【感想・ネタバレ】ウイルスの進化史を考える~「巨大ウイルス」研究者がエヴィデンスを基に妄想ばなしを語ってみた~のレビュー

あらすじ

このご時世,ウイルスの本がちょっと刊行されてきたものの,「ウイルスの進化」をメインに扱った本はない。
その理由はおそらく簡単で,ウイルスの進化を研究する研究者がそれほど多くないことに加え,その進化のあらましの正確なところを,じつは誰も知らないからである。
まあ,誰も知らないというのはじつは言い過ぎで,研究をしている人は,さまざまなエヴィデンス(そのほとんどは分子系統学である)をもとにある程度の推測を行い,論文として発表しているわけだけれど,あくまでもそれは推測であって,真実をそのまま表しているわけではない(そんなことを言ったら,すべての生物学の分野がそうなのだが)。
だから,それをあたかも分かったかのような顔をして本を書くなどという危険な行為を,誰もしたがらないのである。

それをあえて行おうというのが,本書である。

「インフルエンザウイルスはどのようにインフルエンザウイルスたり得たのか?」
「コロナウイルスはどうやってRNAウイルスのなかから生じてきたのか?」

ウイルスの進化史を広い視点で見ると,そこにはどんな世界が広がっているのだろう?

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Posted by ブクログ

武村先生はリン・マーグリス等と並ぶ私の生物学の「推し」の一人で、基本的に著書を見つけたらなるべく買って読むことにしている。
本作はその著書群のなかでも先生のウィルス研究の根幹となるような考えが表現されたものだと受けとめている。
その語り口は科学的であることから逸脱しないようにしながら、まだ確定的ではない生物やウィルスの起源について伸び伸びとした筆致で描かれており、専門性を保ちつつとてもおもしろい。
先生の著書のおかげで私の「生物」というものに対する見方がかなり柔軟になったと思う。特に本作はその思いが強い。

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2024年10月13日

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