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Posted by ブクログ 2022年12月21日
新書ではありますが、中身はノンフィクション
です。取材対象は「脱走犯」。
記憶に新しいところでは松山刑務所から脱走し、
泳いで四国から本州へ渡り、逃走を続けたあの
事件です。
最後には広島カープの本拠地球場近くで捕まっ
た映像をニュースで観た人は多いと思います。
スリリングな脱走劇は、過去にも...続きを読むドラマや映画
の題材として扱われてきました。
しかし現実に発生している脱走は「警察官の隙
を見て」や「監視が持ち場にいない時を身はか
らって」とか、え?そんなにユルいの?と思っ
てします要因ばかりです。
そのユルさは日本の法制度に起因しています。
この本では海外と比較してなぜ日本の法制度が
ユルくなっているのか、なども分かりやすく解
説されています。
「どうせ捕まるのだから逃げなきゃいいのに」と
思っている方は、ぜひこの本を読むべきです。
日本では「逃げなきゃソン」とばかりの環境が
目の前にあるのです。驚きの一冊です。
Posted by ブクログ 2022年09月21日
事実は小説よりも奇なり。ドラマや映画の題材に良く使われる脱走。実際の逃亡事件を題材に保釈制度のあり方の問題提起も行う一冊。
吉村昭の「破獄」のモデル4度の脱獄に成功した白鳥由栄、自転車日本一周を装い49日間逃亡した富田林署逃走犯など。合わせて現在の保釈制度の問題点を語る章からの構成。
やはり実際...続きを読むに合った事件の内容は素材として最高に旨みがある。
ただし、保釈制度についてはそれまでの章と関連はなく、取ってつけたような印象。
Posted by ブクログ 2022年07月10日
高橋さんのノンフィクションは最後の章がいい。丹念な取材を重ねたレポートを読んだあとに、「事件の詳細を知りたい」という読者の好奇心を肯定してくれる。人間は、面白い。
Posted by ブクログ 2024年03月18日
著者の淡々とした文章が好き。冒頭の小説家の方との対話が面白かった。小説家から見たノンフィクションとは、、このルポを読んで、現実のあり得なさに(多分悔しくて?)泣いた、と買いてあって、面白いなあと思った。事実は小説より奇なり、、フィクションだったらありえないだろーって言われるような展開が現実だとあるの...続きを読むが面白い。
こうゆう犯罪もののルポって、ここでこんなもの食べてました、とか急に身近で現実感があるものが登場するのが面白いと思う。犯罪者がどんな心理でその行動を起こしたのか、ということに興味があってノンフィクションを読んでいるので、人間ぽい一面がみれると、その心理が少し分かったような気持ちになる。
Posted by ブクログ 2023年11月11日
近年の脱獄犯2件のルポと戦時中に網走刑務所等を4度も脱獄した人の話。始めのは逮捕された場所が広島で見知った所なので本当に怖かった。
2篇目も、自転車で日本一周中、と多くの人を騙した犯人が気に入って長く滞在した山口の道の駅もよく行く場所なので目に見える様。ただ終章はガラッと変わって日本の司法制度や自白...続きを読む偏重主義への警鐘など、題材とは違う面もあった。この方の別な著書を読みたくなった。
Posted by ブクログ 2023年08月31日
前半は2018年当時けっこう話題になった今治の開放型刑務所を出て瀬戸内の島に潜み海を渡った例と、富田林署を出て自転車旅を装っていた例が紹介される。これがめっぽう面白い。どちらも飄々と巷を移動していく。つかまりそうでつかまらない強運もあるのか。潜伏先の島の人々や接点をもった人たちが両例の「脱走犯」たち...続きを読むのことを、ある種の親しみをもって語るのも印象的。そして、捕まるときはわりとあっけない。
彼らによれば逃げたのは刑務所での扱いが不満で理不尽なものだったからだという。それはこの両者の例の後に紹介されている昭和の脱獄王・白鳥由栄も同じ。こういう動機によるものか、いやそれが明かされる以前から妙に人々は彼らを慕わしく思い、一方で捜索に手こずる警察の傍若無人さにはあきれぎみ。そんなところが、脱走犯への親しさを増させもするのだろう。
後半は保釈制度や自白偏重主義や人質司法といった日本の司法制度のあり方に疑問を呈す。それは翻れば人々の意識の問題でもあるだろう。以下を引用しておきたい。
海外からのみならず、日本国内においても、自白偏重主義や人質司法に対する批判はある。しかしこれらが高い有罪率を支えていることも事実だ。不思議なことに日本では、被疑者が起訴されれば、本来はまだ未決……有罪か無罪か決まっていない立場であるにもかかわらず、その被告人に対して〝ほぼ有罪〟という印象を、多くの者が持つ。これは、高い有罪率を誇る日本の検察を、実際には信頼している証ともいえるであろう。「推定無罪の法則」という言葉は知られていても、生活には溶け込んでいないのだ。国際的なスタンダードを求めながら、日本特有の自白偏重主義や人質司法から成る高い有罪率によって、日々の生活に安心を得ているという矛盾が、ここに見える。あらゆる手続きが完璧でなければ非難の対象になる空気もあり、むしろ日本では100パーセントの有罪率が求められているようにすら思えることもある。(p.207)
