【感想・ネタバレ】キリンを作った男――マーケティングの天才・前田仁の生涯のレビュー

あらすじ

【内容紹介】

「一番搾り」「淡麗」「氷結」を生んだ伝説のヒットメーカー初の評伝!!


戦後のキリン最大のヒット商品である「一番搾り」をはじめ、「ハートランド」、発泡酒の「淡麗」「淡麗グリーンラベル」、第3のビール「のどごし」、そして缶チューハイ「氷結」……。

これらはみな、一人の人物が作った商品である。

その人の名は、前田仁。

手柄を部下に与える上、マスコミ嫌いだったこともあり、世間的には「知る人ぞ知る」存在だったが、飲料業界では名の知れた不世出の天才マーケターである。


戦後長らくビール業界のトップ企業だったキリンの、絶対的な主力商品は「ラガー」だった。

だが前田は、商品を開発するにあたって「打倒ラガー」を掲げる。

なぜ前田は、自社の主力商品を潰そうとしたのか――。

そして、いかにして凋落する名門企業を復活させたのか――。


いつもニヤニヤ笑顔で飄々としていたが、部下からの信頼は厚く、上司に対しても決して忖度はせず、常識や前例にとらわれない発想で次々とヒット商品を生み出した前田仁のマーケター人生に、ビール業界を30年以上取材し続けてきた著者が迫る。


「キリンの天皇」と呼ばれた本山英世や、サントリーの佐治信忠会長、前田を師と仰ぐ現在の湖池屋社長・佐藤章(元キリンビール)、前田の部下だった漫画家のしりあがり寿はじめ、ビール業界の傑物たちとの秘話も明かされる。


ビールが最も熱かった時代に、変化を拒む巨大企業の中で、権謀術数や子会社への左遷などの逆境を乗り越え、信念を貫き続けたヒットメーカー初の評伝!

【著者紹介】

[著]永井 隆(ながい・たかし)

ジャーナリスト。1958年生まれ。群馬県桐生市出身。明治大学卒業。日刊紙「東京タイムズ」記者を経て、92年に独立。ビールや自動車などの企業活動をはじめ、組織と人との関係、人事制度、外国人労働者などをテーマに、新聞・雑誌・WEBメディアにおいて幅広く執筆活動を行っている。中でもビール産業については、東京タイムズ記者時代を含め、30年以上取材を続けている。主な著書に、『サントリー対キリン』『アサヒビール30年目の逆襲』『ビール15年戦争』『ビール最終戦争』『EVウォーズ』(以上、日本経済新聞出版社)、究極にうまいクラフトビールをつくるキリンビール「異端児」たちの挑戦』(新潮社)『、移民解禁』(毎日新聞出版)、『ドキュメント 敗れざるサラリーマンたち』(講談社)など多数。

【目次抜粋】

第1章 打倒「ラガー」極秘作戦

・ラベルのないビール

・「ラガー」という聖域

・殿様商売

・「ハートランド」の裏コンセプト


第2章 大いなる助走

・屈折を抱えた少年

・花の73年入社組

・桑原学校


第3章 「スーパードライ」の衝撃

・「どぶ板」の営業部隊

・黙殺されたレポート

・住友銀行から来た男

・「ドライ戦争」勃発

・「魑魅魍魎」巣くう伏魔殿


第4章 「一番搾り」が生まれた日

・ロングセラーの条件

・麦汁の一滴は血の一滴

・「天皇」への直訴

・「ラ党の人々」事件

・突然の左遷


第5章 首位陥落

・アサヒの罠

・ラガーvs一番搾り

・生ビール化の失敗

・暗黒時代


第6章 天才の帰還

・本社の最年少部長へ

・「発泡酒はまがいもの」

・「淡麗」の新しい価値


第7章 ホームランバッターの嗅覚

・ヒットの予感

・安売り合戦

・「淡麗グリーンラベル」ヒットの理由


第8章 「異質」が生んだ「氷結」

・子会社の男

・打倒サントリー

・缶チューハイの革命児

・運命のネーミング変更

・前田が撒いた「種」

・マーケティングで一番重要なこと

・あえてダサく作れ


終章 昔話では食えない

・ゲームチェンジャーとしての「極生」

・困った時の前田頼み

・幻のサントリー統合計画

・キリンとの別れ

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Posted by ブクログ

ビジネスマンから学ぶことは多い。

読みやすい文章とともに、誰もが知る大企業のキーマンから、たくさんのことを学ばせていただきました。

ひとつの会社しか知らない、他の会社のことを我が身の改革(?)のアイデアに繋げたいひとにおすすめです!

