【感想・ネタバレ】431秒後の殺人のレビュー

あらすじ

写真を撮る楽しみを教えてくれた、松原京介の不可解な死。離婚話で揉めていた彼の妻は、関与が疑われたものの、死亡時刻にはタクシーに乗っていた。どこをどう見ても、不運な事故としか考えられない状況だったが──恩人の死をその妻の仕業と確信した駆け出しカメラマンの安見直行は、祖母の助言によって六角法衣店を訪れる。店の主は代々京の辻や橋に立ち、道のさざめきから神託を受け、失せ物を見つけ出すことができるというのだ。直行は恩人の死亡事故を他殺と証明する証拠を探して欲しいと依頼するが、若くて無愛想な店主・六角聡明からは、けんもほろろに断られてしまう。だが、直行の撮った一枚の写真がきっかけで、六角は事件の証拠探しに協力を約束する。現代のガジェットによって構成された不可能犯罪を、緻密な論証で見事に解き明かす表題作ほか全五編を収録。第十六回ミステリーズ!新人賞受賞者による出色のデビュー連作集。/【目次】第一話 431秒後の殺人●これは計算尽くで偶然の可能性を限りなく必然に近くなるまで高めた――殺人事件だよ。/第二話 睨み目の穴蔵の殺人●最近、お客さんから「襖の武将の目が動いた、絵の中から睨まれた」なんて言われるんです。/第三話 眠れる映画館の殺人●幽霊でもない限り、無理やん? だって誰にも首を絞めたりする時間なんかなかったやんか。/第四話 照明されない白刃の殺人●オレ達がそいつの後を追って角を曲がるまでに、次の瞬間にはもう通りから姿が消えていたんだ。/第五話 立ち消える死者の殺人●この部屋に入院した人はな、夜中に攫われて二度と戻ってこられへんねんて。/著者あとがき

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

老舗の袈裟店主・六角が鮮やかに事件を解決するハウダニットに特にこだわった5つの事件。1話目で事件を持ち込んだカメラマン・安見が2話目以降でパディとなりライトな感覚で読めるが、トリックは濃厚で読み応えあり。さらに種明かしの後には、店と共に受け継がれる「辻占』がジワリと効果を高める二重構成。最終話の六角の14年前の事件はストーリー的にも良かった。思っていた以上に面白かった!続編希望。

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2023年03月08日

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新米カメラマン『安見直行』、辻占家系の法衣店主『六角聡明』コンビが殺人事件のトリックを解くミステリーとオカルトの融合連作短編集

ふたりを紐付けたのは安見が撮った一枚の写真
そこに写っていたのは…
京都の一年を背景に、六角のゆったりとした京ことばで真相が綴られる。

魅力的なキャラクターの登場に是非シリーズ化をお願いしたい作品です。

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2022年10月16日

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カメラマンの安見直行は、幼いころから慕った恩人・松原京介の不可解な死亡事故を他殺と証明するため、祖母の助言により京都の失せ物を見つけ出すことができる六角法衣店の店主・六角聡明を訪ねる…。


探偵役のクールで無愛想な六角と単純でお人好しのワトソン役・直行とを主人公にした京都が舞台の連作ミステリー。
最初は、六角が冷たすぎて『うわぁ、苦手なタイプの探偵かな』と最後まで読めるか不安だったが、読み進めていくうちに六角にも無愛想なだけで人間らしい面も見られてサクサク読めた。第1話の最初では事件の話を聞くのも面倒がっていたのに、話が進むと悲鳴が聞こえたら即駆けつけるようになるってめっちゃ探偵らしくなってる。
第1話と最終話以外は、犯人にもそれ相当の殺人を犯す理由があり、被害者にあんまり同情できないなぁ。
最終話では、六角の過去も明かされる。きれいにまとまった一連のミステリー。面白かった。

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2024年04月25日

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 京都を舞台にした探偵ミステリー、陰のある辻占師とお人好しのカメラマン。ドラマにしたら誰がピッタリだろうと読後は、思わず勝手にキャスティングしてしまった。1話毎に謎解きのレベルが上がり、後半は一気読みした。

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2022年09月04日

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ちょっと分かりにくい部分もあったけど、好みで面白かった。
ただ安見がなんの役にも立ってないのが気になる。

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2022年05月14日

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ネタバレ

祖母から「失せ物探し」は六角さん、と勧められて安見直行は京都の路地にある六角法衣店を探し出す。
無愛想な店主の聡明に一度は断られるものの、直行の撮った写真をみて、聡明は気を変えて。