またも15年ほども前、某矯正施設の所長さんが、刑務所は矯正するための施設なのに人々は隔離しておくことを求めるというようなことを言っていたのを思い出した。容疑者となっただけで人々はその人との間に一線を引き、見えないもののようにしたがる。警察や検察の横暴ともいえる事象が多発しているように思えるが、世のなかの反応が薄いことが、横暴を助長させてもいるに違いない。
愉快な逃亡譚を期待していたので前半は満足。後半はがらりと印象が変わって一冊の構成としてどうかと思わんでもないけど(冒頭には作家・道尾秀介との対談も収載してあるし)、司法やこの国の人々の意識に一石投じる重要な意見が述べられている。
Posted by ブクログ 2023年02月12日
逃げるが勝ち
~脱走犯たちの告白
著者:高橋ユキ
発行:2022年6月6日
小学館新書
「Slow News」(調査報道サイト)での連載を加筆修正
タイトルからは「逃げるが勝ち」を人生訓にしているエッセイのように思えてしまうが、サブタイトルにあるように、3人の脱走犯たちを中心に彼らの告白文や手記...続きを読むなどに加え、彼らが逃走していた街の人々への取材で構成されたノンフィクション。記憶にも新しい2人の逃走劇については、著者自らが潜伏先だった街で取材したり、逃走犯に直接書いてもらったりした文などで構成。もう1人は「昭和の脱走王」について、資料などをもとにルポしている。また、最後のまとめの章では短くいろいろな脱走者、逃走者について書いているが、日産のカルロス・ゴーンも登場する。
1.尾道水道を泳いで渡った脱走犯
〝塀のない刑務所〟という言葉をよく聞く。日本には市原刑務所(千葉県)、網走刑務所・二見ケ岡農場など4か所あり、1955年から設置されていったという。
その一つ、松山刑務所大井造船作業所は1961年に開所した。民間造船所「新来島どっく大西工場」内にあり、敷地内にある5階建ての「友愛寮」で共同生活をしながら仕事場に通う。寮の部屋に鍵や鉄格子はない。初犯で刑期が10年未満、概ね45歳以下で協調性がある模範的な受刑者というような条件を満たした受刑者ばかり。もちろん、松山刑務所本体には普通の刑務所施設があり、他の受刑者たちが入っている。
2018年4月、ここから逃走し、車を盗んで離党の向島に入り、何軒かの空き家に2週間ほど潜伏。今度は尾道水道を泳いで渡って本州へと入った。距離は200メートルしかなかったが、尾道水道の潮の流れが速く、流され流されして1時間。最後は死を覚悟して仰向けに浮かんでいるだけだった。やっとのことで本州側に上陸したが、人家の屋根裏に入るなどそこからまた潜伏生活が始まる。結局、23日の逃亡生活ののち、捕まった。
本を読んでいると、この事件のこと、段々思い出してくる。
残りの刑期も長くなく、自由がある程度ある施設で過ごしていたのに、なぜ脱走したのか。不満があったと彼は言う。それは、一般の刑務所にありがちな人権侵害的なことよりも、受刑者でつくる自治組織の幹部との折り合いが悪い、というようなレベルの違う部分での不満だった。その反省から、今は週末だけ松山刑務所に戻し、個室で過ごさせているという。これも感覚的に一般人にはおもしろい話。
著者が潜伏先だった向島を訪ねて住民たちに話を聞くと、彼らは逃走犯に好意的だった。みんな「野宮くん」と親しげ。逆に「どうしてるの?」と聞かれたりもしたそうだ。逃げているとのニュースが流れていたとき、人々は心配したという。「お腹がすいているのではないか?出てくればご飯食べさせてあげるのに」と。
ある住民は、逃走のニュースが流れた日、子供が小学校に遅刻しそうになって車で送ったところ、検問で渋滞してかなり遅刻してしまったという。校門に駆け込んだところ、NHKかどこかが取材していて、そのニュース番組では「小学生が怯えて登校しています」と言っていたので、家族みんなで大笑いしたという。ただ遅刻して怒られそうだっただけなのに、と。
2.富田林警察署の面会室を破って逃げた犯人
弁護士との接見後、面会室のプラスチックの一部を剥がしてその隙間から逃げ出した容疑者。彼は四国を自転車で回り、「日本一周中」のプレートをつけ、出会った人たちとも気軽に記念撮影をしていた。これは記憶に新しい。脱走したのは、2018年8月だった。
弁護士との接見時、警察官は席を外す。だから、接見が終わって弁護士が帰り、その後、容疑者が逃走しても1時間半以上、気づかなかった。大失態だったが、担当の警察官(巡査部長)は、内規で禁止されているスマホを持ち込み、エロ動画を見ていたとのこと。