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2024年12月04日

Posted by ブクログ

これは素晴らしかった。益々KIRINのファンになった。こんな天才がいたなんて。そして、天才が作った人材たち。成功体験があっても過去の栄光に奢らず、謙虚に次のヒット商品を探していく。こんなプロがいたことは、日本人としても誇らしい。

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2022年11月09日

購入済み

定期的に読み返し一冊

私は大企業に努めた経験はありませんが、読み進める程共感と自分自身の我慢の無さを気付かされました。
どの環境においても全力を尽くす、アイデアをストックし続けるという姿勢は共感しかありません。

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2022年08月21日

Posted by ブクログ

マーケターとしての人生、人となり、重視していたことは非常に大きな参考になった。
左遷されても、腐らずヒットを生み出す姿勢、
半歩先を読むセンス。

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2022年08月06日

Posted by ブクログ

レギュラースーパードライが売れ出した頃にビールを飲み出した。CMが男向けで男性消費者が多いと思いきや、飲みやすいから女性に支持されたというのは知らなかった。そういえば、酒が苦手な母も一番搾りだけは飲めたことを思い出した。

通達と調整が営業という会社を変えた伝説的なマーケッターの前田氏の話は知らなかったが、どんな場所でも腐らず、人とコミュニケーションをとる姿勢は見習いたい。

安いものは残念ながら終売したが、富士山麓など素晴らしいウィスキーの素地を作ったのも、キリン・シーグラムにいた頃の前田氏かもしれない。

最後に、人を育てることはいかに大切かということも再認識できた。『ヒゲのウヰスキー誕生す』に並ぶ、お酒にまつわる最高の自己啓発になった。

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2022年07月02日

Posted by ブクログ

これもタイトルが気になって、手に取った本。

ビール業界のガリバーだったキリン。しかしそんなキリンの現状に、不安を覚えた社員がいた。それが前田仁である。

ハートランドという、キリンとは似ても似つかないプライベートブランドを立ち上げ成功を収めていく。

そんな中、慢心のキリンはアサヒが放ったスーパードライに、足を取られる。

打倒スーパードライの本命として前田仁さんは一番搾りを立ち上げるも、社内抗争に敗れ子会社へ出向する。そしてキリンは、迷走を始める。トップシェアから陥落し、暗黒の時代に入る。

そこに救世主として出向先から呼び戻されたのが前田仁さんである。マーケティング部長として、次々にヒット商品を生み出していく。淡麗、淡麗グリーンラベル、氷結。 これらは、前田さんとその後輩によって生み出されたヒット作である。

組織内での立ち位置、役割をどのように見るか?客観的に見てその本質を見定め、言うべきことは言う。会社という組織で働いているものにとっては、耳が痛い言葉ではあるが。そういう個人が会社を立て直すのかもしれない。会社に勤める人であれば、必読の書である。

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2023年11月29日

Posted by ブクログ

何となくの直感でこの本は良さそうという
感触がありましたが、まさにその通り。
この本は、間違いなく"買い"の一冊です。

キリンにいた伝説のマーケターの半生を
当時のビール業界の競争を交えながら語った
ノンフィクションなのですが、
お酒を飲まない自分にもとても面白かったです。
お酒の銘柄は全然分かりませんでしたが…汗。)
主人公の男気溢れる考え方がカッコ良過ぎます。
というか、こんな人、大企業にもいるんですね。。
唱和だからこそ存在したのかもしれませんが、
読んでいて気持ちよくなるような本でした。

もちろんマーケティングの勉強にもなります。
真似するのは、中々難しいですが。。(笑)

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2023年08月28日

Posted by ブクログ

前田さんの仕事に取り組む姿勢やお客様の意識と実際の味の好みのズレをお客様理解として認識してヒット商品を生み出す等、とても参考になりました。
また、キリンビール社内の人事争いやアサヒビールとの争いなど、興味深く読まさせていただきました。

