あらすじ
「お前んち、いっつもええ匂いするのう。」
そう言った転校生のコジマケンが気になる緑は、まだ初恋を知らない十四歳。
夫(おじいちゃん)が失踪中のおばあちゃん、妻子ある男性を愛し緑を出産したお母さん、バツイチ(予定)子持ちの藍ちゃん、藍ちゃんの愛娘、桃ちゃん。
なぜかいつも人が集まる、女ばかりの辰巳一家。そして、その辰巳家に縁のある、謎の女性棟田さん。それぞれの“女”が抱える、過去と生き様とは――。
第一弾『こうふく みどりの』は、大阪のとある街を舞台に、様々な形の“女のこうふく”を描いた、西氏渾身の一作。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
共感でも俯瞰でもない絶妙な距離感で見る中学生の初恋と失恋。
(ちょっと風変わりだけど)ただの日常といえばそれだけなのに、狂おしいほど好きな場面が随所にあります。
エビフライを尻尾まで食べるコジマケン。
雨宿りしながら、タバコの箱を探す明日香。
全編を通して、張り紙やパッケージの文言が勝手に目に入ってしまう演出でなされる、ごちゃっとした空気感も心地よい。
いちばん好きな作家さんは西加奈子さんですが、西加奈子さんの本のなかでいちばん好きです。
Posted by ブクログ
罪を犯したからこその許容
泥臭い女たちの力強い抱擁
弱さも汚さも包括した人間達の中にある強さ
コスパ重視の現代において、
脈々と息づく命の鼓動を思わせる作品
Posted by ブクログ
重い内容を書いているはずなのに、関西人の自分を客観視する文化が反映されているおかげで重くなりすぎない。
登場する女性それぞれが壮絶な過去を抱えているけど、最後は希望を持たせてくれるエンディングなのでよかった。
Posted by ブクログ
先日「G SPIRITS SPECIAL EDITION vol.1
アントニオ猪木」を入手。10年前のMOOKで、これに
ついては改めてちゃんと書きたいのだが、その中に今や
直木賞作家となった西加奈子のインタビューが掲載され
ていた。西加奈子がプロレス好き、というのは周知の事
実なのだけど、何故に世代の全く違う猪木のMOOKに彼
女が・・・?
・・・インタビューを読み込み、その後すぐに2冊の本を
注文。そのうちの1冊がこちらの作品となる。
大阪の下町を舞台としたヒューマンドラマ。
裕福では無いが、何故だか近所の人が集まりがちな家に
住む中学生女子が主人公。祖母・母・叔母・イトコに加
え、2匹の猫、1匹の犬までが女性という少しだけ特殊な
家族と暮らす主人公のそばに、背の高い転校生男子が現
れて・・・という内容。
メインは主人公の日常とその心情描写なのだが、章の合
間に異なった語り部による独白が挿入される、という構
成。タイムラインがはっきりせず、普通ならとっちらか
って解りにくい内容になってしまうのが常なのだが、幾
つかのキーワードで統一感を保っているのは見事。
もちろん、何の関連性も見えない話はラストでキッチリ
繋がる。
僕は「大阪弁の表記」が苦手で、以前に読んだ他の西加
奈子作品でもちょっとしたアレルギーを感じたのだが、
この作品はすんなりと入ってきたどころか、ちょっとし
た心地よさすら感じた。不思議な世界観を有する唯一無
二の作品、とまで思う。
そして、アントニオ猪木という存在が非常に重要。何故
に今までこの作品を知らなかったのか、と自分を責めた
くらい。
この1冊だけでもかなりの完成度なのだが、【こうふく】
は2冊で1作品、ということらしい。
このまま『こうふく あかの』を読むつもりである。
Posted by ブクログ
胸に彫ったAが誰なのか分かるところを夜中に読んでしまったので、緑に激しく感情移入して、悔しくて悲しくて泣いてしまった。
だって、緑の特別な初恋なのに、そらないで藍ちゃん…
明日香との微妙な友情関係とか、おばあちゃんとかお母さんとかのすごく魅力的な人物の特徴とか、初恋の心の描写とか、夫がいるけどずっと孤独に生きていた女性の話とか、面白いものはいっぱいある。
だけど、それ以上にもう、初恋の相手を自分の年上の子供もいるいとこに奪われた(別に緑のものでもなかったけど)ことが、しばらく尾を引く強いパンチだった。。
最終的には自分の子供以上に愛して信じることができない藍ちゃんとコジマケンの関係性は、ビミョーーな、これからどうなるのかしらね、みたいな感じになるけども。
でもやはり、終わりの、猪木の「道」がとてもいい。
行けばわかるさ。
Posted by ブクログ
こうふく2部作の1作目
大阪のおばちゃん(候補含む)の生き様が良く描けている。物語の中で世の中を動かすような大きな出来事と言うのはないのだが、日常にドラマは転がっているんだなぁ。主人公(中学生)の老成っぷり、おばあちゃんのカッチョええ生き様、おかあちゃんの達観した生き方、おばちゃんの生々しい香りの描写。どれもこれもがどこにでもいそうな、でも大阪っぽいおばちゃんの在り方が上手く書かれていて、大阪人の俺にはなんとも居心地がよかった。
Posted by ブクログ
夫(おじいちゃん)が失踪中のおばあちゃん、妻子ある男性を愛し緑を出産したお母さん、バツイチ(予定)子持ちの藍ちゃん、藍ちゃんの愛娘、桃ちゃん。
その辰巳家に縁のある、謎の女性棟田さん。それぞれの“女”が抱える、過去と生き様とは――。
↑このあらすじを先に読まなくてよかった。緑の話と交互に出てくる太字の話を誰のことなのか推測しながら読むことができた。
おばあちゃんは近所の兄ちゃんが好きで、その障害児?の弟を海に落とした。妹に見られ、旦那に告げられ旦那は逃げる。シゲオという名前を息子につけてもおばあちゃんは平気。
シゲオは喧嘩っ早く飲み屋で男に殺される。その妻はずっと緑の家の前に通い続ける。おばあちゃんの遺言は「シゲオ」「むねたさん、もう大丈夫。」
コジマケン(児島犬!)は藍ちゃんを好きになる。でも、桃ちゃんのお父さんとしては14歳は不十分。