での戦いのノンフィクション。3%しか株式を持っていないトステム創業家の潮田氏は、指名委員会の委員を自分に親しい人物で固めることで、外部からのプロ経営者であった瀬戸氏を辞任させることから、話が始まる。
会社は株主の物であることは自明の理だが、機関投資家や金融機関の株主は、投資先(LIXIL)と取引があり、機関投資家もアクティビストと思われたくないため、今回の騒動に深く首を突っ込まない姿勢があった。そのため、潮田氏の独善的な経営判断が正当化されるという、コーポレートガバナンスの弱さが露呈した。
本書は瀬戸氏目線でCEO辞任させられるところから、株主総会でCEO復帰を勝ち取るところまでが描かれている。社内チャットツールのやり取りや、潮田氏サイドがIRジャパンなどのコンサルを会社経費で雇っていたことなど非常に面白かったが、個人的にはLIXILの現場社員が渦中でどのような思いを抱いていたかが非常に気になる。恐らく、LIXILの国内営業は、工務店・ハウスメーカーがメインになると思うが、泥臭い側面もあると想定される。日々の営業先との会話とかで、今回の騒動がどれくらいの影響力を持っていたのかなど、本書では描かれてない現場目線も興味が湧いた。

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2022年09月11日

Posted by ブクログ

現役を退いて数年経ち、日経ビジネスも日経新聞も購読をやめて、地方紙でなんとなくLIXILのゴタゴタが気になっていたが、やっと納得。

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2022年08月21日

Posted by ブクログ

コーポレートガバナンスを理解したくて読みました。
瀬戸さんが勝利するのは分かっていても展開にハラハラしました。
この本を読んで良かったです。

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2022年08月11日

Posted by ブクログ

LIXILで何が起きたのか?
→上場企業を私物化した創業家取締役が起こした茶番劇。
→極論だが、取締役が全員高貴で倫理観のある人物ならコーポレートガバナンスなしでも会社は回る。聖人君子ではないとしても、とんでもない勘違いをする人が時々いるから、コーポレートガバナンスが必要となる。

→やはり、人に胸を張れないことをしてはいけない。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ただ創業家というだけで会社を私物化した潮田氏は酷過ぎるが、それを健全化するのは簡単なことではないことがよく分かった。

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2024年07月21日

Posted by ブクログ

少数株主であるオーナーの暴虐。指名委員会の形骸化。株式会社という仕組みと日本資本主義の駄目なところをギュッと凝縮した事件でした。

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2023年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この作品は一般的にはノンフィクションだが、圧倒的なドキュメンタリー作品だった
外野から見ていたにすぎないが、瀬戸さんの情熱にはとても感服した
このLIXILの件は、いまの社会にはよくあることだと思うが、ほんとうの正しさは実行されないんだなと強く感じた。
でも唯一あるのは、特定の個人の恣意的な事に公的な会社を使ってはいけない、ということ。
恣意的な思いがある人は、自分でその世界を造ればいいんだといのは、本作から学べた。

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2023年01月27日

Posted by ブクログ

めちゃんこ面白かった。勧めてくれた友人、ありがとう。

元々ニュースでいざこざがあったのは知っていたが、こんな裏側だったとは。

最初から瀬戸さんに肩入れしすぎている印象もあった。
正直、潮田さんの昔からの取引先には手厚くしたいとか、どうしてもこの会社は手元に残したいとか、プロパーならではの気持ちもわかる。
ただ、この規模の会社では無理だよなぁ…とも。

株主提案で勝てた、ことに胸熱。あと、信託銀行の仕組みもようやくわかった。仕事の面でも勉強になったぞ。

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2023年01月17日

Posted by ブクログ

大人の喧嘩。といえば、ひとことで終わるかもしれないと思った。正しいことをする、という信念で邁進することのかっこよさを感じた。

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2022年12月22日

Posted by ブクログ

読みものとして面白かった。
勝者の歴史だから当たり前だけど、ところどころ引っかかる。多分わざと引っかかるように著者が書いてる。
マスコミに内部情報をリークしたり、法的手段を取ったり。やってることは正当性あるんだろうけどモヤモヤする。こうなる前になんとかならんのか。

