あらすじ
行き詰まる西欧近代、広がる格差、新型コロナウイルスによるパンデミックに動揺する2010年代末―2020年代の国内外の事象を取り扱いながら「多様性」「自由」「平等」を謳って差別する現代の闇を解き明かす。
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Posted by ブクログ
「〇〇を倒せば世界はもっと良くなる」と期待できるわかりやすい悪を明確に提示してくれる「単純系」と、「あなたの生き面だや苦しさは、あなたのせいではなく〇〇の加害によってもたらされた」とする「責任の外部化」が、反ワクチンやフェミニズム、ヴィーがんなど多くのラディカルな思想に共通する。これらは「私憤」から「公憤」「義憤」へ昇華しているとも捉えられる。
ハンデのある人の感動の物語は「ハンデを抱える人は努力を重ねて卓越しなければならない」という社会的メッセージと同義であり、今の社会を肯定するマジョリティにとっての「赦し」でもある。
食肉や喫煙など、個人の自由が温暖化や感染症など、社会のリスクのために失われつつある。
自分にとって害や不快感のある人を排除して快適な暮らしを選ぶのであれば、自分にとって益や助けとなる人々の登場をも同時に諦めなければならない。
Posted by ブクログ
タイトルがもう不穏ですね。これを手に取る人は自分なりに「正しさ」というものについてきちんと一度は考えたことのある人なんではないかなと想像。
「本書は物語の否定である」確かに読み終えて振り返るとそういう一冊だったと思う。
私自身が往々にして、世間によくある「いい話」を見たり聞いたりすると鼻白むことがあるのは、著者が言うような「誰からも快く受け入れられるように美しく整えられた物語」だと感じさせられるからだなとわかった。もやもやしていたものが言語化されてちょっとすっとしましたね。
「不寛容には不寛容に対処すべき」「被害者ポジション」「面倒くさい他者が訪ねてきたらもっとふさわしい場所があるよと優しく排除」「どんどん潔癖で倫理的になっている善良な市民」響く言葉や文章が目白押しでした。
「排除アート」なる言葉を本書で初めて知りました。しかしモノは見たことがあります。
そ、そういうことだったのか、と己の無知を痛感しました。
しかし、本書が刺さる人はどのくらいいるでしょうか。これを手に取る人でも全編に頷ける人は少ないかもしれない。
ただ、頷けなくてもここに著された人たちが世の中には見えないだけですごくいる、ということに気づくこと自体にも意味はあると私は思いたい。
そういう視点を忘れずに社会を観る姿勢を持ち続けていきたいと私は思いました。
本書も最も読むべき人にこそ一番届きにくい一冊だな…としみじみ感じます。