あらすじ
どうして日本の国力は
30年以上も低下し続けているのか?
低所得・低物価・低金利・低成長の
「4低」=「日本病」に喘ぐニッポンを、
気鋭のエコノミストが分析!
<本書の主な内容>
・「4低」現象は「日本化(Japanification)」と呼ばれ、世界で研究対象に
・今や日本の賃金は、アメリカの半分強、韓国の約9割
・失業率が高い国ほど、賃金上昇率も高い不思議
・「物価上昇率がマイナス」は、OECD諸国で日本だけ
・異次元の金融緩和でも、物価が上がらない理由
・日本は家計も企業も過剰貯蓄、はびこるデフレマインド
・アメリカはリーマン・ショック後、すごい勢いで量的緩和と利下げを行い、「日本化」回避に成功
・日本の政府債務の増加ペースはG7の中で最低、財政赤字を気にしすぎ
・ここ30年で、アメリカのGDPは2倍、日本は1.2倍
・日本では、年収200万円未満の世帯が増加、年収1500万円以上の世帯は減少⇒1億総貧困化へ
・「日本の年金・社会保障制度は危機的状況」の間違い
・大きな可能性を秘めている日本の第一次産業
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Posted by ブクログ
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アベノミクスを支持する著者がバブル崩壊以降の低所得・低物価・低金利・低成長する経済状況を日本病として解説される。女性と高齢者が働き手になり社会保障を支え、個人投資による資産形成で将来不安を解消させることが景気回復に繋がる。
永濱 利廣
一九七一年、群馬県生まれ。第一生命経済研究所首席エコノミスト。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。一九九五年に第一生命保険入社、日本経済研究センターを経て、二〇一六年より現職。衆議院調査局内閣調査室客員調査員、総務省「消費統計研究会」委員、景気循環学会常務理事、跡見学園女子大学非常勤講師。二〇一五年、景気循環学会中原奨励賞を受賞。著書に『経済危機はいつまで続くか――コロナ・ショックに揺れる世界と日本』『MMTとケインズ経済学』など多数。
日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか (講談社現代新書)
by 永濱利廣
日本では「失業」と聞くと、どうしても悪いイメージを抱きがちですが、世界的にはキャリアアップのために自発的に会社を辞めた人々が多く含まれており、ここでの数字は必ずしも「かわいそうな失業者」のみを意味しません。むしろ「転職率」に近いイメージで捉えてください。 ポストの空きが出やすいため再就職もしやすいですし、労働市場の高い流動性はキャリアチェンジのしやすさも意味します。一度社会に出た後に大学に戻って専門性を身につけ直すことも、海外では珍しくありません。 その意味では、失業率が低いかわりに賃金の上がりにくい日本は、「安心して失業できない国」と言えるのかもしれません。
ただし、アメリカの場合は社会人年齢での教育参加率は高いのですが、GDP(国内総生産) に対する再就職支援の割合は非常に低くなっています。これは、すべて自己責任という社会を反映しています。金銭的・時間的余裕があれば再教育を受けられるけれど、それはすべての人に叶うわけではありません。アメリカの場合は自由市場がやや行きすぎており、これが圧倒的な経済格差にもつながっています。そのため、政府主導で再就職支援を行う北欧のトランポリン型社会のほうが、日本の経済成長にとっては望ましいと考えられます。
先ほども見たとおり、ひとえに「物価上昇(インフレ)」と言っても、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。 景気が良くなることで企業が物価を上げることができ、企業は収益を上げ、そこで働く人の賃金も上がり購買力が増す……この好循環をもたらすのが「良いインフレ」です。これは、「需要が供給を上回ることによる物価上昇(demand-pull inflation)」と言い換えることができます。 逆に、「悪いインフレ」とは、原料価格の値上がりなど、「生産コストの高騰による物価上昇(cost-push inflation)」を指します。