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2022年12月18日

Posted by ブクログ

いつもと違うジャンルの本を読んでみたい人におすすめ。

株式投資を始めたので、ちょっと勉強してみようと読み始めた。この本のテーマは、日本のコーポレートガバナンスを正したいというリクシルCEO瀬戸氏vs思うがままに会社を動かしたい創業者オーナー潮田氏の闘い。

正直、2018年当時のリクシルのニュースに全く関心がなかったのでとっつきにくい所が多かった。

間違ったガバナンスを正すには、誰もがあきらめ投げ出してしまう煩雑な障壁があり、あきらめの悪い男瀬戸氏がどうやって乗り越え闘っていったのか。良くも悪くも、日本の世の中の仕組みを垣間見た。

株主総会とは、会社の経営とは、大きくなればなるほど正義の道を貫くことが難しいと実感。知らなかった世界を知ることができ勉強になった。形骸化した株主総会、投資機関の影響力、世の中のお金のこと、法律のこと、知らないと損するようなことも多い。

自分自身の利益のためではなく、社会の利益のために動ける瀬戸氏の人柄に感銘を受けた。瀬戸氏の育った環境のことなど伝記的な部分も面白かった。

指名委員会等設置会社、ガバナンスについて他にも本を読んでみたい。

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

おもしろかった。創業者がシンガポール移住で会社移したいって会社、他にも聞いたことあるので、そこはどうなるんだろうなあ。

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2022年10月15日

Posted by ブクログ

日本社会で「正しいことをする」のがいかに難しいかがよくわかる。瀬戸氏がここまで自分を貫くことができたのは、すでに起業に成功し、「お金」「余裕」があったからだ。それほど、莫大なお金を費やさないと「正しいことをする」ことは日本では不可能なのだと思い知らされる。大きな組織に有利になるように「会社法」や「株主総会」の仕組みは煩雑になっているから、前CEOとはいえ、一個人が組織ぐるみに対抗するのは「金銭的なハードル」が高い。かくして世の中には「泣き寝入り」が横行することとなる。

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2022年10月08日

Posted by ブクログ

人間同士の欲と意思のぶつかり合い。生々しく、ドラマ以上にドラマチック、最後に意志は勝つ。
面白く勉強になりました。

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2022年09月29日

Posted by ブクログ

経営者として招聘してくれた創業者の方針と対立する経営を進めるのは、それが会社にとって正しいと思っていたとしても、神経が削れて辛いよなあと思う。活躍する経営者は、合理的な判断はもちろんだけど、強い精神力も持ってないとダメで、それは色んな修羅場を経て養われることもあるだろうけど、周りの目が気にならないような心構えを生まれつき持ち合わせてたりするのかもなと思ったりする。
一般的には、法人にとって正しい判断をすることが大事だし、上場会社は株主や債権者に説明責任を負ってるので、やっぱり創業者の想いが優先され過ぎるのはダメなんだろうなあ。基本は一族経営の会社って、その一族の想いに賛同する人たちが集まればいいから、創業者の好きなことやっちゃいなよ、人生一回きりだからね、っていうのもそれはそれでありだと思うんだけど、それするんだったら上場したあかんでって話なのかも。
日本と韓国で歴史の解釈が異なるように、過去の事実は各個人の見方があるので、潮田さんや会社提案の取締役には彼らなりの振り返りがあって、この本を読んだときに公正な目線で書かれてないなと思ったりもするのかも。名だたる会社の経営者になる人って相当な経験を積んでるはずで、当たり前だけど合理的な判断を積み重ねてきた人たちだから、違うストーリーがきっとあるんじゃないかと思っちゃいますねー。
総じて面白かったです!仕事って意見持って進めないと面白くないけど、意見持ち始めると人とぶつかること不可避だから、気持ちが廃れちゃう時ありますが、瀬戸さんの力強さに励まされるところありました。あんがと。

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2022年09月23日

Posted by ブクログ

読むのにちょっと時間がかかったけど、
面白かった

半沢直樹みたいにドラマ化してもらいたいわ

ただ、
半沢直樹はフィクションだけど、
こっちはドキュメントだからね。

潮田派のクズっぷりはどこまで本当なのかな?

