【感想・ネタバレ】雌犬のレビュー

あらすじ

これはわたしの犬《むすめ》。
もし何かしたら、殺してやる。

この世から忘れ去られた海辺の寒村。子どもをあきらめたひとりの女が、もらい受けた一匹の雌犬を娘の代わりに溺愛することから、奇妙で濃密な愛憎劇《トロピカル・ゴシック》が幕を開ける……
人間と自然の愛と暴力を無駄のない文体で容赦なく描き切り、世界15か国以上で翻訳され物議をかもしたスペイン語圏屈指の実力派作家による問題作が、ついに邦訳!!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

動物好きな人はご用心かも。
重たすぎる愛は憎しみに変わるとき、暴力を伴う。

ダマリスはずっと子どもが欲しかったから夫のロヘリオと努力したけどとうとう子どもは出来なかった。
ロヘリオも若い頃は協力的で薬草を一緒に摘んで薬を作ったり、怪しい民間療法をうけたりしていたけれど今はもうそんなことは遠い話になってしまっている。
もう、40歳になってしまいロヘリオとは生活は共にしているが愛情はあるのかないのかよくわからない。
家族になりきれなかったように、きっとふたりとも考えていそうと思った。
海岸で死んでいたエロディアさんの犬の子を衝動的にもらい受ける。雌犬だ。
雌犬に女の子が産まれたらつけようと思っていた名前を与える。
チルリ、と。
その事を無神経な従姉妹にからかわれたりする。
そんな風にしてダマリスには憎しみが少しずつ蓄積していっていたのではないかと思った。
誰もが当たり前に子どもを産めるわけじゃないのに無神経な従姉妹やまわりのことばにダマリスがどれだけ傷ついたか分かる。
でもダマリスは何も言わない。
チルリと名付けた雌の子犬に親の愛情を注ぎ続けただけだ。
犬は人ではないのに。
手痛い裏切りにあうのに。
雌犬はロヘリオの犬たちとともに家出をし、ジャングルへ消える。
必死で探し諦めたときに帰ってくる。
しかも妊娠して。
ダマリスは裏切られたと思ってしまった。
憎しみの塊が雌犬に向けられてからが怒涛の展開になる。
犬は思うようにはならないし、人生もたぶん同じだから、どこかであきらめてしまう。
この世から忘れ去られた海辺の寒村では失くしたものから立ち直ることが難しい。
だから、ダマリスはどこへも通じない世界の終わりの、ジャングルに足を踏み入れるしかないのかもしれない。
このあと、ダマリスがどうなったのか、めちゃくちゃ聞きに行きたい気持ち。

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2022年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特段心揺さぶられることなく読み進めていたが、最後ガツンと頭を殴られたかのような衝撃があった。

読み終わってじわじわくる雌の怖さ。自然と人間の生々しい部分が詰まった作品だった。

可愛がっていた犬を邪険に扱うようになるなんてひどい!と思いつつ、相手が思い通りに動いてくれない時に起きる苛立ちは私の中にも存在するし、子供を産めない自分が、望まずとも子供を身籠る犬を憎らしく思うというのも、想像のつく感情だと思った。

生き物を殺める行為は何時も非難の対象だけれど、それは全て悪なのか、その背景やその後の影響にも問いを投げかけられていたように思った。(それとも単に自己を正当化しようとする心理がダマリスに働いていただけか?)雌犬が死ななかったら、ある種自分と同じような寂しい思いをする子供たちが増える、自分になんらかの被害が及ぶかもしれない。

子供は親を選べない。親もまた子供を選べない。
彼女が自分の子供を産んでいたら、どうなっていたのだろう。

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2023年05月28日

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