あらすじ
海を見下ろす住宅地『うつくしが丘』に建つ、築 21 年の三階建て一軒家を購入した美保理と譲。一階を念願の美容室に改装したその家で、夫婦の新しい日々が始まるはずだった。だが開店二日前、偶然通りがかった住民から「ここが『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」と言われてしまい……。わたしが不幸かどうかを決めるのは、家でも他人でもない。わたしたち、この家で暮らして本当によかった──。「不幸の家」で自らのしあわせについて考えることになった五つの家族の物語。本屋大賞受賞作家による、心温まる傑作小説。/【目次】第一章 おわりの家――美容室開業に選んだ家を「不幸の家」と言われた女性。/第二章 ままごとの家――不仲の夫、家でした娘、反抗的な息子、迷える妻。/第三章 さなぎの家――男に騙された女性と、幼い娘を抱えたシングルマザー。/第四章 夢喰いの家――不妊治療がうまくいかず、離婚届を書いた年の差夫婦。/第五章 しあわせの家――恋人が置いていった子供と、かつて父に捨てられた私。/エピローグ/解説=瀧井朝世
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Posted by ブクログ
「ここが『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」体格の良い40代の女性が話しかけてきた。
コンビニの袋の中には女性週刊誌とコーヒー牛乳、ビッグサイズのポテトチップス。「最後の末次(すえつぐ)さんなんて、一家離散よ!一家離散!」口角を上げて、面白そうに悪意を放つ。
週刊誌のゴシップ記事の見出しによくあるような薄っぺらな言葉しか口から出ない人もいる。
ちなみに、子供が次々に独り立ちして、3階建ての家は夫婦2人で住むには広すぎるから手頃な家に住み替えた、ということを「一家離散」と普通は言わない。
しかし、1階を美容院に改装して、明日からオープンの予定だった美保理(みほり)は、心無いその言葉を気にしてしまう。
家の歴史、住んだ人の歴史を、だんだんと遡っていく構成になっている。
それはまあ、みんな色々あったけれど、みんな乗り越えてきた。
「不幸」というより「苦労」でしょうか。
クズな男が多くて、女はみんな、こんな男たちのために体を張ったり、金を工面してやったりしているのかと、暗澹たる気持ちにもなった。
女、がんばれ、クズ男は切り捨てよ!!
時と共に建物は古びてはいくけれど、住む人に育てられて、だんだんと良き家になってきたように思える。
出て行った人たちは、幸せになって卒業して行ったのだと思いたい。
隣の荒木家で、ずっと見守っていてくれた信子さんは、ありがたい存在でした。
お役目が終わった?ということでいいのでしょうか。
【第一章 おわりの家】
美保理(みほり)は夫の譲(ゆづる)と二人で、築21年の中古住宅を買い、3階建ての1階部分を店舗に改装して『髪工房 つむぐ』をオープンさせることになった。だが喜びに水を差すような話をされて、家の中の汚れや、裏庭の枇杷の木など何もかもが気になって、心が重くなる。
【第二章 ままごとの家】
(美保理の前に住んでいた、「一家離散の末次さん」)
・末次多賀子(すえつぐ たかこ)43歳。社宅を出て家を買ったため、多額のローンの返済の足しに清掃会社でパートをしている。
夫の義明は、なんでも自分の思い通りに運びたがり、子供らとも対立した。
【第三章 さなぎの家】
・高原叶枝(たかはら かなえ)
・今里紫(いまざと ゆかり)
高校時代の友人だった叶枝と紫は、30手前になって、のっぴきならない理由で郷里に戻り、高校の演劇部の先輩だった蝶子(ちょうこ)の持ち家で蝶子の留守の間の1年間、同居生活をする事になった。高校を出てからは年賀状の付き合いしかしておらず、お互いの詳しい事情は知らなかった。
【第四章 夢喰いの家】
(叶枝と紫に一年間家を貸してくれた、蝶子先輩の事情)
・山郷忠清(やまざと ただきよ)は、蝶子の10歳ほど年上の夫。子供が欲しいが男性不妊症と診断される。
【第五章 しあわせの家】
・真尋(まひろ)は、居酒屋で声をかけられた須崎健斗(すざき けんと)と、その息子・惣一(そういち)と暮らし始めた。
小一のとき真尋を置いて出て行った父・樋川大祐(ひかわ だいすけ)をいまだに許せずにいる。
【エピローグ】
『髪工房 つむぐ』オープンから3年。一人の男が訪ねてくる。