瀬戸派の視点なので、そこはちょっと注意しないと
いけないとなと思った。

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2022年09月11日

Posted by ブクログ

【まとめ】
1 霹靂
2018年10月27日、LIXILグループ社長兼CEOの瀬戸欣哉は仕事でローマに訪れていた。朝食を終えた頃、突然スマートフォンが鳴った。電話の主はLIXILグループ取締役会議長の潮田洋一郎だった。
「瀬戸さん、急な話だけれど指名委員会の総意で、あなたには辞めてもらうことになりました。交代の発表は4日後の10月31日です。後は私と(社外取締役の)山梨(広一)さんがやりますから」
まさに青天の霹靂だった。

2018年10月時点の取締役の構成をみると、総勢12人のうちトステム出身者は潮田を含めて4人、対するINAX出身者は創業家出身の伊奈啓一郎と、INAX最後の社長だった川本隆一の2人しかいない。残る6人のうち1人は瀬戸。あとの5人はコンサルタント会社マッキンゼー・アンドカンパニー出身の山梨広一、元警察庁長官の吉村博人、作家の幸田真音、英国経営者協会元会長のバーバラ・ジャッジ、公認会計士の川口勉。いずれも潮田の要請を受けて社外取締役に就いた人たちだ。
圧倒的にトステム系が強く、もしINAXとの間で争いごとが起きれば、必ずトステムの主張が通るようになっていた。

瀬戸に「指名委員会の総意で辞めてもらう」という電話をかけた潮田は、LIXILグループの発行済み株式の約3%しか所有していない少数株主だったが、実質的にCEOを選任する機能を持つ指名委員会や取締役会のメンバーを自分に近い人材で固めているため、思い通りにならなければ経営トップのクビを飛ばすことができる。表向きは指名委員会等設置会社だが、実際はわずかばかりの株式しか持たない潮田がオーナーとして振る舞ういびつな会社というのがLIXILグループで、瀬戸への電話は絶対権力者の最後通牒と言えた。

しかし何故、潮田は瀬戸をパージしたのか?潮田の主張はこうだ。「もともと私は持ち株会社と事業会社は切り分けて経営すべきだと言ってきましたが、この点で瀬戸さんとは意見の対立がありました。私がこれに拘ったのはなぜか。LIXILグループのトップが事業会社のトップも兼務していることで事業会社の意思決定が機動的ではなくなっているという声が多く聞かれるようになったからです」
代わりにLIXILグループ代表執行役会長兼CEOには自身を、COOには山梨を選出するという。

しかしながら、瀬戸の交代を発表する10月31日の取締役会で、社外取締役の幸田はこう言った。「今回の人事については、瀬戸さんがCEOを降りてもいいという話があったところから全てが始まった印象がある……」
聞いていた話と違う。自分が辞めるのは指名委員会の総意ではなかったのか?そうではなくとも、潮田が意思統一をしているのではなかったのか?
いったいなぜ、自分は引きずり降ろされたのか?


2 齟齬
LIXILグループの経営方針をめぐって、瀬戸と潮田はいくつかの点で対立していた。
1点目がカーテンウォール事業を手掛ける子会社、ペルマスティリーザの売却について。瀬戸は売却派、潮田は残す派であった。
2点目が事業会社のLIXILとその上にある持ち株会社のLIXILグループについて。潮田は持ち株会社と事業会社を分けることに執着した。その裏には自身が持ち株会社のCEOに就いて、LIXILグループの本社を自身が居住するシンガポールに移す意図があった。
3点目が、瀬戸が導入した、代理店や工務店への取り次ぎの卸売価格を、LIXILグループが求めているサービスレベルと前年の購入量で自動的に決める仕組みへの反発であった。
4点目が、潮田が積極的に進めていたM&Aである。会社の規模を大きくしたがる潮田に対して、瀬戸は買収が経営の重しになっていると考えてリストラを進めていた。