直行に写真の楽しさを教えてくれた恩師の死。
事故死で片付けられた死の真相は。

京都高瀬川沿いのカプセルホテルは不気味なウワサがネットで騒がれて。そんなホテルでの自殺死体の謎。

四条駅近くの商業ビルにある映画館で起きた密室殺人事件。

直行が京都芸術センターで知り合った佐野から彼が主催するクラブのイベントに誘われるが、佐野は何かに怯えていて。

盲腸で入院した六角。入院先は14年前に六角の母親が忽然と姿を消した病院で。
母の失踪の真相とは。

法衣店が絡むけど、京都独自の空気はあまり感じられない不思議。観光客が多くてクラブのある普通の街な京都で起こる、ちょっと不気味で不思議な事件たち。
お人好しな直行が巻き込まれ、淡々と冷静な六角が謎を解く。
なんとなく科捜研のドラマになりそうで、ドラマで見たら無理矢理じゃない?!とTVにツッコミ入れてそうなとこもある。
トリックや謎解きより人間の闇が濃い印象なので、読み終わるとうっすら暗い気持ちになる。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

駆け出しカメラマンの直行は
恩師の事故死は計画的な殺人だと確信し
祖母から京都の占い師を紹介される。
法衣店という京都らしい店を営みながら
占い師をしているのは六角という青年。
イヤイヤながら直行の調査に助言し
彼が導き出した真実とは。

特殊設定ミステリも嫌いじゃないけど
基本的には、このテイストの新本格が好き。
舞台が京都なのでみんな関西弁だし
見知った地名も出てくるし。
起きる事件は不穏だが、空気はまったり。
六角も、ちょっと未来視っぽいところがあるが
解決はあくまで現実的なものです。

旅館やら映画館やらクラブやらを舞台に
5つの事件が描かれていて
最後は六角自身の過去にまつわる謎。
他の事件も、直行が情報を集め
それをもとに謎を説く安楽椅子探偵の六角。
いい感じのバディものでもありました。

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2025年09月04日

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[1]トリックはバカミス系と言え、なかなかの力技です。最後の病院のはギリ可能かもしれへんかな。
[2]個人的にミステリは雰囲気とキャラと会話が大事と思ってるんやけど、キャラと会話はええかなと思うけど、雰囲気部分で辻占を前面に出して不思議都市京都という感じにしてくれるとよかったかもしれへんなあと。ほとんど辻占関係なしの普通な探偵やった。ついでにユーフラテスにも活躍してもらいたかった。
[3]ところで、会話の調子が京都弁やのうてどっちかゆうと大阪弁ちゃうかなあって気がする。いっそ大阪を舞台に?

■簡単なメモ

【431秒後の殺人】ビルから落下してきたブロックが頭部に当たりカメラマン松原京介が死亡した。浮気が発覚し離婚直前の妻沙織が怪しいと安見直行は祖母から聞いた「六角法衣店」を訪ねる。トリックはすぐわかるが確実性がなさすぎるなあと思うてたら証拠を残しすぎてる気はするけどいちおう蓋然性の殺人のようで(ちょっとネタバレ?)。
【睨み目の穴蔵の殺人】古いビルの七階に作られた、安い宿泊料金とあえて間違った日本風にしている格好よくてスノッブなカプセルホテルでのオカルトめいた噂は謎ですらないが(女性オーナーが包帯女の真相に気づかないはずがないと思うが)、ともあれ殺人事件へとつながる。
【眠れる映画館の殺人】地下鉄四条駅近くのシネコンとミニシアターの中間のような映画好き御用達の映画館で上映後誰にも機会がなさそうなのにいきなり人が死んでいた。
【照明されない白刃の殺人】「呪いの骨壺」に現在進行形で祟られている佐野という男がイベントの最中に刺されたが犯人が消失した。《いやあ、良かった。こんなに気分がええのは久しぶりなんです》p.245
【立ち消える死者の殺人】病院から誰にも気づかれず消失した母の頼子は死んだものと六角は考えていたが行方不明になった数年後に連帯保証人となり多額の債務をつくっていた。これはある意味死体のアリバイを崩す話。

■簡単な単語集

【岡本カメラ店】松原京介と親しく、安見直行も世話になっているカメラ店。
【菊郷/きくさと】中京署刑事。聡明とは知り合いのようだ。
【京都】《京都に画にならぬ場所はない》p.14。《京都は色々移り変わりも激しい街やけど、大事なものは変わらへん不思議なとこやからね。》p.25
【京都芸術センター】京都を拠点にするアーティストたちの聖地。地下鉄烏丸駅近く。
【椎名樹里】人気のあるDJ。元アイドル。名前は出てくるが登場せず。
【辻占】朝や夕の京の辻を行き交うものの音を聞き吉凶を読み取る。現在の料金は一回三千五百円全額前払い。
【橋立あつ子/はしだて・あつこ】第二話のマークスホテルのオーナー。出版社で編集長もつとめる。まだ若くその活発に直行は惹かれた。
【松村】第三話の京都ソノシネマのスタッフ。
【安見直行/やすみ・なおゆき】いまだ稼げないカメラマン。二十六歳。世話になった松原京介の事件で六角聡明と知り合いワトソン役となる? かなりのお調子者。無駄なお節介をしたがる厄介な癖を持つ。聡明いわく「お前ほんまもんのアホなんやな」(p.85)
【安見直行の祖母】六角家の辻占能力を信頼している。
【ユーフラテス】写真の中の露地に住んでいる猫。もっと活躍してほしかった。
【六角家】平安時代の陰陽師の血を引くと言われている易占の大家。
【六角聡明/ろっかく・そうめい】現在の六角家の主。登場時は人間嫌いなのかと思われたが特にそういうわけではなかった。めんどくさがり屋ではあるが飄々としており遠慮はなく正直。辻占の能力を受け継いでいる。
【六角法衣店】本来法衣のオーダーメイドの店らしいが最近では既製品ですます寺も多くここ百年閑古鳥が鳴いている。古着部門も冴えない。唯一占い部門は盛況で予約いっぱいだが営業は隔週水曜日十四時四十五分から十五時までという驚異の十五分間だけ。
【六角頼子/ろっかく・よりこ】聡明の母。十四年前に失踪した。連帯保証人になったせいで多額の債務を抱えている。 