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2023年06月23日

Posted by ブクログ

のどごしが発売になる時、
キリンの新川の本社で開かれたイベントに参加したことを、思い出しました。

自分の仕事に対する姿勢を問われているような感覚で読み進めました。
いい本。良い人前田さん。

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2023年05月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一番搾りや氷結など、数多くのキリンの看板商品を生み出した人。その目の付け所、嗅覚は持って生まれたものなのだろうか?何か自分の社会人人生に生かせるものはないかと読み進めたが、あまりにも自分と違いすぎる。もし身近にいても容易に近づけなかったかもしれない。

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2023年05月23日

Posted by ブクログ

戦後のキリンのヒット商品「ハートランド」「一番搾り」「淡麗」「淡麗グリーンラベル」「氷結」。その全てに関わった男、マーケティングの天才前田仁の生涯を描く。

アサヒスーパードライの大ヒットの前はビールのシェアはキリンの一人勝ち。ただし大企業ならではの組織の動脈硬化から日本一のTheを奪われる。キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーの戦いを、キリン前田仁の立場から描いた作品。

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2023年04月06日

Posted by ブクログ

真に本質的なもの、お客様に喜ばれること、に忠実であることとは何か、を学べる生き様。自社の都合や競争関係から来る要素ではなく、お客様が今そして半歩先の未来に何を求めているか、それを直営店などで接点を常に持って感性として磨き続けることが大切。教養的なものも必要になってくるあたりが印象的。
あと、稀代のマーケターが、ただ自分がすごい、ではなく、本質に対してチームを動かす統合者(インテグラー)であることも重要

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

ハートランド、一番搾り、氷結とキリン派なので、商品が作られた裏舞台での仕掛けの話で惹き込まれて読みました。
前田さんの魅力的な人柄が伝わってきました。

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2023年02月24日

Posted by ブクログ

【どんな本?】
一番搾り、淡麗、氷結などを作ったキリン伝説のマーケター、前田仁の評伝。自分の仕事の仕方を振り返ったり、マーケティング思考を強化するのに役立つ。企画部門にいる自分にとっても大いに参考になった。
商品開発秘話はもちろん、キリンとアサヒの激しい競争や内部のゴタゴタなど、自分が普段からよく飲んでいる飲料の知られざる裏面に触れることができ、楽しみながら読むことができた。また、ヒット商品の生産の過程についても詳しく解説されているため、普段何気なく飲んでいるビールやチューハイの進化の過程にある工夫や苦悩がよく分かり、お酒を飲むのがさらに楽しみになった。

本書からは、マーケティングの面白さが湧き上がってくるようだった。消費者をよく観察し、今後の社会や価値観の変化を予想し、プロダクト案に落とし込み、これに自信を持って周りを説得し、仲間を集めて商品に落とし込み、いいマーケティングコミュニケーションを作り上げなんとしても売っていく。これぞマーケティング、これぞビジネスというような前田氏の仕事ぶりの数々は圧巻で、同じビジネスマンとして、ここまでの価値を創造できているか、もう一度問いただしてみたくなるような読後感であった。

また、前田氏が厳しいながらも人を大切にしているのが印象的だった。良い時は緩まないように厳しくしながら、チャレンジする部下は応援し、何かミスがあっても部下を責めず、堂々と責任を取る。実力と製品への情熱に裏打ちされる胆力と信念こそが、マーケターに必要なリーダーシップなのだと感じさせられた。