瀬戸は幸田と電話で話し、辞任を決議した指名委員会の様子について聞いた。そこで語られたのは、瀬戸にとって驚くべきことばかりだった。
指名委員会を10月26日に開くというのは急に決まったことで、事務局は24日から日程調整を始めた。忙しい身の幸田は「当日は残念ながら足を運ぶことができません。電話で参加します」と答えると、25日の夕方には潮田から直接電話があって、「瀬戸さんとは10月19日に夕食を一緒にしたんですけれど、そこで『CEOを辞めたい』と言い出したんです。びっくりしましたよ。至急後任を決めなければならない。」と言われた。
潮田は幸田らには「瀬戸さんが辞めたいと言っている」と告げ、瀬戸には「指名委員会の総意で辞めてもらう」と偽計を図ったのだ。

瀬戸退任は、メディア、機関投資家、経営幹部の間に不信感を生んだ。瀬戸の意向と潮田の説明が食い違っており、かつ説明もなされなかったからだ。明らかなガバナンス不全であるという空気が広がり、LIXILグループの株価は約20%下落した。


3 決意
自身が退任した余波を耳にした瀬戸は、CEOの選任について取締役会で再決議をさせようと、社外取締役宛に手紙を書いた。
手紙には ①瀬戸がCEOに相応しくないと判断したこと ②猶予期間を設けずに交代したこと ③後任が潮田と山梨であること、の3点について、指名委員会や取締役会でほとんど議論されていないのは、指名委員や取締役にも責任があるのではないかと指摘した。さらに、LIXILグループの株価下落率の21%~25%はトップ交代が原因と分析することができると指摘した。
「私は何もCEOに残りたいからこんなことを言っているのではありません。これはコーポレートガバナンスの問題です。取締役会として自浄作用が働くかどうか、社外取締役の良心に期待しております」
しかし、この手紙は結局相手にされなかった。

失望する瀬戸だったが、海外の機関投資家の訪問や友人たちからのアドバイスを受け、戦うことを決心する。会社に臨時株主総会を開かせて、潮田と山梨を解任させることを決意したのだ。


4 激震
2019年1月、LIXILグループ従業員のほとんどが腰を抜かすようなことが起きた。日経ビジネス電子版が、「スクープ LIXILがMBO検討、日本脱出も」というタイトルの記事を配信したのだ。
記事の内容はこうだ。まず東京証券取引所一部に上場しているLIXILをMBOで非上場化する。その上でシンガポール取引所に新規上場させる。普通に考えれば仰天計画だが、潮田は本気で、瀬戸はこの計画に反対していたからCEOを降ろされたということまで書いてあった。
もっとも記事には致命的な誤りがあった。「取締役会で決議されている」と書いたことである。このため記事が配信されると東京証券取引所はLIXILグループ株の売買を停止した。むろん決議の事実はなく、明らかな誤報だ。
シンガポールでの上場は、移転価格税制の関係で、現実的な選択ではなかった。しかし潮田は本気でこの事項を検討しており、2018年10月22日の討議会で移転案を打診していた。おそらく自身が居住するシンガポールへ「自分の会社」を移すためであり、日本で相続税を払いたくないという意図だ。瀬戸はこのとき移転案をはっきりと突っぱねた。その後の10月27日に、ローマで潮田からの電話を受けたので、おそらくシンガポール移転を巡る意見の相違が瀬戸降ろしのきっかけとなったのだろう。

2019年2月には西村あさひ法務事務所によって瀬戸の退任の真偽をめぐる調査報告書と調査報告書要旨が提出されたが、そこに書いてあったのは潮田にとって都合の悪い箇所を削ぎ落とし、瀬戸がCEOを辞任する具体的な意思を有していたかのような文言だった。中立公平な立場であるはずの西村あさひ法務事務所から、潮田と強い結びつきのある太田が雇われ、報告書要旨を作成していたからだ。
この内容に取締役の伊奈、幸田が反発。取締役会は大紛糾する。複数の機関投資家からも「早急に説明責任を果たせ」とせっつかれていたため、対外発表を急がねばならず、結局この報告書要旨を出すことで落ち着いたが、LIXILグループはその後、メディアや機関投資家から「会社にとって都合の良い『報告書要旨』を出した」と猛烈な批判を招くことになった。