現在のように、脱炭素化やロシアによるウクライナ侵攻の影響などにより、日本国内で代替のしようがない原油や穀物の値段が上がってしまうと、企業は製造コストが上がるので価格を上げざるを得ません。しかし、単に損を減らすために上げているだけなので、企業が儲かることはなく、働く人の賃金も増えません。生活必需品ですので消費者は高い値段でも買わざるを得ませんが、それはただ所得が海外へ流出しているだけで、国内には恩恵がありません。こういう物価上昇が「悪いインフレ」なのです。
まずGDP(国内総生産) とは、「一定期間内に国内で生み出されたすべての付加価値の総和」を表す値です(付加価値とは、総生産額から生産に必要な原材料・燃料費などの中間投入額を差し引いたもの)。
ではここで、アメリカではデフレにならずにIT化(効率化) を進められたのはなぜだろうか、という疑問が浮かびます。 それは、アメリカ経済が日本のような極端な需要不足の状況になかったからです。経済が過熱しているときというのは人手不足のときなので、効率化で供給量が増えることで良い影響が出ます。 一方、経済が冷え込んでいるときは人が余っているときですから、過度の効率化を行うと余計に人が余ってしまい、景気がさらに悪化してしまうので、むしろ控えたほうがよいのです。 そもそもアメリカの景気が良いのは、景気が落ち込んだときに、すかさず積極的に金融政策と財政政策を行い、デフレを回避したからに尽きます。コロナ・ショック以降は少しやりすぎて過熱しており、政策の出口に向かおうとしています。それでも、デフレの長期化によって「日本病」になるよりマシだという判断でしょう。このように、経済を早期に健全な状態にすることで、効率化もうまくいき、順調に成長を続けられるのです。 アメリカの好景気は、もちろん新しくて強い企業がたくさん生まれていることにも由来します。しかし、いくら素晴らしい企業がたくさんあっても、デフレを長期化させてしまったらどうなるか、それはここ 30 年の「日本病」が証明しています。 つまり「景気」というものに対しては、強い産業が存在するだけではダメで、金融政策や財政政策といった経済政策が非常に大きな意味をもっていると言えます。
緩やかなインフレの国では、新しいことに果敢にチャレンジしていく人のほうが出世し、経営者にもなりやすいものです。しかしデフレ下では、できるだけ積極的な経営を行わず、内向きに経費削減やリストラなどで数字を安定させるほうが評価されやすいことになりがちです。それゆえ日本では、なかなか前向きな経営に踏み切らない経営者が増えてしまったのではないかとの指摘もあります。
しかし、海外の研究などを見ると、日本の現在の中立金利水準は大幅マイナスになっているとされています。なぜなら、日本の企業も家計も、将来のためにお金を貯め込みすぎているからです。 国内の経済主体は基本的に「家計」「企業」「政府」しかありません。このうち日本では家計と企業がお金を貯めすぎてお金が余っています。政府はお金が足りないのですが、三つの主体を合わせると、国内全体では異常にお金が余っており、よって中立金利は大幅マイナスとなります。
しかし、こうした日本の政策当局のメンタリティが変わらない限り、日本のデフレはこのまま続く可能性があります。金融政策は黒田総裁になって変わりましたが、財政政策が変わらないと、デフレ脱却はなかなか難しいのです。たとえ量的緩和を行っても、お金が市場に「回って」いかなければ効果は限られるからです。どこの国でも、財務省は大規模な財政出動をやりたがらないものですが、海外では官邸主導、政治家主導で大胆な政策を行ってきました。その意味では、日本も海外を見習うべきでしょう。
サマーズ氏やバーナンキ氏に限らず、海外の主流派経済学者の間では、デフレ脱却のためには金融緩和に加えて財政の積極的な出動が必須であるというのが常識になっています。 しかし、日本では均衡財政主義が主流になっています。そして、マスコミでは「日本の政府債務が増えて大変だ」というメッセージが定期的に流されるので意外に思われるかもしれませんが、海外と比較したグラフ(図表4‐2) を見ると、明らかに日本の政府債務残高は増え方が少ないことがわかります。
まず、私は、少なくとも現状の日本においては、ある程度は円安のほうが良いと思っています。 国内で代替のしようがない原油などに限れば、もちろん円高のほうが良くなりますが、円高になると海外からその分安くモノやサービスが入ってくるので、競合する国産品が売れにくくなります。日本が海外へ輸出しているモノやサービスも、円高が進むと売れにくくなります。こういうときに円高にしてしまうと、国内で生み出される付加価値が奪われ、経済全体で考えれば良くないと言えます。
