あらすじ
それ(エイリアン)は
感染・変異する──
サイバーパンクの巨匠ウィリアム・ギブスンが描く
『エイリアン2』のその後──
未映像化脚本をもとにサイバーパンクの女王パット・カディガンが完全小説化!
リドリー・スコットが作り上げた世界をジェームズ・キャメロンがさらに発展させ世界的大ヒットとなった『エイリアン2』。
その続編の脚本家として指名されたのが、当時〝サイバーパンク〟でSF小説界に革新をもたらしたウィリアム・ギブスン。
しかし、その脚本は様々な事情によって映像化されることはなかった。
「エイリアン2」で生き残ったリプリー、ヒックス、ニュート、ビショップ――4人の運命をギブスンはどう描いたのか?
約30年の時を経て、ギブスン版『エイリアン3』の全貌があきらかとなる。
〈あらすじ〉
惑星LV426から帰還の途にあった宇宙船〈スラコ〉は、軍拡競争を続ける国家・革新人民連合(UPP)の支配するセクターに入る。UPPの部隊が〈スラコ〉に乗りこんだところ、ハイパースリープ・カプセル内にリプリー、ニュート、負傷したヒックスを発見。一体のフェイスハガーが襲ってくるが、部隊は危機一髪で脱出し、ビショップの残骸を奪い去る。〈スラコ〉は宇宙ステーション〈アンカーポイント〉に向かう。そこは小さな月ほどもある巨大な軍事施設で、船は兵器課の管理下に置かれる。植民地海兵隊と科学者のチームが〈スラコ〉に乗りこんだとき、二体のゼノモーフが出現。たちまち戦闘となり、リプリーの睡眠カプセルが激しく損傷する。やがてヒックスとニュートが覚醒。ヒックスは〈アンカーポイント〉で実施されている実験に関する噂を耳にする。ゼノモーフのクローンを作り、遺伝子操作をしているというのだ。その実験は恐るべきハイブリッドを、ひいてはクイーンをも産み出すかもしれない……。
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Posted by ブクログ
サイバーパンクの泰斗ウィリアム・ギブスンが興行主からの依頼で書いたものの、結局映画化されずにお蔵入りになった「エイリアン3」の脚本を、”サイバーパンクの女王”パット・カディガンがノベライズ。いわば、映画「エイリアン3」とは異なるパラレル・ワールドによる「もう一つの『エイリアン3』」。
うーん・・・これは評価が難しいですね。
SF者としては、「えっ、あのギブスンが書いた脚本を元にしてるの!?」と、そこに惹かれて手に取りますよね。しかーし、ギブスン風味は皆無。ついでに言うとカディガン風味も皆無。まぁ、カディガンはノベライズを得意としている作家でもあるので、あえて個性を出さずに書いたのだと思います。が、それにしても何だか「脚本をそのまま文章にしました」的な、小説としてはかなり読みづらい筆運び。ストーリー展開は「エイリアン2」のバリエーション以上でも以下でもなく、閉鎖空間でわらわら増殖するエイリアンと人間がドンパチやって闘い、生き残った数名の人間が脱出に成功して、ジ・エンド。
語弊を恐れずに言うと、本当に徹頭徹尾、「エイリアン」でしかないんですよ。「エイリアン」と聞いて想像するイメージそのままで、そこから抜きん出るものは何もないです。
しかし、だからこそ鴨は声を大にして言います。「エイリアン」好きは読め!特に「2」好きは絶対に、今すぐ読め!!
「エイリアン」の作品イメージとはほど遠いギブスンが脚本を依頼され、結果的に採用されなかった顛末は、「訳者あとがき」で詳しく紹介されています。このいきさつを読む限り、そもそもギブスンに依頼したのが間違いだったし、ギブスン自身もこの状況では辛かったろうな、と思います。
でも、唯一幸運だったのが、ギブスン自身が大の「エイリアン」ファンだった、ということ。だからこそ、世界中の「エイリアン」ファンを喜ばせるために、「そうそう、こんな『エイリアン』が観たかったんだよ!」と言わしめるための要素をてんこ盛りに盛り込み、自分が大好きな「エイリアン」の世界を純粋に描ききった、それがこの脚本なんだと鴨は感じました。
だから、「えっ、あのギブスンが・・・」と思って読むと、かなり「???」です。小説としても読みづらいです。
でも、シンプルな「エイリアンのノベライズ」として読むと、くっそ面白いです!正に巻を置く能わざる面白さ。リプリーもヒックスもニュートもビショップも全員生き残り、それぞれの道で生を模索します。結構なボリュームの本ですが、脳内に映像を展開しつつ一気読みしてしまいました。
とはいえ、本質的にはアクションものなわけで、終盤の展開もまぁ想定内で、「エイリアン」だしこんなもんかな、と思ってたんですよ。
ところがなんと、最後の最後の数ページで、突然に直球王道の”SF的ヴィジョン”がぶわっと展開するのです。しかも、人間ではないアンドロイドのビショップの語りによって。SFとして文句のつけようがない、見事な落とし前の付け方です。ギブスンの底力ですね。
この”SF的ヴィジョン”によって、もしこの脚本が映画に採用されていたら「エイリアン4」は無かっただろうな、と鴨は思いました。それまでは「SFとしての評価は星2つか、良いとこ3つかな・・・」と思いながら読んでいましたが、この最後の数ページで、星4つ行きました!
