【感想・ネタバレ】『失敗の本質』を語る なぜ戦史に学ぶのかのレビュー

あらすじ

『失敗の本質』は、日本が第2次世界大戦で敗戦を喫した原因を解明し、教訓を引き出した著作で、長く読み継がれている名著です。新型コロナウイルスの感染爆発、環境破壊や自然災害の拡大、世界各地での軍事的な緊張の高まりなど、「安心・安全」とはほど遠い世界の中で、日本政府や企業は国難に十分に対応できているでしょうか。同書が浮き彫りにした日本軍の構造的欠陥は、残念ながら、現代日本の様々な組織の中にも見受けられます。同書は日本軍の敗因分析から様々な教訓を引き出し、勝てる組織になるための方法を提言していますが、なお実行できていない組織が多いのが現実です。今こそ、同書を読み直し、混乱の時代を乗り切る知恵を吸収するときではないでしょうか。
そこで、著者の一人で、完成に至るまでのプロセスを主導した野中郁次郎・一橋大学名誉教授に同書誕生の背景や、その後の戦史に関わる研究の軌跡について語ってもらったのが本書です。
野中氏の研究は「知識創造理論」と戦史に関わる研究の2本柱からなります。本来は親和性が高いはずの経営理論研究と戦史に関わる研究ですが、日本では敗戦の反動から両者を隔てる壁は巨大なものがあり、戦争を研究すること自体がタブーでした。戦史の科学的な分析とはほど遠いのが、『失敗の本質』誕生前夜の日本だったのです。『失敗の本質』は予想以上の長寿作品となり、野中氏の業績の代表作ですが、野中氏自身が戦史に関わる研究について語る機会はありませんでした。しかし、2019年9月に日経新聞に連載された「私の履歴書」では『失敗の本質』について2回にわたって述べ、その誕生の背景などについて読者の反響も大きいものがありました。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

失敗の本質やSECIモデルの構築で世界的に有名な野中郁次郎がこれまでの研究を振り返る一冊。タイトルからは失敗の本質についてより詳細な解説を加えるような内容を記載していたのだが、実際には野中郁次郎がこれまでの人生と研究生活を振り返る一冊だった。

当初の期待とは違ったわけだが、それではつまらなかったかというと決してそんなことはない。彼がどのような問題意識のもとで研究を始めたのかとか、失敗の本質を読むだけではわからない彼の持つ思想的な背景などもよく理解できて、野中郁次郎についてあまり詳しくない人にとっては入門的な一冊になると思う。

ただどうしても新書ということもあり、また彼の研究生活が非常に広いということもあり彼の書籍が本格化する2000年代以降に関してはかなり駆け足になってしまっている。本作で興味を持った一冊があれば手にとって読むという意味においては、野中郁次郎の思想変遷のガイドブックといった位置づけとして手に取るのが正しい期待値だと思う。

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2025年07月21日

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