5 宣戦布告
英機関投資家マラソン・アセット・マネジメントの日本株調査担当である高野、ポーラー・キャピタルの小松は、瀬戸退任に憤りを感じていた。そして2人は動いた。コーポレートガバナンスのため、株主の権利を行使せざるを得ないと考えたのだ。
その高野はLIXILグループに臨時株主総会の開催を請求し、潮田と山梨の取締役解任を求める可能性もあると考えて下調べをしたが、マラソン一社では請求に必要な議決権の3%超に相当する株式がなく、またマラソンの一存で使うことのできない株式があることを知った。他の機関投資家と共同戦線を張れば、その条件を満たせるのではないかと思い、「賛同する株主を募って臨時株主総会を開催請求する道を探ってみませんか」と持ちかけた。だが、マラソンとポーラーを合わせても、請求にすぐさま使える株式は3%を下回っていた。
ここで、瀬戸には奥の手が思い浮かんでいた。LIXILグループの創業家の一つである伊奈家を頼るのだ。潮田の父親である健次郎に経営統合を申し入れたINAXの中興の祖である伊奈輝三を中心に、伊奈一族はLIXILグループの発行済み株式の約1.5%を保有していた。取締役で輝三の甥にあたる伊奈啓一郎と川本隆一は瀬戸がCEOになって以降、常に経営を後押ししてくれていたから、頭を下げれば伊奈一族は応じてくれるかもしれない。
しかし瀬戸は、このアイデアを使うのに不安を感じていた。伊奈一族に変な災難が降りかかることを恐れたからだった。仮に一族が臨時株主総会の開催請求に同意してくれたとして、世間はどう思うか。おそらくLIXILグループの創業家である潮田家と伊奈家の対立と見るだろう。

2019年2月5日、瀬戸と高野は伊奈啓一郎を直接訪ねた。瀬戸はこう切り出す。「本当にすみません。潮田さんと山梨さんを解任するため、臨時株主総会の開催を請求しようと思っています。そのために隣にいらっしゃるマラソンの高野さんらが奮闘してくれているのですが、請求に必要な株式が3%に達していません」「会社に臨時株主総会の開催を請求するのに伊奈一族も協力してもらえませんか」
伊奈は答えた。「おやすいご用ですよ」「瀬戸欣哉は正義の闘いをしようとしているんでしょ。伊奈家が支えなかったら、あなたの闘いが本当に正義なのか分からなくなる人もいるでしょう。伊奈家が機関投資家のみなさんと手を携えるのは、あなたの闘いが私欲にまみれた独り相撲ではなく、正義を貫いていることを保証することなんだと考えてください」

瀬戸と高野の申し出に即答した伊奈は、親戚8軒を即座に訪問し、委任状を取り付ける。株式の一部を寄付していた常滑市の片岡市長に電話をかけ、賛同の意思を表明する委任状を出すようお願いした。取締役の川本はLIXILグループ株を持つ協力工場や親密取引先を一軒一軒まわり、株式をかき集めた。その頃、高野のマラソン社を始めとする投資機関4社が結集し、信託銀行との協議を重ねていた。
2019年3月10日、3%の壁を超えるめどが立った。

「株式会社LIXILグループ機関投資家による臨時株主総会招集請求について」
2019年3月20日、マラソン・アセット・マネジメント、インダス・キャピタル・アドバイザーズ、ポーラー・キャピタル・ホールディングス、タイヨウ・パシフィック・パートナーズの機関投資家4社は連名でプレスリリースを出した。4社は「指名委員会でどのような議論があったのかを確認しようと議事録の開示を請求したが、見せてもらえない。コーポレートガバナンスに重大な疑義がある」として、臨時株主総会での潮田と山梨の解任を要求した。

