【感想・ネタバレ】元素はどうしてできたのか 誕生・合成から「魔法数」までのレビュー

あらすじ

まずビッグバンにより素粒子が生まれ、それらが結合して陽子(=水素の原子核)や中性子となった。陽子と中性子が結合して重陽子となり、さらに重陽子と陽子が結合することでヘリウムの原子核が生まれた。やがて宇宙の温度が下がって原子核と電子が結合して原子が誕生し、恒星の内部や超新星爆発によって92番までの元素が作られた。93番以降の元素は天然では作られず、世界各国で熾烈な合成競争が繰り広げられてきた……。文系も理系も胸躍る、微小な元素の壮大なドラマを、理化学研究所の主任研究員と東京大学教授を兼ねる著者がわかりやすく解説。理化学研究所は世界最高の加速器を擁し、113番目の元素の合成に成功、原子核を特に安定にする「魔法数」を新たに発見するなど画期的な成果を挙げてきた。本書ではそれらの成果も取り上げ、核物理学の到達地点と将来の展望を語る。同じ元素における複数の原子を掲載した「核図表」など魅力的なトピックスが満載!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

元素生成に関する知識の整理とより詳細な知識の獲得。核図表の見方が分かって面白い。最後は端折った感じ。

本書ではJWPへの提出までの経緯が書かれているが、ようやく昨年(2015年)末に113番元素の命名権が得られて、おめでたい限りだ。

*1章
・元素は118種類見つかっている。天然に存在するのは92番目のウランまで。
*2章
・元素ができるのは1.ビッグバン(水素、ヘリウム、リチウム元素のみ)。2.恒星内での元素合成(核融合。鉄まで)。3.超新星爆発のラピッドプロセス
・クォークが3つ集まって陽子や中性子になると50倍くらい重くなる。
・陽子と中性子の重さは中性子のほうが0.1%重い。中性子の寿命は15分、陽子は長い(10^34より長い。宇宙年齢は10^10)。
・陽子と中性子が結合して重陽子になると、単独の時よりも軽くなってエネルギー的に安定する。しかし、陽子と陽子、中性子と中性子の組み合わせは束縛エネルギーが小さいため、状態のエネルギーが小さくならない。
・強い相互作用の性質を決めているのはテンソル力という成分で、粒子のスピンと深く関わっている。
・最初の恒星は水素76%、ヘリウム24%で核融合が始まる。中心部分では核融合する原子核が次々に変わり鉄(原子番号26)まで進むが、鉄はこの宇宙の元素で一番安定しているので、核融合が止まる。
・超新星爆発によってニュートリノが発生すると言うことは、爆縮すなわち陽子から中性子がたくさん発生したと言うこと。
・1秒ほどのラピッドプロセスでは、中性子が過剰な原子がつくられ、新しい元素が次々につくられた。
・巨大な恒星の中では100~1億年というペースで、スロー・プロセスが進み、鉄からビスマスまでの元素の約半分が生成される。
*3章
・現在知られている原子核は約3000。1年間で30個くらい増えている。
・現状は測定可能な10億分の1秒という時間が、原子核として存在するかどうかの時間的な境目。
・電子に加えて、陽子、中性子にも独立に魔法数が存在する。中性子過剰な領域にも特別な魔法数が存在する。
*4章 実験室で元素をつくるとは、ほんの短時間のこと、その崩壊過程を検出するのに困難があること。
*5章、6章 日本の加速器研究は、戦争をはさんで、現在はRI(放射性原子核)ビームにおいて特別な位置が与えられている。

0
2016年02月24日

Posted by ブクログ

恒星内元素合成やCNOサイクルなどの話、ビッグバンからできる元素がリチウムまでに限定される理由、新元素の合成と認定とは具体的に何なのかなど、絶妙にあいまいだった知識領域をうまいこと補完できた。かなり平易に書かれているので事前知識は少なめでも大丈夫なのがよい。とはいえ、アウトプットをしていないので数ヶ月でそっくり内容を忘れてしまったが。

0
2016年05月12日

「学術・語学」ランキング