今のアメリカのように経済が過熱している状況なら、それを抑えるために自国通貨を高くしたほうがよいわけですが、日本は長らくデフレ、つまり「需要が足りない」状況です。 また、経常収支の側面からも円安が望ましいと言えます。海外から受け取る所得と、日本から海外へ支払う所得のバランスを考えたとき、海外から受け取るより支払う所得が多ければ、当然円高のほうが有利です。しかし、日本の経常収支は黒字、つまり海外から受け取る所得のほうが多いのが一般的です。
日本ではいまだに投資をギャンブルと区別しない人が多いですが、ギャンブルのような投資もあれば、インデックスファンドなど比較的リスクが抑えられた投資もあります。将来不安が大きければこそ、「お金にも働いてもらう」ための投資知識を持っておくのは重要なことに思えます。
海外では貧しい人はより貧しく、裕福な人はより裕福になることで格差が広がっていたわけですが、日本の場合はみんなが貧しくなっている。つまり日本は「格差社会」ではなく、「総貧困化」に向かっているわけです。 なぜこんなことになっているかと言えば、日本が経済成長していないからです。海外で所得格差が広がっているのは、新しい産業や経済成長の恩恵がうまく分配されず、富裕層に富が集まりやすくなってしまうためです。だからこそ、生活必需品の値段が上がるスクリューフレーションは「中低所得者層への締め付け」と言われます。 しかし日本では、大きな富を生み出す新しい産業が生まれるわけでもなく、長期停滞で賃金も上がらず、「みんなが締め付けられている」状態です。
図表6‐4では、高所得者層と低所得者層の割合から、日本では格差が広がっているのではなく、みんなが貧しくなっているのだということを示しました。
逆に、2010年~2011年、民主党政権下で実質賃金が上がっているのですが、実はこのときは景気悪化により低賃金の人たちが多く解雇されたことで、今度は逆に平均賃金が押し上げられたのです。さらに景気悪化の影響で物価が下がったことも手伝い、「名目賃金 消費者物価」である実質賃金が上がったに過ぎません。 経済政策の最大の目的は「雇用の最大化」です。マクロ経済学的な視点で見れば、実際の雇用が増えているほうが、経済政策としては断然良いと言えます。
MMTの提唱者の一人、ニューヨーク州立大学教授のステファニー・ケルトン氏は日本経済新聞(2019年4月 13 日付) の取材に、「日本が『失われた 20 年』と言われるのは、インフレを極端に恐れたからだ」として、日本がデフレ脱却を確実にするには、財政支出の拡大が必要と語っています。 これは、本書でさんざん必要性を力説してきた、金融政策と財政政策の連携に非常に似ているように見えます。流動性の罠に陥っているような深刻なデフレに対しては、金融政策と財政政策を大規模に行う必要がある。そのためには、マネタリーベースを増やす量的緩和は躊躇せず行うべきだ。
分配とは耳に心地いい言葉ですが、毒にも薬にもなりえます。岸田政権の言う「分配」はどちらでしょうか。 分配政策がもたらすメリットとは、経済が成長することによって新たに増えた税収を、意図的に低所得者層に分配することで底辺を底上げすること。デメリットは、経済のパイが拡大しない中で、経済を牽引するような高所得者層の所得を低所得者側に分配することで、そもそもの経済成長すら止めてしまうことです。つまり経済が拡大しないことには、分配政策を正しく行うことはできません。
富裕層ほど所得に占める金融所得の割合が高くなるのに、金融所得を他の所得とは切り離して課税する「申告分離課税」が採用されており、しかも一律約 20%。そのため、おおむね所得1億円を境にして、所得税の負担率がむしろ下がること(いわゆる「1億円の壁」) を岸田首相は指摘していました。これに対する問題意識からの見直し提案です。 首相は「『成長と分配』の好循環を実現する」と強調してはいますが、しかし、金融所得税率を一律に引き上げたりすれば、貯蓄から投資への流れに冷や水を浴びせることになり、これだけでは全体のパイを増やす政策とは言えないでしょう。
Posted by ブクログ
読みやすい本です。
すっかり高い日本から安い日本になってしまい、このまま大した対策もとらず、ただ手を拱いていたら日本の状況はもっともっと悪くなりえます。
はじめに
第1章 日本病ー低所得 低物価 低金利 低成長
第2章「低所得」ニッポン
第3章「低物価」ニッポン
第4章「低金利」ニッポン
第5章「低成長」ニッポン
第6章 スクリューフレーションの脅威ー1億総貧困化
第7章 下り坂ニッポンを上り坂に変えには?