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2024年05月18日

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京都を舞台に、法衣屋の探偵役とカメラマンの助手が謎を解く連作短編集。
不可能犯罪や超常現象と思われる出来事が合理的に解明されるのはすっきりする。物理トリックの話が多く、少々現実性に乏しいような気がするとのと、後半になると占い要素がなくなってしまうのが残念だったが、総じて面白かった。ドラマ化にもよさそう。

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2022年09月16日

Posted by ブクログ

新人作家さんのデビュー作。凸凹コンビのキャラクターが良い味出していてユニーク。5作の短編集ですが、謎解き要素がしっかりしていて軽めのイメージとは裏腹の本格的雰囲気もたっぷり。探偵役の耳馴染みのない職業が生かされる場面もあって、これからの作品も大いに期待しています。

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2022年07月28日

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法衣店を営んでいる六角とカメラマンの直行のバディもの。
辻占要素はほとんどなく、六角の観察眼とトリックを暴く推理力で事件が解決していて、設定として必要あるのかなと、思いました。

トリックは面白かったですが、なんだか現実性に乏しかったです。そして、あまり「京都感」もないように感じました。

あまり直行は活躍してませんでしたが、直行がいないと六角が事件に関わることがないので、必要な人材かな。

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2022年07月22日

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易占+本格ミステリーという面白い設定。
探偵役は京都の細い路地裏にある古い法衣店(法衣や袈裟などを扱う)を営む六角聡明26歳。
最初の依頼者で、その後は友人として助手として側にいる同い年のカメラマン・安見直行と共に様々な事件のなぞ解きに挑む。

犯人はどうやって被害者が歩いている場所にピンポイントでコンクリートブロックを落とし死なせることが出来たのか。
犯人はどうやって襖一枚隔てた先で起きていた直行たちに気付かれずに殺人を実行出来たのか。
犯人は映画館内でどうやって周囲に気付かれずに被害者の首を折ることが出来たのか。
犯人はどうやって込み合ったライブハウスの中で被害者を刺し消え去ることが出来たのか。

様々なハウダニットが展開されて楽しいが、映画館の話のように他の話も出来れば図解が欲しかったものもあった。

六角は名探偵キャラらしく不愛想で言葉遣いにも容赦ない。出会い頭にいきなり予言めいたことを言うのも占い師らしく、それが実際の事件だったり出来事ときちんとリンクしているのも面白い。事件と関わっていることもあれば小さな出来事である場合もあるけれど。できればすべての話で占いを絡めて欲しかった。途中作家さんが面倒になったのか、ただの探偵ものになってしまった話もある。

ただ他の方のレビューにもあるが、ここまで凝った方法を取らなければならかったかと言われると少々疑問。もっとシンプルな方法でも良かったとは思う。ただ読み物としては楽しめた。

最終話は十四年前の、六角の母親が入院中の病室から消えた事件。以来、神隠しの病室と呼ばれるその因縁の病室に六角自身が盲腸で入院することになる。
非常に苦い事件ではあったが、六角自身かなり前にそういう覚悟はしていたようで受け入れている。
代わりに安見が走り回って頑張っている。
安見がとにかくお人好しで、六角曰く『安見カモ行』に名前を変えろと言われるくらい人を信じやすい。だがその分六角が冷静に物事を見ているのでちょうど良いバランスだろう。

ちょっと残念だったのはユーフラテスという、『写真にたまに映り込む』のだが『誰も実際には姿を見かけへん』猫が、安見が撮った写真に写っていただけでその後は触れられなかったこと。たぶん表紙に描かれているのはユーフラテスだと思うのだが、何か事件の解明のきっかけを作るとか、六角・安見コンビを手助けするために現れるとか、そういう設定だと面白かったのだが。
シリーズ化を睨んでいるのなら、猫好きとしては続編ではぜひ登場させてもらいたい。

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2022年07月08日

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