2019年4月5日、瀬戸は東京で記者会見を開き、自分を含む取締役候補を紹介した上で2つの話をした。1つは6月の定時株主総会に株主として瀬戸を含む8人を取締役候補として提案、選任を求めるが、今後指名委員会に対し、この8人を会社提案の取締役候補にするよう働きかけていくということである。もう1つは、この取締役候補が選任されれば自分はCEOに戻るつもりであり、復帰後には昨年スタートさせた中期経営計画を復活させると話した。その上で今の自分の心境を語った。
「昨年10月31日にCEOを退任してから何をすべきかをずっと考えました。正直申し上げて他の仕事をしようかと思ったこともあります。でも私の行動規範の最後の拠りどころは『Do the Right Thing』です。虚心坦懐に自分がすべきことを考えた時、LIXILグループに戻って仕事を全うすることが正しいことだと結論づけました」
「今回の経営者交代は明らかに正しい事ではなかったと思います。これを許したら、LIXILグループは正しい事をしない会社と思われてしまう。それでは従業員や株主に迷惑がかかるし、そもそも従業員に対して『正しいことをしよう』と言い続けてきた自分自身がそこから逃げたことになる。だから復帰を目指すことにしました」


6 奇襲
4月18日、LIXILグループが緊急記者会見を開いた。ペルマの減損損失を計上したことなどで、3月期の最終損益が当初見込んでいた15億円の黒字から一転、530億円の赤字になる見通しだという業績下方修正を発表した。
この会見には潮田と山梨、CFOの松本が出席。そこで潮田は5月20日付で取締役を退任し、6月の定時株主総会でCEOも辞めると表明した。山梨は定時株主総会までは取締役とCOOを続けるが、総会後は取締役には残らないと言った。
潮田の取締役辞任表明は奇襲といえた。臨時株主総会が開かれれば潮田と山梨は解任される可能性がかなり高まっていたが、その臨時株主総会を開く根拠を失くすものだったからだ。しかし潮田は会見で、そうした目論見があって退任するのではないと強調した。巨額の赤字を計上することになったのは瀬戸がCEOとして手を打たなかったからで、退任するのはその瀬戸をCEOにした任命責任を取るからだという論理を展開した。
「取締役退任は臨時株主総会を回避するためではありません。今回の巨額損失の責任は瀬戸さんにありますが、彼をCEOに任命したのは当時の指名委員会のメンバーで、取締役会議長だった私の責任です。だから辞めるんです。私は38年間取締役をやってきましたが、(瀬戸の任命は)大変な、最大の失敗でした」
会見で潮田は「6月の株主総会で会長兼CEOも辞めるが、その後、アドバイザーをやってくれと言われれば考える」と言い、山梨は「株主総会以降は取締役にはならないが、許されるのであれば執行に専念したい」と含みをもたせた。つまり山梨は潮田の後任となる会長兼CEOに就く用意があり、潮田は山梨の相談に乗るのはやぶさかでないと言った。

しかし、潮田の退任を聞かされていなかったCFOの松本と広報担当役員のジンは、「潮田―山梨体制では会社が持たない」と判断し、反旗を翻すことを決意する。「ビジネスボードレター」という連判状を作成し、それを指名委員や大株主に送付した。そこには潮田と山梨がいる限り会社に影響力を及ぼし、いずれ危機が訪れると書かれていた。


7 激突
最終的に、会社提案の取締役10名、瀬戸ら株主提案の取締役8名(うち2名重複)の16名の名前が集まった。
会社側の強みは、監督機能の高さだ。社外候補7人と社内候補1人の構成は、社外と社内が同数という株主側の構成よりも監督機能は高い。
もちろん、経営を監督する取締役は会社や執行部と利害関係がなく、独立している人が望ましい。しかし独立性を重んじれば重んじるほど、社外取締役は会社から遠い存在になる。事業を知らない新任の社外取締役ばかりで経営を監視するのは不可能であり、そこは伊奈、川本、吉田、瀬戸とLIXILグループ全体が分かっている人物が多い株主側が有利だった。