おわりに
Posted by ブクログ
以前、有名な学者の著書では、デフレの方がインフレより良いと書かれておりそんなもんかと思っていたが、デフレには悪いデフレしかないことを確認できた。政策当局があまりにもインフレを怖がりすぎたことから、財政政策を徹底できず、日本の失われた30年を招いたといえる。日本は格差が広がっているのてはなく、全ての所得層が貧しくなっている。この点、マスコミの報道も問題だろう。
デフレの放置による貧困化が少子化を呼び込んでいるとすると、先の戦争で亡国を招いた戦前の政治家、軍部と、現在の政治家、日銀等は責任は同じと言って良いのでほないか。
Posted by ブクログ
現在日本は、低成長・低賃金・低物価・低金利の「4低」状態にあり、ながらくここから抜け出せていない。このままでは日本はどんどん衰退の道を辿り、世界から買われるだけの安い国になってしまうだろう。
本書はこのような危機感を持ったエコノミストである著者が、それぞれの詳細の現状分析、その原因を明確にした上で脱出のための提言を述べる、という構成になっている。
非常にフェアな本だと思った。
現状分析はすべて公式にプレスされた最新のデータに基づいて行われており、納得感が高い。原因と対策には疑問符がつくところは数箇所あったが、概ね一般に受け入れられている内容であり、突飛なものではない。
裏返すと目新しい論ではないということだが、論点と課題が明確になっていて非常にわかりやすい。子細の説明は省くが、今後日本の回帰策として重要なのは「財政出動を増やすこと」と「雇用の流動性を高めること」の2つであると個人的に強く思う。
前者はそのままの意味で、安倍元首相、黒田日銀総裁によって行われた「アベノミクス」によって量的金融緩和が実施されたことで、日本のマネタリーベースは増加した。しかし政府による財政出動が足りていないために完全なデフレ脱却は達成されていない。
今後は継続した量的緩和とともに、財政出動により景気を刺激することが必要である。日銀新総裁の植田さんの経歴を見る限り、しばらくは量的緩和施策が維持されそうだが、今後の行先を注視したい。
後者も重要である。日本企業の賃金が欧米と比較して上がらないのは、日本が欧米に比べて労働者の流動性が低く、企業に対する賃上げのプレッシャーを与えられていないことが一因にある。
このためには日本の雇用法を見直して流動性を高める施策をとらなければならない。そして人材の適材適所への配置転換と個人のスキルアップを促し、生産性を高めることで賃上げが可能な環境を作っていくべきだ。
この2つの改革が遅々として進まないのは、ひとえに日本は保守的政治勢力と老人が力を握っているからに他ならない。
たとえばメディアは「日本の財政は危機的状況にある」とフェイクを喧伝することで、日本において財政出動は不可能かつ増税が仕方のないことであると思い込ませている。
彼らが日本の核心を妨げる癌であることは間違いないが、これらを無批判に受け入れる国民にも問題がある。馬鹿で無知故に、日本国民は政治家に「なめられて」いるのである。
日本人はもっと経済、金融、国際情勢について勉強しなければならない。思考停止でいつまでも安泰な生活を送ることができる時代はもうすでに終わったのだ。
日本人が賢くなり、政治家に圧力をかけることができてはじめて日本の民主主義は次のステージにいける。
本書はそのための基礎となる一冊である。
Posted by ブクログ
わかりやすかった。
ザイム真理教が指摘する財務省の考え方の間違いをより分かりやすく説明していた。
経済の人はみんなアベノミクスを評価している。強引で経済格差を広げた印象があったけれど、経済学的には正解な打ち手だったのか。
人材の流動性はぜひ高くなってほしい。
トランポリン型社会
Posted by ブクログ
