あらすじ
「差別の真相」、どこまで知ってますか? 同和対策事業の変遷、潜在する「身元調査」、いまだに残る「恋愛・結婚・就職」差別の実態。奇しくもこの10年余は、解放運動の明と暗が浮き彫りになった期間であった――。被差別部落に生まれ育ち、大学卒業後、地方紙の記者などを経てフリーライターになった著者よる「差別」の現場のルポ。雑誌などに発表した原稿を加筆・修正して単行本にまとめました。
●部落問題とは何なのか
部落差別は大きく変わった。一般的に、若い世代の人は部落問題の知識があまりない。だから、著者は昔のように部落差別の実態を執拗に訴えることに違和感を持っている。しかし、人は時には得体の知れないものに惑わされることがある。たとえば、心霊スポットなどに代表される怪奇現象のように。気になる人はとことん気になるが、気ならない人はまったく無関心。その心理は部落差別と近いのではないか――。本書では、差別の本質的な問題を考察したエッセイを多数収録しました。
●ルポ 部落の現場から
阪神淡路大震災では被差別部落でも大きな被害とたくさんの犠牲者が出た。当時、被災者となったマイノリティ(在日韓国・朝鮮人や障害者など)には取材陣が殺到したが、部落問題と震災の現場を報じたメディアはほとんど皆無だった。なぜマスコミはこの問題を黙殺したのか。そして震災当時、被差別部落では何が起きていたのか。著者がその現場をルポした。
その他、被差別部落が外国人をどう受け入れた(あるいは排除したか)、その姿を描いたルポなども掲載しました。
●小西邦彦被告インタビュー
元暴力団組員にして、部落解放同盟支部長、社会福祉法人の理事長も務めていた小西邦彦が逮捕されたのは06年5月のことだった。容疑は業務上横領。マスコミは犯罪と同和行政の関係をこぞって報道したが、この事件はそれほど単純なものではなかった――。小西被告が著者だけに見せた「素顔」は読み応え充分。
〇本書の内容
被差別部落の青春群像
◎差別されはじかれて辿った「ヤクザ」への道
◎大学生、屠場を撮る
ルポ部落の現場から
◎皮革工場の外国人労働者
◎報じられなかった「阪神大震災と被差別部落」
危ういマスコミ
◎新聞社が『現代』広告を拒否
飛鳥会事件の深淵
◎小西邦彦被告インタビュー
『同和利権の真相』の深層
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
東京に住んでいるとあまり意識することはないのですが、部落問題は今も根強く残っていることを知りました。
この本を読んたあと、京都の柳原銀行記念資料館にも行ってきました。この銀行は、被差別部落の住民によって過去に設立された、日本で唯一の銀行です。
When you live in Tokyo, you hardly ever give it much thought, but I learned that the discriminated Buraku issue is still deeply rooted today.
After reading this book, I also visited the Yanagihara Bank Memorial Museum in Kyoto. This bank was founded in the past by residents of a discriminated Buraku community, and it is the only bank of its kind in Japan.
Posted by ブクログ
『「差別の真相」、どこまで知ってますか?同和対策事業の変遷、潜在する「身元調査」、いまだに残る「恋愛・結婚・就職」(中略)』知らないことはたくさんありますね。
こういう問題が比較的ないところで育った僕がこの問題を追うきっかけになったのは「ゴー宣」とベタといえばものすごくベタなんだけど。島崎藤村の『破戒』この二つを 中学生のころに読んでいたからなんですが、そういうものが現在でも表には出ない形で『ある』と知ったのは東京で暮らしていたときなのかもしれません。
僕が見聞きしたことで、具体的なことはあれこれあげませんが。やはり、存在はします。著者の出身は関西の「ムラ」ですので。言ってみれば『当事者』になるわけです。僕は関西には修学旅行でくらいしかいったことはありませんので。本当のところは詳しくは知りません。でも、ここにある話を読んでいると僕の好きな歌のひとつで代表的な「放送禁止歌」である岡林信康の『手紙』の世界に描かれていることは、決して過去のことではないんだな、ということを思い知らされます。
だからといって今の自分にいったい何ができるか、というのはわかりませんが、この本を取り上げることによって、皆様が少しでもこの問題に関心を持ってくれれば、とは思っているのですが…。
部落問題の歴史的背景を知っていれば楽しめると思います。私は何も知らず、部落問題を知りたいと思って読んだので、残念ですがあまり頭に入りませんでした…。読む前に簡単に部落問題について勉強するのをおすすめします。