【感想・ネタバレ】新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義のレビュー

あらすじ

これから2030年にかけて、世界・経済・ビジネスなどを考える上で重要になるであろう考え方の一つとして、本書で取り上げるのが「ラグジュアリー」です。

一般的に「ラグジュアリー」といえば、いわゆる高級ブランド企業のあり方などがイメージされるかもしれません。
実際、それを研究するために、これまでヨーロッパを中心として、大学やビジネススクールでも「ラグジュアリーマネジメント」を学ぶコースが設置されてきました。

それらのうちの先進的なコースや、スタートアップなどを含めた感度の高い企業がいま注目するのは、旧来のラグジュアリーとは一線を画した考え方です。

これまでのモノづくり・サービスづくりや顧客体験は、ウェブ技術をはじめとするコンピュータサイエンス、あるいは機械・材料・加工技術のような「テクノロジー」が引っ張ってきました。
ただ、先進国を中心に技術や市場が成熟をみせる中で、人々の心を動かすような「本当にほしいもの」は、テクノロジーが基礎にありつつも、歴史や文学、地理、哲学、倫理など「人文的な知識」がより主導しながらつくっていく時代になるのです。

その実践例の一つとして挙げられるのは、イタリアのウンブリア州にある小さな村・ソロメオを本拠に地域の歴史と文化に根ざしたモノづくりを行い、「世界最高の品質」といわれ尊敬されるブルネロ・クチネリです。

「文化の創造が結果的に利益の源泉となっていく」という新しい考え方と、クチネリをはじめとした実践の動きを、「旧来のラグジュアリーとの対比」「意味の創造」「教育」「文化盗用」「サステナビリティ」など多様な切り口から一冊にまとめるのが本書。
10の視点で「新しい世界」を読み解きます。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

サステナブル関連の仕事を取り扱っているけど、そもそもサステナブルってどういう状態か全く実感が持てなくて、藁をすがる思いで読んだ本。ラグジュアリーの文脈において、創造性を持って次に社会をつなげる考え方が分かる本。
そして、サステナブルを実感するためには、実際にサステナブルの観点で有名な地域に行くべきだな、
とも思った一冊です

以下メモ
・ラグジュアリー≠高級品
・ラグジュアリーは地域や文化によって意味が変わる
・エリザベス1世がいたときのラグジュアリーの意味合いは経済活動の余剰と社会秩序の維持。そこから、個々人が主張する意見の蓑になっていった
・今まではラグジュアリーマネジメントを学んでいる人たちは戦略コンサルタントやラグジュアリー企業のマネージャーだった。最近は地域に根ざした、サステナブルなブランドを作りたい人が学びに来ている
・サステナブルをインクルーシブしないラグジュアリーはありえない
・サステナブルを透明化するために職人や生産工場を明らかにする企業が増えていた
・アート、職人、創造性に回帰し始めている
・スタバは色(グリーン)で商標登録してるらしい(だからZeus coffeeは許されたのか)
・パッと見、人を救うことに直結しない、社会のためにならないことでも、周辺の事業に影響を与えることもある
・人文学(文学、哲学、歴史など)を学ぶときに大事なのはプロセス。読解や議論をオープンにするプロセスによって、無意識に囚われていた常識から解放されていくことができる。

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2024年09月21日

Posted by ブクログ

・ラグジュアリーの現在地が非常にわかりやすくまとまっている。2人の著者がアカデミックとビジネスの両面から紐解いていく展開のされ方で、多面的に捉えることができる良本。今年呼んだ中でかなり上位の読後感ある。
・宇宙産業まで話に含まれたのはかなり面白かった。たしかにあれこそ金持ちの道楽、みたいに移りがちだが、ラグジュアリーの定義に照らし合わせるとピタリとハマる。なるほど。(「誘惑的であること」「豊かさをあらわすものであること」「光り輝く(輝かせる)ものであること」それがラグジュアリー。)
・現代においては「ラグジュアリーブランドはより社会的責任を果たすべき」と考えられるトレンドになってきた。旧来型の(特に日本人においては古典的だがイメージに合うLVMH、ヴィトンのような「ブランドモノ」消費は、もはや現代のラグジュアリーのメインストリームではない。
・ITや技術の進化がいつまでも続きプロダクトの改良は進んだとしても、それを評価するのは最後は人間なので、人間側のレベルが上がる(人間性、社会、)必要がある。それで初めて高品質なコンテクストのもとにラグジュアリーがラグジュアリーたる状態になる。Cf.宇宙ビジネスはラグジュアリーになれるかどうか

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2022年11月20日

Posted by ブクログ

ラグジュアリー…魅惑的な響き…!
shiroやマメ・クロゴウチがローカリティを大切にしていることを初めて知った。確かにshiroはハンド美容液にガゴメ昆布の成分を取り入れていて、珍しいなと思っていたのだが、それが北海道砂川市の活性化につながっていたとは!マメ・クロゴウチの「良いものを作るには、時間と手間がかかる」ということが、mina perhonen と同じだ!と嬉しくなった。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

ラグジュアリーが変わってきたと。ラグジュアリーの歴史を紐解き、これまでの、今の、彼らのデザイン、アクティビティを解説しながら、これからのラグジュアリーに言及。クチネリに代表される、今のラグジュアリー、日本のラグジュアリーブランドも紹介している。ハイブランドのエキシビジョンに行ったりすると、その歴史、手仕事に触れることができ、高い理由がわかるが、たしかにサスティナビリティにどのようにコミットしているかなども大事な要素だと思う。今のラグジュアリーの勉強におススメの一冊。

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2024年04月16日

Posted by ブクログ

読みやすいし、内容も興味深く読みましたが、ラグジュアリーといってもいろんな側面があってちょっと混乱しました。

私はブランドには興味がないし、ラグジュアリーなものやコトに縁遠い生活をしているので、内容は面白いけど「ふーん」という『右から左へ抜けてく』感覚でした。
そもそも日本は大衆品の品質が良いし安いので、ラグジュアリーに縁遠い人が多いと思います。無印とかも地方の工芸を発信しているしユニクロのサスティナビリティへの取り組みも素晴らしい。ユニクロでいいじゃない。日本であえてラグジュアリーを選ぶ理由ってそこまで多くないのでは。というモヤモヤがあります。

本書では文化盗用の章がいちばん興味深く「自分ごと」にできたかな。例えば海外で着物がブランドとして流行らないのは、着付けや季節のルールまで海外に広めるのは難しいから?だから結局観賞用や、素材の一部を洋服に使用するくらいに留まるのかなと思ったり。
海外でヘンテコな着物の着方をしている画像をXで見かけたら、日本の着物警察以外の人でも怒り狂いそうだよね。

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2024年03月15日

Posted by ブクログ

ラグジュアリーという言葉、ちょうどホテルについて調べる時にいわゆる外資系ホテルブランドランクでもラグジュアリーという言葉もあり、タイトルだけで買ってしまった本。新がつくように、旧来の贅沢やハイブランド、優雅、上品といったイメージのラグジュアリーでなく、ダイバーシティ、サスティナブル、クラフトマンシップといった人々の心に寄り添うような理想的な概念として新たに位置づけられていると感じました。新たな価値、多様な価値、付加価値をつけた広義の意味で、新たにラグジュアリーをの考え方を提示している。
ラグジュアリーのイメージはファッションに繫がるところがあるものの、10の講義といっているので、歴史や海外、日本、学問として、ビジネスとして、文化やさらに広がりのあるような著書の思い等も書かれておりり、この分野について、自分の中で考えを深める点では、素敵な本に出会えたなと思った。

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2023年08月18日

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