あらすじ
テレビ番組『探偵! ナイトスクープ』の全国アホ・バカ調査で示した分布図で、方言が京都を中心に何重もの円を描いていることを見せ、言語学会を驚かせた著者。その後1991年、膨大な私費を投じて全国1208市町村からのアンケート回答を集計、数多くの言葉の分布図を作成した。本書では50数枚の方言分布図を丹念に読み解き、日本語の伝播の歴史と背景にあるストーリーを面白く興味深く描き出す。身近な「どっさり」や「醤油」などの分布図を、方言にまつわるエピソードとともに解説。なかでも源氏物語での「戻る」に注目し、その変遷を史料を駆使してどこまでも深掘りし、古代に遡り波照間島まで旅する論考は圧巻。また、周圏分布の原点に立ち返り、柳田國男が『蝸牛考』でとなえた方言周圏論について検証する。謎解きの強烈な助っ人、「小竹探偵」とのやりとりも楽しい。『全国アホ・バカ分布考』(新潮文庫)、『全国マン・チン分布考』(インターナショナル新書)につづく第3弾!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アホバカ分布考は学生時代に読んだきりだったが、今回読んだ当本は、日本語研究の手法として感度するものが多かった。ネタの展開のさせ方はバブル臭さを感じるが、それがかえって日本語の古典的おもしろさを強調させている。
Posted by ブクログ
『アホ・バカ』、『マン・チン』は、タイトルの言葉のみを徹底的に調べ上げる本だったが、こちらの本は、もう色んな言葉をとにかく調べて調べて、ついにはいにしえの日本語とも言える琉球語を求めて、波照間島までやってくる。
『源氏物語』、そして周圏分布考の始祖『蝸牛考』まで取り上げ、名詞・動詞だけでなくさまざまな品詞の言葉も調査する。
著者はかなりロマンチックな想像力を常に働かせていく。その想像力が語源への推進力となることもあれば、本の物語性を進める源ともなる。
3冊通して読み、難しい史料などはどんどん読み飛ばしたが、こんなに楽しく読めたのは、きっとこのロマンチックな想像力をふんだんに文章に散りばめてくれたお陰だろうと思う。
Posted by ブクログ
<目次>
序章 「好き」を表す日本語は「好き」だけか?
第1章 御所から広まる高貴な言葉
第2章 紫式部さん、あなたは『源氏物語』の中で、「戻る」を使いましたか?
第3章 琉球のことばが浮かび上がらせる日本語の原像
第4章 豊かな方言の時代を生きてきた
第5章 『蝸牛考』の原点へ
結びの章 時空を超えて
<内容>
『全国アホ・バカ分布考』の元テレビマンが、日本語の謎を解いていく本。それも学術論文的ではないので、読みやすくわかりやすい。さらに50枚以上の地方方言地図が挿入され、その分布が一目なので、説得力が増している。著者は現在大学教授。もともと日本語に興味があったようで、「探偵!ナイトスクープ」の中でやった、アホ・バカの全国分布考察が、ここまで仕上がった感じ。その執念と言うか真面目さと言うか。学問はこうでなければならないことを証明してくれる本。
そうですね、本の結論は、京都からことばは日本を北へ南へと広がり、京都には新しい表現が誕生するので、東北や琉球に、古い日本語が残っているという話です。言葉としても、はつおんとしても、文法としても残っている。