あらすじ
人間同士の醜悪な権力欲の濁流の中にあって、“黄金の犬”ゴロは再び危機に直面する。ゴロの飼主北守礼子が、武器輸出汚職事件の黒幕遠沢の魔手に陥ちたのだ。ゴロは疾駆し、跳躍し、咆哮する。が、ついに遠沢の配下八州組組員に周繞され、無数の銃口がゴロの胴体に狙点をつける。ゴロよ、再び死地を跳べ! 北海道から舞台は西へ――人と動物の命を賭けた感動の巨編、ここに完結!
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Posted by ブクログ
1979年に映画化され、その後何度もドラマ化された西村寿行作品『黄金の犬』の続編。
『黄金の犬』は、飼い主とはぐれた狩猟犬ゴロの、悪人達に追われながらの北海道から東京への旅路を描いていますが、この続編では、やはり悪人達に追われながらの鹿児島から東京への旅路を描いています。(実際には島根と岡山との県境辺りで終わり)。
北海道からの南下を、九州からの北上に設定変更しただけの、完全な二番煎じかと思いきや、実際にはちょっと違いました。
前作が、大作長編小説、という感じなのに対して、今作は連作短編小説的です。
雑誌連載作品なので、九州を舞台にした第一章と第二章の時点では、大作長編小説を目指したのかもしれません。前作の二番煎じ感がひどいです。
ですが、第三章「海」からは、様子が一変。ゴロが、悪人達に狙撃されながら泳いで関門海峡を渡るところから興奮させられます。
更に、山口県のある村を舞台に、悪人達が村の子供たちを首から下を土に埋め、警察が関与したら子供の首を刎ねると脅迫する、という西村寿行作品でもトップクラスの残忍さに興奮はマックスです。
続く第四章「老人」では、余命宣告をされてから山に暮らす孤独な老人と、ゴロと、ある出来事から口が利けなくなった幼い少女との友情を描いた感動作。ゴロと飼い主北守礼子とのすれ違いも描いて、感動的な再会も期待してしまいます。
続く第五章「狼」は、そんな期待を軽くはね除けるユーモア作。政治家を引退した老人とその仲間がちょっとした誤解から、ゴロを追う悪人達と生死をかけた闘いを繰り広げます。その闘いを描写するのに忙しく、ゴロと飼い主北守礼子との再会シーンは描かれず。。まあ、このすかしかたが、西村寿行作品ではあるんですけれども。。
第三章と第四章のテンションが最初から最後まであったら、おそらく名作となり得たであろう作品です。