気になるポイントを明確に回答してくれた本。読めば読むほど、これだけ分かりやすく方向性を示せるなら、その道筋で舵取りができれば良いのだがと感じた。MMTの論点整理は、今までで一番分かりやすく感じた。以下は少し編集したが、メモ書きと抜粋。
ー インフレには良し悪しがあるが、良いデフレは無い。物価が下落しても借金は実質負担増になり、賃金も、あがらない。物価が上がらないと賃金が上がらない。
ー 国内の経済主体は家計、企業、政府の三つ。日本は、家計と企業がお金を貯め過ぎているが、政府はお金が足りない。三つ合わせると国内全体では異常にお金が余っていて、中立金利は大幅マイナスになる。
ー 現在の金融緩和は、本当はもっと金利を下げたいのに物理的に下げられないでいる。中立金利が低過ぎて金融政策が効きにくい状況を流動性の罠にある。
ー 円安は1年目は輸入物価が先に高くなるので家計にはマイナス。2年目以降は雇用が増えたり給料が上がりプラス。しかし、労働分配率と労働市場の流動性が低いせいで給与に還元されにくく、企業は現預金ばかり増やすような経営をしがちであるというのが日本の問題。
ー 新規の労働力が大量に入った時は、平均賃金は一旦下がるのが当然。経済政策の最大の目的は雇用の最大化。マクロ経済学的な視点で見れば、実際の雇用が増えている方が経済政策としては断然良い。
ー インフレ目標2%を達成するためには需要を増やし、GDPギャップを需要超過に持っていくような金融・財政政策を積極的に行うことが必要。特に日本の場合は、貯蓄超過により中立金利が大幅にマイナスに落ち込んでいて、中立金利以上に政策金利を下げることが難しい流動性の罠に陥っているので、金融政策だけでは立ち行かない。そのため、財政政策によって景気を引っ張り上げることが必要。
ー ハーバード大学のケネスロゴフはMMTは経済理論とすら呼べないと酷評し、FRB議長のジェロームパウエルもMMTを一旦の経済理論としている。MMTは第一義的には金融政策の有効性は低く、財政政策への依存度を高める必要があるとしている。つまり、財政政策主導で経済を安定させられると主張していると言うことがポイント。財政出動を押し進めるのは中立金利が下がりすぎていて、金融政策の効果が出にくい流動性の罠を抜け出すまで、と限定付けて考えているのに対して、MMTでは金利は自然に決まるものであり、財政政策主導で経済の安定は実現できるとしている。ここが最大の違い。景気が良いときに政府が大量の国債を発行すると、金利が上昇し、民間の資金需要が抑圧される。クラウディングアウトを招く。MMTは、クラウディングアウトが起きないと考えている。
Posted by ブクログ
一読で全てを理解することは出来ないが、何故給料と物価が安いままなのかがデータに基づいて解説されてたので、再読してでも理解したいと思った。
経済に関するニュースや、日常の経済活動のロジックを読み解く力が付いたような気がする。
Posted by ブクログ
日本の慢性的な低賃金や低成長について「病」という表現が面白かった。
ただ「病」という表現には「治せる可能性がある」ということを含んでいる。
著者である永濱さんは厳しい現実を捉えながらも悲観はしていないように感じた。
ダウンサイジングしていく日本の現状に合わせてひとりひとりご出来ることを考えさせられる一冊。
Posted by ブクログ
日本経済はバブル崩壊以降、30年間、成長を止めたままだ。それを、筆者は4低、「低所得・低物価・低金利・低成長」と呼び、本書の中でその実態と原因を探っている。
バブル崩壊の後に大量の不良債権が取り残され、各経済主体が借金の返済等の対応に追われるうちに、すっかりとデフレマインドが定着し、そのままデフレから抜け出せない状態、デフレスパイラスの中にいる。企業や家計が金を使わないため、モノやサービスの値段が上げられず、そのために企業や店舗の売り上げが減り、働く人の給料も上がらない、あるいは減ってしまう。そうなると、ますます人は消費をしなくなるという悪循環に落ち込んでいるのだ。それは、「明日は今日よりも良いはずがない。だからお金は使わずに将来に備えるのだ」というデフレマインドが抜きがたく残っているから。こういった状態の中で、人は結婚をためらい、子どもを持つことをためらう。デフレは少子高齢化にも悪影響を与えている可能性があるのだ。
