あらすじ
生きづらさ、働きにくさ、地球の危機……
世界を刷新する新しい社会の礎。
マイケル・サンデルほか絶賛!
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学長を務める、
今、もっとも影響力のある女性経済学者が、「社会契約」という視点で世界を読み解く!
人間は意識するしないにもかかわらず、社会契約のもとに毎日を生きている。
パートナーや家族、隣人、雇い主、同僚など、あらゆる関係の根底には、
お互いにサポートを必要とし、サポートを提供するという、社会契約がある。
社会契約は、過去の世代と未来の世代をつなげる義務や責任の入り組んだウェブなのだ。
壮年期に働いて社会に貢献することを期待され、その対価として、幼年期には教育を施され、
老年期には年金や医療を与えられてきたのも、そういった社会契約のひとつである。
しかし、グローバリゼーションとテクノロジーの進展、人口構成の変化によって、
そのような社会契約のあり方が壊れてきている。
20世期の社会契約のあり方のままだと、若年の負担は増し、子育ての労苦は増え、
女性は不幸なままで、老人は学ぶ機会を与えられることがない。
ポピュリズムの台頭やグローバル化への反動、女性の働きにくさの問題や、
若者が地球環境のために声を上げるのも、すべて20世紀型の社会契約が機能不全を起こしているからなのだ。
本書は、これらの問題は世界各国共通のものであり、今こそ21世期にふさわしい、
公平で持続可能な社会を実現する新しい社会契約を構築しなければならないと主張するものである。
より良い社会を築くための枠組みを提示する、全世代必読の希望の書!
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Posted by ブクログ
著者(エジプト生まれ、米国育ち、イギリスをベースに世界銀行、IMF、イングランド銀行、英政府事務次官、LSE学長等を歴任した女性)は社会契約に関する見解について価値中立ではないと最初から宣言している。そのうえで現在、技術革新とグローバル化、女性の役割の変化、高齢化、地球環境問題により新しい社会契約が求められているとしている。その原則は、①最低限必要なものを万人が保証されること→(その結果)すべての人に安心を、②万人がそれぞれ最大限の貢献をすること→(そのため)能力に最大限の投資を、③一定のリスクに対する最低限の保護の提供を社会でも分担すること→(そのためには)効率的で公平なリスクの共有を。
・育児 生後1年以降の公的インフラ、父母の育休、柔軟な労働市場等
・教育 とりわけ認知能力と学習能力の向上に大きな効果がある幼児教育(乳幼児ケアを含む)に対する支援、生涯学習・リスキリングへの支援
・医療 国民皆保険(民間保険と低所得者への公的保険を含む)対象をどうするか→質調整生存年(例えば1年間健康余命を伸ばすのに一人当たり国民所得の2、3倍までの医療費)、公衆衛生、予防医療(タバコ・酒・甘未飲料課税等を含む)
・労働 先進国の労働規制緩和とグローバル化は二層の労働市場とフレキシブルな就労形態をもたらした。AIにより仕事の分野が変化する。 失業手当、最低賃金、扶助、ベーシックインカムはコストが高く他の手段の組み合わせの方が一般的には効果的。フレキシブルな就労形態にもセーフティネット、仕事の変化に対応した再訓練
・高齢者 国民皆年金、定年と平均余命との連動、貯蓄の促進(集団的確定拠出年金等)、定年後のフレキシブルな就労、介護の有償化・支援(税金、包括的保険、扶助)
・世代間(公的債務、環境) 高齢者投票による偏向
以上のためには
生産性の向上、財政政策の見直し(富裕税、相続税、配当課税、炭素税、租税回避の排除等)、幅広いコンセンサスを必要とする民主政
リベラル的なエコノミストによる政策提言だが、社会的な分裂、ポピュリズムの台頭の中で実現の手段は。