四国からしまなみ海道を渡って広島県、そして山口県へと入り、周防大島町で過ごす。なんども警察に事情を聞かれるなどしたが、キャンプしながら自転車で日本一周していると普通に答え、なにも疑われずに捕まることもなかった。逆に暗いので気をつけてくださいと警察官から心配の声を掛けられることもあったという。最後は、周南市で万引きをして捕まり、激しく抵抗したために逃走犯であることがばれた。捕まえた万引きGメンは、5時の仕事終わりまであと5分だった。
大阪のある建設会社が、有力な情報提供者に300万円の懸賞金を出した。すると、LINEであっという間にヤクザ界に情報が広まり、ヤクザがどっと動き出したという(アサヒ芸能)。
彼は強制性交等罪など凶悪犯だった。しかし、公判では強制性交罪などわいせつ系については自らの犯行を否定し、「ヨダソウマ」という人物がやったと主張した。ひっくり返すと「マ、ウソダヨ」になるとの報道もあった。
彼が滞在したところは、サイクリストの聖地になった。彼が万引きしたものや購入したものが売れたという。タコ飯を万引きしたというテレビでの情報があり、タコ飯が結構売れた。逮捕時に所持金が数百円しかなかったのに、それでも買いたかったものとして150円の「鳩子てんぷら」も売れたという。どちらも逮捕直前に宿泊していた道の駅「上関海峡」。
3.昭和の脱獄王
白鳥由栄(よしえ)は、計4回、逃げている。網走刑務所の旧舎を移築して再現した「博物館 網走監獄」にいくと、「五翼放射状平屋舎房」があり、そのなかの一つに案内があったのを覚えている。この本を読むと、それが脱獄王・白鳥が収監され、逃げ出した部屋だということが分かる。
彼は、非常に運動神経がいいことに加え、〝特異体質〟であった。手足の裏の皮膚を伸縮させて吸盤のようにできること、そして、体中の関節を自由に外すことができること。首さえ出入りできる穴があれば、猫のようにそこから全身を出すことができた。20センチ×40センチの監視口からも脱走した。彼を取材したジャーナリストによると、松の木の根っこのようなごつごつした肩をしていたらしいが、首を回すと音がして、だらーんと肩が外れるという。痛くないと本人。クッと自分で戻す。
青森刑務所柳町支所(公判が開かれる前)、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所から逃げ出した。
*********
欧米では、保釈を捜査側が利用することもある。保釈中に尾行し、どこでどういう証拠隠滅をするのかを調べ、新たな証拠をつかむという、いわばチャンスとして利用することがある。
また、欧米では保釈保証会社がビジネスとして成り立っている。保釈される数が多いので成り立つらしい。しかし、保釈金を出している会社としては、彼らが逃走しないように監視をする。
Posted by ブクログ 2022年12月14日
4回も脱獄した人がいたなんて知らなかった…。
もはや、脱獄すること自体が目的になっていたようにも思うけど、その執念と実際に脱獄出来てしまう能力も凄まじい。でも、犯した罪は凶悪で、単純に「すごい」と讃えられるものではない。
最近の事件でも、海を泳いで渡ったり、自転車日本一周に見せかけたり、考えられな...続きを読むいような方法で逃げ延びようとしていたのは、話としては興味深いけど、大半は結局捕まることになるのだから、逃げなきゃいいのに、と思う。
Posted by ブクログ 2022年10月30日
服役している人または拘留されている容疑者が逃亡し再逮捕されるまでの経過をたどった本。最近の事件が多く報道でも内容を知っていたのでそれほどの驚きはなかった。著者は逃亡した容疑者に取材を試みる過程も少し記載しているが、相手も下心が出てきて上手くいかないんだなと思った。
Posted by ブクログ 2022年09月18日
待遇改善を訴えるために脱獄したり、逃た後日本一周とプレートを掲げて自転車で逃げたり話題になった逃亡者の裏事情がわかって面白い。
最後に保釈金にに頼っている現在の保釈制度について疑問を投げかけていて興味深かった。
Posted by ブクログ 2022年07月25日
ふたりの脱走犯との、手紙のやりとりや、脱走王の異名を持ち、4度の脱走歴をもつ白鳥由栄。そして、カルロス・ゴーン。
松山刑務所が塀のない刑務所で、日本には4つしかないということをはじめて知りました。比較的、自由であるからこそ、人間関係に辛くなり逃げ出したということでしょうか。最後に脱走犯が捕まるとき...続きを読むに、ホッとしたというのは印象的でした。
自転車で2ヶ月近く、逃げ回ったひとも凄いと思うけど、逃げるには運も必要かもしれませんが、お金こそが必要だと感じました。
いつかは捕まるとは言え、警察の失態というものも、決して終わることがないなと思いました。脱走王の話に、人の油断があるからこそ、脱走ができるみたいな話もあり、人である以上、完璧を望むのは難しいのかなと感じた部分もあります。それたと困るのですが。
日本の司法が自白編重主義の話や、保釈金の話、海外の保釈後のGPSを付けて監視するなど、人権との兼ね合いもあったりするかもしれませんが、日本でも考えても良いのではと思う視点もありました。