あらすじ
死体は楢(なら)の木の根元にあった。犯され絞め殺された無惨な女の死体である――。文芸誌編集者の亜希子は、画家から受け取った挿絵に息を呑んだ。男と密会中の美女の貌(かお)が、過日、厚木市の山林で殺されたOLの姉と瓜(うり)二つである。絵にはモデルがあったと聞き出した亜希子は、ついに男を突き止めるが、それは姉の秘部と、この国の巨大な闇に足を踏み入れることであった――。
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死海の伏流
物語は出版社に勤める亜希子を中心に展開する。姉の美樹子が、厚木から広沢寺温泉に向かう途中行方不明になり、山中で遺体となって発見される。
銀座エトランジェのママ邦子が、伊豆下田の間道で殺害される。これら2つの事件の犯人探しが進展する。
物語りの後半になって、美樹子が国家機密のスパイ活動に利用されていたことが判明する。スパイ防止法の立法をめぐる暗躍、陰謀が浮かび上がる。
この小説には「あとがき」(昭和61年)があり、著者が民主主義や報道.表現の自由について語っているのが興味深い。
今は、令和6年12月。折しも経済安全保証(特定秘密防止)の記事が新聞紙面を賑わしている。