あらすじ
「迎えに来ました」――人を天国へと導く幻獣「しゃもぬま」が祐のもとに突然やってきた。特産品の夏みかんと並び地元の島で有名なその生き物は、死後必ず天国へ行くことから、神聖視されている。そして、自らの死期が近づくと、島の人を死へ誘うという。逃れる方法は一つ、しゃもぬまを誰かに譲ること。微妙な距離感の幼馴染姉妹や、父親を教えない母へのわだかまりを抱え、生と死の狭間で揺れる彼女が導き出した答えとは。心に傷を持つ女性の葛藤と再生を描く幻想奇譚。第32回小説すばる新人賞受賞作。
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Posted by ブクログ
死期を悟ったとき、ごく稀に、島に住んでいる誰かを天国に一緒に連れて行ってくれることがあるという不思議な生き物と共生する島。そんなしゃもぬまが何故か島を出て暮らしている主人公のところを訪れることから始まる物語。
この生き物は死期が迫った者のところのを訪れ天国に導く役目を担っているのかと誤解をしたが、その訪問を受けた者は死ななければならない、あるいは身近な者を身代わりにしなければならないという極めて不穏な存在であった。
と言ってもホラー作品があまり得意な方ではない私でも怖がらずに読み進めることができる不思議な雰囲気を纏った物語、いや、生き物だったのだが。
Posted by ブクログ
幻視的な小説でした。今までそういった小説を読んだことがなかったので、困惑しながら読み進めていました。
しゃもぬまを絶対視する閉塞感のある島独特の風習の様なものがある文化圏で育っていないので、『佑は全部、放り出しちゃえば良いのに』と気楽に考えてました。ラスト、佑の複雑な生い立ち含め、区切りが付いた様なので凄くホッとしました。