【感想・ネタバレ】放浪記のレビュー

あらすじ

私は宿命的に放浪者である――若き日の日記をもとに記された林芙美子(1903―51)の生涯の代表作.舞台は第一次大戦後の東京.地方出身者の「私」は,震災を経て変わりゆく都市の底辺で,貧窮にあえぎ,職を転々としながらも,逆境にめげることなくひたすらに文学に向かってまっすぐに生きる.全三部を収録.(解説=今川英子)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

貧乏ってやつぁこういう事を言うのさね。どこまでもどこまでも追いかけてきて、いつの間にか自分に成り代わって、次の貧乏をうむのさね。自業自得とのたまう人の、なんたる無理解。金と親と別れた男についてのどこまでも続く愚痴。恋愛模様は演歌そのもの。さまようのは、住まいだけでは無いのです。
破滅型の生活、自己生産の貧乏と、持て余した若さと体力は過激思想とよくくっつく。理想の奥深くに昏く光る恨みを籠めて。当時、この書き方で口に出して歩いたら思想犯として逮捕される流れもよく分かった。
ただひたすらの困窮のサイクルの中でこの人はよくぞ文筆家になったものだ。詩に触れ続け、詩人に囲まれてきた方のようで、日記も非常に詩的だけど、啄木のように生活臭が強い。北原白秋が好きでロシア文学を良く読んだようで作品が頻出する。時代的には第一次大戦後、関東大震災の記述もある。だが世の中の出来事の記録よりも、20歳そこそこで、自分のもがき苦しむ精神を、ありのまま書き付けた胆力に恐れ入る。内容的には何の救いも無いのだが、好評を博したという事は、多くの人が共感したということか。
頭の中のBGMはずっと『からたちの花』でした。いや白秋じゃない、陽水のほう。

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2024年04月10日

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