【こんな人におすすめ】
・お酒が好きな人
・消費財のマーケティングに興味がある人
・新商品や新規事業の構想に頭を悩ませている人

【メモ】
- マーケターとして
- お客様は予定調和的なものには魅力を感じないが、あまり先を行き過ぎた物もダメ。「等身大の半歩先」を目指す。しかし、半歩先も「大衆と先端」の両方がわからないと落とし所がわからない。いつも先端に接していることが必要だし、先端の実感を掴むためには、極端にいうとあえて先端を商品化しないとわからない
- 成功体験を捨て、既成の価値観を超える。既成概念を捨てるためには自分の思考をいつもまっさらにする必要がある。そのために、前田はアーティスト、広告代理店、クリエイター、デザイナー、リサーチ会社の関係者など幅広い人々と交流していた
- お客様の意識(イメージ)と実際の味の好みにはズレがある。スーパードライは、「男性的で本格的なイメージ」と実はラガーよりも軽くノンビターで飲みやすい「ライト嗜好に刺さる味わい」を両立したからヒットした
- 嫌味を言われたり争いになることを恐れていては、縦割り組織は崩せない。勇気を持って他人の縄張りに口を出し、お節介を仕掛けることが求められる、その際、「越権」ではなく「越境(=ちょっと境界線を跨ぐ)」程度の感覚で相手の領域に入っていくと気持ちは全く楽になる
- これは元上司が言っていた「健全なる領空侵犯」と同じ考えと言える
- オフィスに篭っていても良いアイディアは出ない。いろいろな情報を集めるのが大事で、待っていてもやってこない。プロデュース力や発信力のある人には良質な情報が集まってくるという経験から、前田は各業界のインフルエンサーや有名人を訪ねて取り止めもない雑談を繰り返していた
- ビールのプロとしての意見と消費者の感覚とはズレる。このズレを捉えることこそ消費者理解の核心である。
- 消費者は「安物」を求めていない。「お得な商品」を求めている
- ロングセラーの5つの条件は、企業の思い入れ、オリジナリティ、本物感、経済性(お得感)、親しみやすさ
- 複雑で抽象的な概念と向き合うことこそが、マーケティングの仕事で最も重要なこと。例えば淡麗グリーンラベルの開発者は「世の健康意識の高まりを受け、そのニーズを取り込む仕事をしている。淡麗グリーンラベルを開発して”健康系”という新たなジャンルを市場に定着させ、ブランド価値を高めている」のが仕事である。
- 昔話では、会社は食べていけない。次の成功、新しい価値創造を常に求めていかないといけない
- ビールについて
- 全体像
- ビールは「仕込み」「発酵」「貯蔵(熟成)」「ろ過」という4工程で作られる。
- 仕込み
- 仕込みではまず麦芽(大麦を発芽させた後乾燥させ根を切除したもの)とおよび米などの副原料を粉砕してお湯に浸す。すると、麦芽の中の酵素の働きで、麦芽と副原料のデンプンが糖に変わり、やがてお粥状の甘い糖化液(もろみ)が得られる。もろみはろ過機に移されてろ過され、このときに流れ出たものを「一番搾り麦汁」、絞った後のもろみにお湯を加えて再度ろ過したものを「二番搾り麦汁」と呼ぶ。
- キリンでは通常二番絞り麦汁を3割混ぜて仕込みをしていたが、「一番搾り」では一番搾り麦汁を100%にすることとした
- 渋みが少なくすっきりするが、二番搾り麦汁を加えない分収量が減って赤字になる、という問題があった
- さらに、ろ過回数が1回の一番搾り麦汁は、ろ過材のタンニン(渋みや苦味の素)が少なくて済む
- 赤字の懸念がある中でもプレミアムビールの路線は取らないこととした。当然他の商品よりも損益分岐点が上がったが、それ以上のヒットとなったことで採算が取れた(キリンにとって大きな賭けだった)
- 発酵
- 仕込みでえた麦汁に酵母を加えて発酵させる。酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスを生成する
- ドライビール(アメリカタイプ)はキレを高めるために仕込みの糖化を徹底した上で発酵力の高い酵母を投入し、アルコール度数とカス圧を高めることで作る
- ドイツタイプのビールは麦芽を100%使い、発酵を抑えて麦芽の旨味を残し、糖化も徹底せず、発酵も6~7割にすることで豊潤な味わいを残している
- 一番搾りは発酵度を80%以上に設定しており、スーパードライより低い。
- 現在の酒税法ではビールの麦芽構成比は50%以上とされており、18年3月以前の「67%以上」から緩和されている。また、果実やハーブなど使用できる副原料も以前より増えた
- 生ビールとは
- 日本で売られるビールには「熱処理ビール」と「生ビール」があるが、その差はほとんどない
- 熱処理とは「低温殺菌法」を指す。低温殺菌法とは出荷前に60度のお湯に30分ほど浸けることで酵母や乳酸菌を殺菌することをさす。
- 日本の生ビールは、熱処理の温度は下げつつも、熱処理自体は行っている。これをあたかも熱処理していないかのように宣伝しているだけ。そのため、海外には生ビールという概念はない。
- 発泡酒の工夫
- 発泡酒は、麦芽構成比が25%未満であれば酒税が安くなる。そこでサントリーは主原料を糖化スターチ、副原料を麦芽とした「麦芽構成比25%未満でも美味しい発泡酒」の開発に成功した(スーパーホップス)
- なお、第3のビールとは、発泡酒にスピリッツを加えた「リキュール(発泡性)②」と麦芽を使わずエンドウ豆や大豆を使った「その他の醸造酒(発泡性)②」の2種類のことをいう。
- 淡麗は、副原料として粉砕した大麦を使うことで本格感のある味を作り出した
- ラガーとエールの違い
- ラガーは、発酵を終えた酵母を下に沈める「下面発酵」を用いる(ラガー=ドイツ語で貯蔵)。ピルスナータイプとも呼ばれる
- エールは、酵母を上に浮かべる「上面発酵」を用いており、華やかな香りが特徴。