ことほど左様に、読み方によって評価も大きく変わってくるであろう、難しい作品です。
しかし、繰り返して言わせていただきます。「エイリアン」好きは読め!特に「2」好きは絶対に、今すぐ読め!!
Posted by ブクログ
まさかこんな本が出ていたとは!
自分も配信だけど、エイリアン3は鑑賞済みです。
開始10分弱の、唖然とするような展開はまだ覚えています。
おおおおい!?
あとがきで、ウィリアム・ギブスン版脚本の数奇な道筋も知ることができますが、なにより2で生き残った3人(2人と1体?)が、違和感なくストーリーにのっててよかった!
ただまぁ、映画製作会社側の言い分も多分に分かるところもあります。
バイオハザード的なおどろおどろしさはパワーアップしつつも、後半の脱出劇は確かに2の焼き直しと言われてもしょうがないし、冷戦を彷彿とさせる関係性は古いというのも。
わりと頷けます。
でも、ここから推敲を重ねた作品を映像で観たかった思いはありますね。
そう感じさせられる一作でした。
Posted by ブクログ
2023-04-30
いや、著者はパッド・キャディガンだろ。まあ、元になった脚本はギブスンだけども。
中身はエイリアン2の直接の続編。映画のエイリアン3とは異なり、ちゃんと2の生き残りが活躍する。冷戦がベースにあったり、手触りが2そのまんまと言うのでボツになったのも分からなくもない。けどそのまんまということはすげぇ面白いということでもある。
そして最後の展開、プロメテウスに通じるものがあって、ちょっと複雑。
まあ読む手が止まらなかったのも確か。
Posted by ブクログ
SFホラー映画の金字塔、『エイリアン』。1979年に第1作が発表されてからこれまで、ナンバリングタイトル4作、前日譚として『プロメテウス』、『エイリアン:コヴェナント』、その他にも『エイリアンvsプレデター』シリーズ等、メディア問わず派生作品が生まれている。本書は、ナンバリングタイトル3作目である『エイリアン3』の、映像化されなかった幻の脚本をノベライズした作品である。
脚本を書いたのはサイバーパンクの名手、ウィリアム・ギブスン。1984年に『ニューロマンサー』を発表し、その独創的な世界観で一躍有名となった彼に、映画制作者はシリーズに新奇性を与えてくれるものと期待を寄せ、"3"(と"4")の脚本執筆を依頼するが、脚本家組合のストライキに影響されたタイトなスケジュールと、脚本執筆という初めての経験からか、期待されていた彼の"色"を出すことが出来ず、「"2"の焼き直し」という烙印を押され、ボツとなってしまう。("1"寄りに書き直した第2稿も執筆するが、こちらも採用されず。)その後、脚本を始めとして制作が混迷を極めた中で発表された"3"は、酷評の嵐に。今や名監督として知られるデヴィッド・フィンチャーを失意の底に陥れることとなる。
それから時が流れ2013年、ギブスン本人がボツとなった脚本を公開し、これがシリーズのファンから好評を博し、(ギブスンと同じくサイバーパンクを得意とする)パット・カディガンによってノベライズ、本書が発刊される。
と、(本書あとがきを参考に、)本書が世に出るまでの経緯を記したが、実際に読んでみての感想はというと・・・いや、普通に面白い。前作"2"まで主役を務めたリプリーがほとんど登場せず、"2"で初登場した海兵隊のヒックス伍長と人造人間のビショップがメイン。コロニーを舞台に、人間を始めとした動物に感染、"エイリアン"に変異させるという新たな設定で描かれる阿鼻叫喚は、SFホラーとしてワクワクしながら読むことが出来た。
当時は「"2"の焼き直し」とボツにされた訳だが、確かにコロニーを舞台に大量のエイリアンと相対するというのは同じかもしれないが、住人が殺戮された後を描いた"2"と、殺戮されるオンタイムを描いた今作は差別化できたのではと思える。まあ結局は製作者がギブスンに求めていた"新奇性"ではなかったということか。(他の動物に感染、変異させるという新しい設定も、これまでのチェストバスターからの"新奇性"を感じられなかったということかもしれない。)
結果論だが・・・こっちを映画化して欲しかった!