あらすじ
遊び人の茂として、ふらふらしていた茂蔵も、巳之助の弟分におさまり、小間物屋・大黒屋で真面目に働いている。その茂蔵が花見の後、酔った勢いで祠の戸を開けて、紐で固く結ばれていた箱を開けてしまう。箱の中にあったのは女の長い髪。するすると伸びて、茂蔵の足に触れたとたん、大音響が響き渡った。逃げるように立ち去った茂蔵は、翌朝、帳場の観音像が真っ二つに割れているのを見つける。観音像が身代わりになってくれたのか。幽霊が見える太一郎によると、「封じ込めている」ものを茂蔵が開けてしまったらしい。祠の場所には昔、三十年前に焼け落ちた履物問屋備前屋の寮があった。今の主の徳五郎によると、先代はかなり悪辣で、借金漬けにして潰した下田屋から寮を強奪したらしい。下田屋の亭主は行方知れず、一人娘も病で失ったお此という不幸なおかみさんが失意の末に自害して、長い髪を残したというのだ。茂蔵が開けてしまったのは、備前屋が封印したお此の髪だった。この世に怨みを残すお此を太一郎や茂蔵は救えるのか? 人気シリーズ第九弾!
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Posted by ブクログ
本作では新しい登場人物はなく,皆塵堂に居候することになるのは巳之助の弟分,茂蔵である。
「朽ち祠」
茂蔵が以前の遊び仲間との花見の宴の帰り道,ほろ酔い気分で歩いていたところ奇妙な祠を見つけて,つい扉を開けて,御神体が入っていると思われる箱を開けてしまう。するとそこから女の髪の毛らしきものが飛び出して茂蔵を襲った。「パキッ」という音とともに攻撃が止むと,髪の毛は自ら箱に戻ったので,茂蔵は蓋をしてしっかり紐で縛って祠に戻した。
しかし髪が箱から出たときの不穏な気配を遠くで太一郎が察知していた。
「髪絡み」
翌日再び祠を訪れると,箱が消えてしまっていた。皆塵堂チームは箱探しを始める。茂蔵はことの発端を作った責任から箱探しに加わることになり,その間皆塵堂に居候することになった。
太一郎が気配を感じた店に行ってみると,店主の八べえが梯子から落ちたところだった。その時足に黒いものが絡みついているという証言が出ていた。八兵衛はその後死亡し,葬儀が終わってから訪ねて箱のことを尋ねると捨ててしまったという。捨てられたゴミはすでにそこにはなかった。
「死神憑き」
太一郎が気配を感じた戸倉屋に古道具の買い取りを装い訪ねてみると逆に相談を持ちかけられてしまう。跡取り息子が死神にとりつかれたようで,自殺を図ったり死にたがっているという。息子の件を解決するのと引き換えに戸倉屋からなんでも譲ってもらえるということになる。皆塵堂チームはそれぞれ息子・喜三郎に生きる気力が湧きそうなものを持ち寄ることにする。巳之助はうまい魚,峰吉は高さの違う枕をたくさん,茂蔵は大量の枕絵を持ち寄った。そして太一郎は連助の件で宮越が折った刀から作ったという小刀を渡す。それで自殺を図ったらどうするんだという周囲の心配も気にする様子はない。
「髪つき首」
茂蔵はひとりではこの行方を追ってとある道具屋を訪れる。すると,箱は確かにあったが売れてしまったという。買った男の話を聞いて追いかける。次のところでもすでに転売されており,「八助」という男が買っていったらしい。その名前に危ういものを感じるが,緊急性があると思い一人で八助の家に向かうと...。
「花の祠」
太一郎は箱の最後のターゲットと思われる店を訪ねる。