【感想】
- 前田氏は常に次の成功や、自分にしかわからない価値観の変化を常に探し求めていた。「一番最初に気づいてやろう」という思いが強かったのだと思う。今の自分は、世の中のトレンドやヒットを必死に追いかけ学ぼうとするフォロワーで、「よもや自分がそんな凄いことを思いつくわけが・・・」などと可能性を狭めるような考え方をしていたように思う。前田氏のように皆から慕われて未来を作るリーダーになるか、優等生だけど未来を切り開く力まではない人になるかは、自分次第。常に新しいことを見つけてトライし、自分で新しい価値を作り出せるように意識していきたい。

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2022年12月27日

Posted by ブクログ

今までマーケティングに良い印象を持っていなかったが、売れる物を作るには消費者を理解することが重要であることを学べる本であった。

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2022年08月28日

Posted by ブクログ

バブル崩壊後の閉塞を破ったのは一人の挑戦者だった。――前田仁。市場が縮み誰もが守りに入る中で彼は「新しいキリン」を模索した。「一番搾り」「淡麗」「氷結」――次々と放った革新の数々が時代の喉を潤した。徹底した品質主義と消費者の声に耳を傾ける姿勢が衰退するビール業界に風を起こしたのである。数字よりも「喜ばれる一口」を信じた男の哲学。いま缶を開ける音の向こうに前田の情熱が静かに泡立っている。

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

(Audible版、9h5m) (書籍版も購入済)

ハートランド、一番搾り、氷結等を生み出したマーケター前田仁さんの話
個人的に一番搾りを生み出した事が有難い。
製品開発者も偉いが流行らせる為には市場を理解する必要があるのだ
そして大企業の大変さも改めて感じました

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2025年04月29日

Posted by ブクログ

・「お客様は、予定調和的なものに魅力を感じませんが、あまり先を行き過ぎたものもダメです。手の届く幸せではありませんが、手の届く満足、手の届く憧れ、これがよく言われる『等身大の半歩先』です。しかし、半歩先も、『大衆と先端』の両方がわからないと落し処が分かりません。何時も先端に接している事が必要ですし、極端に言うと、先端の実感を掴むためには、あえて先端を商品化しないとわからないとも言えます。さじ加減を掴むと一口に言っても悩ましいところです。」

・成功体験が大きければ大きいほど、忘れられない記憶として我々の中に刷り込まれます。周囲の環境が変わっていても、どうしてもその体験を捨てきれないのです。そして、大きな失敗を犯してしまいます。成功体験と同様に、我々は多くの既成概念にも取り巻かれて生活しています。その既成概念も、所与の条件のように我々の思考と行動を支配します。それから抜け出すためにはどうしたらよいか。いつも自分の思考を真っさらにしておくことが必要です。」
・「自分の思考を真っさらにする」ため、前田は幅広くさまざまな人々と交流していた。

・「とにかく、いまはやれることをやりなさい」、危機に直面すると、その人の「本性」が現れるという。本当に深刻なトラブルに陥った時に、優秀な上司ほど、失敗した部下に感情をぶつけたりしないものだ。激怒したところで、トラブルが無くなるわけではない。冷静に善後策を講じる事こそ本来やるべきことだった。

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2023年02月17日

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