【感想・ネタバレ】歩道橋の魔術師のレビュー

あらすじ

1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。現代台湾を代表する作家の連作短篇。単行本未収録短篇を併録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

役者あとがきの通り、ノスタルジー的楽しみはこの本の大きな魅力だった。けれどこの時代を行きたことがない自分にとっては新しい世界でもあり、切ない、辛い物語の中であってもどこかワクワクした気持ちで読み進めることができた。
新公園へ遊びにいく過去の自分は双子の少女に恋をしていた。どちらのことも確かに好きだったのだろう。思春期を迎える前から2人と過ごした彼にとって2人を分けて考えることはできなかったのだろう。あまり褒められたことではないけれど共感できる。
もっと台北市内の様子を観察しておけばよかった。あの博物館ももっとじっくり見てもよかった。もう一度台湾に行くことがあったらじっくり見て回ろう。
子供の視点からみた世界を上手に描写しているように感じた。大人になった語り手の視点も介入するけれど、それは味付け程度で、やはり子供の頃の観察が基本になっている純粋でまっすぐな文章だと感じた。井上靖のしろばんばもこんな感じだった。
この人の本はとてもいい。続編?である眠りの航路も読んでみようと思う。

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2025年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『光は流れる水のように』が綺麗にまとまっていて好き。
それから訳者あとがきの「今、中年にさしかかった商場の子供たちは魔術師のことを思い出し、そしてあのとき、自分の人生がすでに決まっていたのだと気づくのだ。」子どもの頃に住んでいた集合住宅のことを思い出した。一緒に遊んだ子、その親、出稼ぎに来ていた外国人一家、みんな何してるかな

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2023年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1992年まで台北に実在した繁華街「中華商場」を舞台にした連作短編10作と、文庫本で追加された短編1作が入っている。それぞれの物語は、商場で育った少年が、大人になってから、かつての友人に歩道橋にいた魔術師について聞き取った話を基にしたという体で語られる。

中華商場の歩道橋にいた魔術師は、商場の子どもたち向けにマジックの道具を売っていた。売っている道具と魔術師の見せるマジックは、どれも、タネも仕掛けもあるものであったが、時折、彼は、本物の魔術らしき奇跡的な現象を起こす。

商場の子どもたちの生い立ちは、今の私たちの感覚からすると、けっして明るいものではなく、貧しく、身近な人が死に、暴力に溢れている。魔術師の見せるマジックは、子どもたちにとって、子ども同士の遊びとは違った、少ない娯楽の一つだったが、時折見せる本物の魔術は、ある子にとっては、とても魅力的なもので、ある子にとっては、不安に陥れるものだったりする。

魔術によって踊り出す小人、複製された偽物の鍵、蘇るシロブンチョウ、煙になるネオンの光は、少年少女を魅了し、魔術に憧れを抱かせた。女子トイレのエレベーター、消える兄弟は、少年を孤独に恐怖させた。絵から生まれた金魚を亡くした思い出は、何の感慨もないように話されて、内緒のラブレターを魔術師に盗られた思い出は、冗談ぽく話される。魔術師の記憶のない人もいる。

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2023年01月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんか難しいなと思ったような気がして、読後、パラパラ捲ってみたが、読み終えた今となっては、そんなことはなかったなと思う。

魔術師のマジックはマジックかもしれないけれど、やはり、全て本物、それは記憶についてもそうだよ…と語りかけられた。

商場に住んでいた訳でもないし、実際見たこともないけれど、自分がそこに思い出があるように感じさせられ、何か納得させられてしまった。

ノスタルジーを感じるというより、自分の中の記憶、それはもしかしたら、勝手に脚色されているものだけれど、きっと宝物だと感じさせられた。

読後になんとなく、夢見心地になることに気分が良くなる良い体験をした。

『光は流れる水のように』はきっと何度も読み返す。

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2022年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

巨大迷路のような中華市場、屋上には鮮やかなネオン塔が光り、幾つもの棟を結ぶ歩道橋には魔術師が立っている…。昭和レトロならぬ台湾レトロを感じさせてくれる短編集。短編とは言え同時期に中華市場に住む子ども達の話という共通点があり、同じ登場人物が出てきたりでまるで一冊の中編小説を読んでいるよう。魔術師が気まぐれに見せる魔法は子ども達の心に残り続け、成長した後も時に生きる希望となり、時に死の原因となる。
台湾本国でドラマ化してるんですね、これ。セットで中華市場を完全再現したらしく、すごく観たいんですがローカライズもないし日本で観るのは無理そうで残念。予告編だけでも本書とあわせて観ると雰囲気が味わえていいかと思う。

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2024年01月06日

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