あらすじ
戦後最年少でノーベル文学賞を受賞したカミュは1960年、突然の交通事故により46歳で世を去った。友人の運転していた車が引き起こした不可解な事故の現場には愛用の革鞄が残されていた。中からは筆跡も生々しい大学ノート。そこに記されていたのは50年代半ばから構想され、ついに未完に終わった自伝的小説だった――。綿密な原稿の精査によって甦った天才の遺作。補遺、注を付す。
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Posted by ブクログ
未完に終わったがゆえに自伝の色彩が濃くなったカミュの小説。戦死した父、やさしいが、カミュの教育を自分の母に任せる聾唖で文盲の母、独裁的に体罰を与え、カミュに学問を諦めさせて働かせようとする祖母、そして父親代わりとなった聾唖の叔父などが登場する。父がどういう人間だったか、どのように生きたのかを明らかにするのは不可能だと悟ったとき、カミュは自分は最初の人間であると確信する。つまり、カミュは両親から今日で言う経済資本も文化資本も社会関係資本も相続できずに独力で作家人生を始めなくてはならなかったからである。未完の書につき、星三つ。
Posted by ブクログ
○十年ぶりのカミュ作品。まさかの新刊行……昨年じゃん、映画公開もされてたのね。全然気づかなかったわ。
うん、まぁ、未完も蜜柑、幼少年時代しか描かれていないも同然だものね、このあとの展開が本題だものね、どうやらきびしい内容っぽい……もんね。そんななか、叔父さんとのシーンが微笑ましくてとてもいい。
小説そのものより、作家カミュがどんなふうに物語を紡いでいくのか、その過程が分るところが興味深い。思ったより行き当たりばったり!?
これまで、著者の生い立ちは気にも留めていなかったが(笑)、『異邦人』をはじめ、カミュ作品にフランスらしからぬ暑さと砂埃がつねに漂っている理由がようやく理解できた。