あらすじ
江戸末期に洋行した福沢諭吉、ニューヨークからナポリに向かった有島武郎、ハイカラなフランスをめざして「船旅文学」を打ち立てた島崎藤村。大使館に赴任する家族に同行した女性、新天地に将来をかけた移民たち、あるいは船旅で寿命が延びる感覚を受けたという鶴見和子と俊輔の父・祐輔、船中を和服で通した新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵……。
夢と期待を乗せた客船が洋上を駆け巡った洋行の時代、「海の外に出る」ことは生きることそのものだった。暮らしが船旅と結び付いていた時代の営みを、小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料を示しながら、さらには造船現場や客船を運航した人たちの視点も交えて、いまや笑い話のような逸話、想像を超える苦難の道中の数々を紹介する。
決死の覚悟で乗船した時代から150年後の現在、客船は最新テクノロジーで操舵され、長い日数を退屈させないイベントも用意されていて、まるで高級ホテルで移動するようだ。
著者が長年をかけて収集した珍しい図版140点が、まだ見ぬ海外への往時の旅情をかき立てる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
船旅にもいろいろなドラマがある。
船旅をめぐる世界をかいま見ることができる珍しい本だな。
船旅と言えば、ゆらゆら揺れる。船酔いで苦しい思いをする人もいる。船が揺れることが後に役立った人がいる。その名は内藤多仲(たちゅう)だ。
内藤は、東京タワーなどの多くの塔を設計した「塔博士」と呼ばれた人物だ。
内藤は耐震建築の研究を行っていた。1917年に1年間のアメリカ留学をしたが、成果を得ることができなかった。
しかし、帰りの船旅で旅行かばんの中の仕切り板があるおかげで、荷崩れせず、中の荷物は無事だった。そこから耐震壁理論を思いついて設計に応用した。
世の中、何が役に立つか分からないから面白い。
長い船旅の楽しみは食事だった。
食通の外国人にも愛されたのは「スキヤキ・パーティ」だった。
日本郵船はいつ頃かはっきりしないが、外国人も楽しめる「スキヤキ・パーティ」を始めていた。
船旅1つとってもいろいろなことがあり、興味深い。