6月5日、瀬戸ら株主提案チームと会社側はそれぞれ説明会を開いた。瀬戸らはそもそも昨年10月から何が起きたのかをかいつまんで説明したのち、株主提案の取締役候補が選任されれば3つのことを実行すると強調した。1つ目は速やかなガバナンス改革の実施、2つ目は付度文化の根絶、3つ目は昨年10月に事実上解任されたことで遂行できなくなった中期経営計画の実行である。瀬戸らは会社の現状を深く理解している長所を活かし、今後の経営方針や投資家の疑問について丁寧に話す戦略を取った。
一方で会社側は、今後の経営について「3カ月から6カ月は暫定CEOを置くことになる、それは経営者の経験がある社外取締役候補から選ぶ」と踏み込んだ発言をしたものの、その後のCEO候補と、経営の空白を招く危険性については回答ができなかった。

6月12日に議決権行使助言会社のリポートが出た。機関投資家のうちパッシブの投資家は議決権行使の際、助言会社のISSやグラス・ルイスが作成するリポートを参考にする。つまり議決権行使会社が推奨した取締役候補の選任に賛成、反対推奨の候補者には選任に否と投票する傾向にある。まさにここを取ったほうが勝勢となる天王山だった。
しかし、リポートに書いてあった内容は、瀬戸たちの希望を打ち砕くものだった。ISSのレポートは16人の取締役候補のうち10人に賛成し、6人に反対するという内容だった。会社提案の取締役候補8人のうち選任賛成となったのは6人、株主提案の取締役候補8人で賛成とされたのは4人にとどまった。瀬戸は反対推奨である。
また、13日のグラス・ルイスのリポートも、会社提案の取締役候補は全員が賛成推奨、株主提案の取締役候補は3人という、会社有利の判断を下した。いずれも「独立社外取締役の数は多ければ多いほど良い」という形式的な基準に基づいたものだった。

このとき、会社側と瀬戸側はどちらも個人株主への電話作戦を行っていた。もっとも会社という後ろ盾を持っていない瀬戸側は、膨大な手間と費用がかかっており、かつ株主提案に賛同する議決権数は機関投資家に比べればたかが知れていた。しかし、もはや会社との差を縮めるには続けるしかない。ほぼ徹夜での作業が続いた。


8 運命の日
2019年6月25日午前11時、LIXILグループの株主総会が始まった。午後3時40分、投票結果が開示される。結果は株主提案の取締役候補では8人全員が選任、会社提案の取締役候補は6人だった。
瀬戸たちは、勝利したのだ。
「瀬戸さん、おめでとうございます。私は従業員です。おかえりなさい」
「私は元従業員の株主です。本当に良かった」
取り巻く株主が口々にそんなことを言いながら瀬戸に握手を求めた。それに応えていると会場には万雷の拍手が鳴り響き、壇上にいた潮田や山梨は去って行った。ようやく8ヵ月間に及んだ死闘のエンディングで、この日が誕生日の瀬戸を祝福するかのような光景が会場に広がった。

CEOは瀬戸に、取締役会議長は松崎で決定した。

瀬戸が、後に送られてきた議決権行使状況を見ると、国内機関投資家の多くは株主提案に賛同してくれていたことが分かった。正義を貫くことが大事と考える人が多かったのだろう。
日本の企業社会で株主提案が勝利するケースはほとんどない。LIXILグループの株主総会が世間の耳目を集めた2019年には54件の株主提案があったが、勝利を収めたのは瀬戸たちだけだった。
8ヵ月間の戦いで瀬戸は考えられる手をすべて打った。最大の勝因は、やれることは何でもするという行動力だったのだろう。しかし、その瀬戸に手を差し伸べる人がいたからこそ勝てたということも間違いのない事実だった。

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2025年03月20日

Posted by ブクログ

会社は誰のものか。ガバナンスとは何かを考えさせられる本。事実は小説より奇なりと思える、スリリングさがある。Do the right things の瀬田と、ワンマン経営の潮田氏と。
従業員を守ることが一つの答えだとして、瀬田氏を正解としたのが、本書の導き出したかった解ではないか。

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2023年10月09日

Posted by ブクログ

小説の仕立て上、勧善懲悪の構成になっているが、悪側のやっていることが姑息すぎて、少し驚く。
周りには、それらを見抜き、対応する力が必要ということかな。
一方、一介のサラリーマンの立場にとっては別世界の話で、その登場人物にはなれないな、と感じました。

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2023年01月14日

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