あらすじ
「つながっている価値」のない企業は、顧客の日常から消えていく――。
デジタル革命によって「顧客とつながる」ことが前提になり、マーケティングの基礎そのものが変わろうとしている時代の「New Basic of Marketing」を理論と事例の両面から解説。新しいフレームワークとして「カスタマー・バリュー・ピラミッド」「エンゲージメント4P」などを提唱する。さらに、その視点から、注目すべきビジネスモデルを持つ企業の事例を分析していく。D2C、OMO、DXなどを推進する上での大原則がここにある。
4P×デジタル革命
本書はデジタル革命を前提として、それがもたらすマーケティング変化に目を向ける。顧客の「暮らしのデジタルシフト」が加速したいま、チャネルやプロモーションのデジタル化という次元を超え、マーケティング思考の根本がデジタルを前提としたものに置き換わりつつある。
本書ではマーケティング思考の基本とも言える4P(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)を再考し進化させ、デジタル時代における「マーケティングの新しい基本」として提示する。さらにこれを用いて、ペロトン、ルルレモン、YAMAP、スナックミー、トライアル、ニトリ、カインズ、ナイキ、ウォルマート、アマゾンフレッシュ、ウォルグリーン、盒馬鮮生(ヘマーセンシェン)などの国内外の企業事例を具体的に観察し、彼らの「デジタルを前提とした戦い方」を解釈していく。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
カスタマーバリューの3階層として、カスタマー・バリュー・ピラミッドがある。これは顧客価値が単なる一元的なものではなく、階層的な構造になっているという考えだそうだ。
第一階層は機能価値。第二階層は体験価値。第三階層はつながっている価値。上に行けば行くほど顧客価値としてのつながりの強さは強くなる。
機能価値は商品やサービスが本来持つ機能が実現する顧客価値だが、もはやこれだけでは顧客からの選択を得られにくくなっている。
体験価値は商品サービスの届け方を含むブランド総体として、顧客が実感できる価値を指す。店舗・コールセンターといったリアル顧客接点や、デジタル顧客セ店、また送付物に至るまで、あらゆる接点での体験(コト)が顧客価値の実現に寄与していなければならない。ここまで実現できていれば、顧客からの推奨を得る具体的な働きかけも可能になるとのこと。
ここまではサービス業では当たり前のこととして理解されており、例えば、料理だけでなくスタッフや予約のすばらしさがなければ他社推奨を得られない。さらにはデジタル接点もどんな企業でも持つようになっており、一連の顧客接点を通して他社よりも素晴らしい顧客体験がなければいけなくなっている。
さらにそこから企業が顧客とデジタルで直接つながり、常に最適な提案が届けられるようになると、第三階層の「つながっている価値」が実現される。この段階になると、顧客の維持・保持が高確率で引き起こされる。これをエンゲージメント・バリューと本書では言っている。
このピラミッド構造で、自社がどの段階まで顧客価値を届けられているかを可視化することが重要。たいがいは第二階層でとどまっていて、現代は、デジタルで顧客が企業とつながっていることを前提にしなければならない。
そして、それを、顧客にとっての価値、という視点で描かなければならない。顧客の囲い込み、といったプロモーショナルな視点ではなく、「顧客にとって自社とつながり続けていることの価値とは何か?」という姿勢が重要。これを念頭に置いて、顧客価値を見直す必要がある。
デジタル経営システム
顧客エンゲージメントの4P
Posted by ブクログ
オンラインとオフラインは代替ではない、一体だ、という考え方はもはやごく当たり前だと思うが、それをマーケティングの観点で改めて整理。
顧客から見て、なぜそのサービスと繋がりたいと思えるのか、という顧客提供価値、すなわちエンゲージメントを、4つのP、product price promotion placeのある意味古典的な枠組みで問い直す。
具体例を含め切り口はシャープ。一方で、広告代理店系プロフェッショナルの本にありがちなことだが、結局儲かっているのか?についての回答は示されない。
例えば顧客がそのままファンになってしまうほどの認知度を誇る登山サポートサイトのYAMAP、私もヘビーユーザーだからその使い勝手はわかっているつもり。だが、このサービスは未だ黒字化していない。
この本をベースにビジネスアイデアを組み上げて、さてキャッシュが回るか、はまた別の話、という割り切りは必要な、でも世の中に全ての回答を詰め込んだ本は存在しないとの前提に立つなら得るところの大きい本。
Posted by ブクログ
巷で騒がれているDX事例や企業を、「繋がっている価値」という点で、まとめあげていて、理解しやすく、自ら事業戦略を考える際にも役立つフレームワークだと感じた。
知らない企業事例もあり、新鮮だった。
Posted by ブクログ
マーケティングのデジタルシフトの本質を再認識した。日々の実務の中ではどうしてもECサイトを用意したなどデジタルの媒体があることを重視しがちだが、それは本質的ではない。ビジネスモデル自体を考え直さなければ本当の競合も見失ってしまう。
この本で提示されているフレームワークは従来のマーケティングのフレームワークに基づいてデジタルシフトの本質を捉えている点で理解しやすく、深い内容になっている。
Posted by ブクログ
マイクロソフトCEOの『2年で起きる変化が2ヶ月で起きた。』発言を受け、コロナ禍で変わった顧客、環境の中で進めるマーケティング戦略が提示されている。
4Pを拡張したフレームワークと合致する事例は、サンプルが少ないながらも、説得力を持つ。参考にしよう。
Posted by ブクログ
マーケティングにおけるデジタル活用の再定義を行うにあたり役に立った。
今までデジタルをとりあえず使う、例えば小売にECを使えばデジタルしたっしょみたいな感覚だったがそれは本質ではないと気づいた。
本質はデジタルを用いることでお客様をより理解し、その上でどう繋がりを作り信頼度を上げていくのかが必要であって、デジタルはいわゆるHOWの一つでしかない。
この本は近年それを理解し、うまく活用されている事例が記載されておりイメージがつきやすい点が非常によかった。
Posted by ブクログ
「ものを売るのではなく価値を売る」と、従来のコンテンツマーケティングをデジタル中心の今時のビジネスモデルを解説しつつ教えてくれる本。
マーケターが必須で読むべきかというと正直そうでもないと思う。
今世の中に蔓延っているSaasと言われるサービスは、単純な計算でモノの価格を決めることができない。ものを売る時代では部品の価格と人件費、その他諸々を計算するとおおよその妥当な金額がだせていた。
だが、今の時代の価値は顧客が決めてそこに支払う妥当な金額も顧客が決める時代だ。モノそのものに原価や人件費が加算されにくい分、体験に対して価値を決める時代になっている。
ただ物を売るのではなく、体験を売るのを再認識させられた本でした。