あらすじ
常世と現世のあわいにある、日本橋の紙問屋《雪魚堂(せつなどう)》。
そこを訪れる客は、白銀の紙雪が舞う不思議な百鬼夜行に誘われるという。
転職活動中の猪瀬成海(いのせなるみ)は、ある日雪魚堂に迷い込み、
黒ずくめの少年・カナと、胡散臭さ満点の店主名代・魚ノ丞(なのすけ)に出会う。
次の勤め先が見つかるまで、その店の手伝いをすることになった成海は、
様々な心の痛みを背負った客人たちとの交流の中で、
彼女自身も忘れていた、ある「真実」へと辿り着くのだが――。
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Posted by ブクログ
魚ノ丞さんの性格が最初とっつきにくかったのだが、慣れてくると寧ろ成海の性格の方が気になるという。
人のために頑張れる子ではあるが、脊髄反射で言葉にして反省することもしばしば。
そんなところが、終盤に彼女自身が忘れていたことへと繋がっていく。
百鬼夜行がおどろおどろしくなく、設定が分かると必要なことであり、救いでもあるというのはユニークだったと思う。
現代人こそこの百鬼夜行は必要だろう。
その分、魚ノ丞さんやカナくんの負担は増えてしまうが。
その百鬼夜行でも救いきれなかったものは、この二人が救ってくれる。
その光景は、背景に重いものがあるだけに、毎度感動的である。
美しいのだ。
ただその美しさを純粋に崇められないのは辛いところではあるが。
(救う側も救われる側も色々抱えているので)
救済の物語ではあるが、ただの美談ではなく、常にどこかほろ苦さを纏う物語。
成海が抱えていたものも、ざまあ展開にまでは至らないので、罰を受けるべき存在に因果応報の展開は訪れない。
まあ作中にもあるとおり、それを「悪」だと断じるのは、思っているこちら(今の場合は読み手の自分)の尺度で都合だ。
決めつけて批判するのは簡単だが、それは、救われる前の成海と同じような状況。
今までのことを含めて受け入れて、自分自身の力で立ち上がる、歩み出す。
その方が難しくはあるが、尊いことなのかもしれない。
そう考えさせられる話だった。