30年にもわたるデフレ状態のことを、海外では「日本化、Japanification」と呼び、経済学での研究の対象にもなっているそうだ。その研究の成果が出たのが、欧米のリーマンショックの後の対応。金融を緩和し、マネーを市場に供給する。出来る限り、早いスピードで、かつ、限界までの大量に。それによって、欧米はデフレが続くことを避けることが出来た。コロナの対応も欧米は同じことを行っている。その対応がやや行き過ぎたので、金利を上げる等の調整局面に欧米はいる。
バブル崩壊後、すぐにでもこの欧米のような対応を行っておけば、ここまでのデフレに陥らない可能性が日本にもあった、と筆者は主張する。しかし、アベノミックス、黒田日銀総裁による異次元金融緩和は2012年とか2013年のこと、バブル崩壊後、20年以上が経過し、なかなか人々のデフレマインドは解凍できず、今のところ、効果は限定的である。しかし、これを続けるしか手段はない、とも筆者は主張する。
日本が不況を抜け出せない理由について、筆者の主張が正しいかどうかは分からないが、このようにデータを使って、その理由を説明しようとする本自体が少ない(私が読んでいないだけという可能性も高いが)中で、議論の材料になるという意味でも良い本だと思う。このような説明は、本来は政治家や官僚が行うべきと思うのだが、そのような説明を聞いたことはない。
Posted by ブクログ
日本経済が低迷し続け、平均賃金は韓国よりも低くなってしまったという事実に対して、日本人は耳を塞いでいる。
ネットでは日本が素晴らしくて韓国がどうしようもないという人たちが大声をあげているのだが、このままではますます日本は二流国になってしまう。
本書は日本経済の現状分析についてはとてもわかりやすく、類書も多い中で簡潔に原因を明らかにしている。その一方で、どうすればいいのかという点については抽象的でツッコミが足らない。
韓国との比較で言えば、日本の労働慣行があまりにも硬直かしているため、転職が不利、起業が困難、など産業の新陳代謝が進まないことが問題である。この状況を打開するために何ができるのかという点について、第一次産業が有望で、オランダを例に挙げているのはガッカリだ。
Posted by ブクログ
給料は上がってほしいけど、物価は安いままがいいなと随分とわがままな自分に気づきました。
経済も学ぶながら、適正を知れるようになりたいと思います。
匿名
議論を重ねるための一助
日本の「失われた30年」と長く続く日本病について、原因と解決法を示そうとした、本来は意欲的な本だ。しかし全般的に、重病の患者を前にして、原因をあげることはしているが、どうやったら病状が改善するか、という、政策を打ち出す点では、しりつぼみの感じがある。
財政出動が急務だという著者の指摘はもっともだ。しかしアベノミクスを掲げた前首相は、東京オリンピックの誘致にみられるように、経済先般の底上げに利するような出動はしていない。どういう財政出動をすれば、経済の底上げにつながるか、(税)金の使い道に関して触れていない。さらに雇用の流動性を高めることの重要性も納得できるが、年金の二重構造や、薄い社会保障を抱えた日本社会で、どうしたら労働者の痛みを最小限に抑えて実施できるのか、ほとんど触れていない。経済成長ももちろん大事だが、パートや非正規雇用など、社会的弱者にいくしわ寄せを放置したままでは、内需を支える購買力は伸びないと思う。
最後に、「海外では当たり前」、といった表現が散見されるが、この海外とはいったいどこの国のことを指しているのだろう。アメリカか、ヨーロッパか、アジアか、謎に包まれたままだ。「進んだ海外に比べて、日本ではまだまだ」という気持ちは、わからないではないが、少なくとも経済、社会の問題に真剣に、主観を抑えて取り込もうとするならば、読者が具体的に検証できるように、場所を特定すべきだろう。でなければ、学術書ではないとはいえ、科学的な裏付けのある著作とは受け止めにくい。
しかし日本病から脱出するために、意識を研ぎ澄まし、議論を重ねるための一助、という点では、評価できる。類書が出版されて、日本病の治癒に資することを願う。
Posted by ブクログ
2023年25冊目。満足度★★★☆☆
日本経済の現状について、広く一般の読者にとって、明快かつ簡潔に解説
個人的には「おさらい」の域を出ない内容であるが、特に経済に詳しくない人が薄い新書で「日本病」を理解できお勧め
Posted by ブクログ
あまり頭に入ってこなかった。
日本病(日本化 ジャパフィニケーション)
低所得・低物価・低金利・低成長を指す。
この現象は2008リーマンショックの際に世界中で見られたが、欧米は大規模な量的金融緩和政策・大規模財政出動によって長期化をさけた。なぜ各国は長期化を避けられていたのか、それはバブル崩壊後からの日本病を研究してたからだ。各国が日本化を恐れたのはデフレの長期化による自殺者の増加、低出生率など、人口を含めて大きな影響があったから。日本はショック後慎重な態度を示したため異常な円高・株安を招いた。起業は拠点を海外に移し産業の空洞化を招き、バブル以降冷え込んだ地方経済を完全に疲弊させた。
1990年バブル崩壊後、日本は利上げを続けていたが、1991年7月に利下げに方向転換、0金利政策は9年後の1999年2月に行った。金利のを段階的に下げ長時間かかったせいもあり、デフレに転じることになる。アメリカではリーマン・コロナショック後3カ月で0金利までデフレを回避した。
バブル崩壊後の景気の低迷は、諸外国にとって反面教師にされていた。
Posted by ブクログ
我が国の失われた30年について、とても平易に解説されている。
処方箋としてはデフレスパイラルを抜けるまで金融緩和と財政支出を続けること。
少子化、労働力現象は表面的に見えるほどの懸念は必要なく、世の中の元気を盛り上げることが必要。
将来の注力領域は農業、漁業などの第1次産業。
とか。
Posted by ブクログ
経済用語は馴染みがないけど、何となく分かった。気がした。
家計簿は得意だけど、経済政策を家計簿と同列で考えてはいけないですね。国家予算は毎年過去最大になるのが当たり前なんだ。へえ。
終章、日本の第一次産業の可能性に希望を感じました。確かに日本の農産物はレベルが高いと思う。オランダやノルウェーの先例があるということなので、何とかして一億総貧乏な未来からは脱却したい。
Posted by ブクログ
わかりやすい各国との比較を元に、財政出動が不十分なことが日本の低成長の原因とのことが説明されている。日本のデフレから各国は学んでいるんですね。
政府純債務の増加率を横軸にしたグラフが何個かありましたが、あれは元の債務の多い日本の数字が小さく出るので、それを根拠に経済政策が不足しているとは言えないのかなと思いました。単純な額での比較ではなく何をすれば良いかまでより踏み込まれているとなお面白かったと思う。
Posted by ブクログ
「低所得・低物価・低金利・低成長」の4低状態を「日本病」というらしい。かつての「イギリス病」を模してのもの。
結局、日本はバブル崩壊以降立ち直れていない。特にリーマンショックに臨んでは、諸外国は「日本のようになってはいけない」と政策を繰り出したのだそうな。日本の無策っぷりが際立ちますわな。またそれを許す国民も、あきらめがいいと言うか、聞き分けが良すぎるよね。