あらすじ
恋をすると、人は強くなれるんだろうか。それとも、弱くなってしまうものなんだろうか。一人で部屋を借りさえすれば、いつだって好きなときに彼女と二人きりになれるとばかり思っていた。なのに、思うようにはいかない勝利の一人暮らし。バイト先の「風見鶏」では失敗を重ねるし、勝利への思いを断ち切れずに苦しむ星野りつ子が気にかかる。何よりかんじんの「かれん」が離れていこうとしている……。波乱含みの大人気シリーズ7弾には、星野りつ子の独白を収録。
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Posted by ブクログ
目次
・WAIT FOR ME
・CALLING YOU
勝利って、今まで挫折したことがなかったんだな。
小学生で母親を亡くしたけれど、父親が家のことを全然できない人だったので、小学生のころから父に料理を食べさせ、洗濯してきれいな服を着せ、家の中を片付けていた。
それができる子だった。
そのうえ勉強ができないわけでもないし、運動神経もいい。
多分、自分に自信がないなんてことはなかったのだろう。
だから5つ年上のかれんの面倒を見たくてしょうがない(優位に立っていたい)し、ちょっとかれんの気持を見失うと頭の中がそれでいっぱいになる。
喫茶店で、身体を使って仕事していて、あんなに上の空になれるもの?
スポーツやっていながら、メンタルの整え方を知らなすぎじゃない?
というかねえ、やっぱり父親が悪いよ。
子どもを信じて好きなようにさせるっていうのは、ほったらかしにすることではない。
勝利の父親は一度でも勝利と向き合ったことがあるのか?
彼の悩みを聞き、迷いを知り、アドバイスしたことがあるのか?
自分の小ささを知り、自分の限界を知り、もっと強くなりたいと、もっと大きくなりたいともがくのは、中学生くらいまでじゃないかなあ。
勝利、ただいま思春期真っ最中って感じ。
大学生のメンタルではないと思う。
Posted by ブクログ
試練に次ぐ試練。
なんかこの巻を読んでいて、今まで割と楽観的に考えていたこの物語の世界が、俯瞰で見ると厳しい状況に思えてきた。
20代半ば女性と未成年男性(当時)との恋愛って、しかも5歳も離れているって、一番難しい設定ではないか?10代同士、社会人同士なら分かるけど、現実的に考えたら自分なら無理かもしれない。
まずこの二人、隠し事が多いなと思い始めて、周りの人間にも二人の間にも秘密があって、もう誰までが何を知っているのか読んでいて分からなくなった。
勝利が一人暮らしをしていることも周りに言ってなくて、それが意外過ぎた。こんなにフランクな性格なのに、家で友達と騒いだりしてそうなのに、内緒なんだって。
かれんのことも内緒にしているから、原田先輩が無理にりつ子とくっつけようとしていても誰からもフォローが入らない。
でもかれんは自分たちの関係や自分の生い立ちをむやみに話してほしくなさそう・・・
それは難しすぎる。勝利とかれんの間でも連携が取れていないから、周りにもどんどん隠し事、というか嘘をつかないといけなくなってきて、辻褄が合わない。そんながんじがらめで続けられる関係なんてないよ、と思ってしまう。
全部言えたら楽なんだろうけど、この二人の場合、いとこ同士ということになっているのがまたややこしい・・・のかな?もはや言っても良いんじゃないかと思うけど。
りつ子に対しては、本人も自覚しているようにもう少し早い段階で「非情」になるべきだった。元々かれんがいるのにりつ子とも仲良くして、結果的に事情があったとしても未だに二人でご飯に行くのはダメだと思う。
誰にでも優しいと、本当に優しくしたい人を傷付ける。だから男女の友情は、どちらか一方にでも相手がいるのなら無し派。
かれんは自分の職業や今後について迷っているけど、それを相談するのがまだ未成年でバイトしかしたことがない勝利というのはやっぱり不安だと思う。というかそろそろ同級生で結婚もし始める年齢だし、余計焦る気がする。周りは次のステージへ上がっていくのに、自分は彼氏がまだ成人もしていないとなると話が合わないし。男女逆ならまだしも、女側が年上だとものすごい時間ロスに感じてしまいそう。
それに勝利の周りは当たり前に皆大学生で、勝利がなにかとかまっている恋敵りつ子さんも大学生で、自分はなにこんな年下の学生のことで悩んでいるんだろうとか、自分だけ年上なのに年下に混ざっていかないといけない恥ずかしさ?孤立感?を感じて馬鹿らしくなってしまいそう。
逆に勝利の方も、まだ学生だから経験していないことも多くて、いくらしっかり者の勝利でもかれんと同じ目線で物事を見るのは難しいと思う。かれんの気持ちより自分の不安を優先してしまって自省していたけれど、この年齢じゃ仕方ないよ、まだ子供だよ、と言いたくなる。
自分の20代を思い返しても、自分最優先ですぐ感情的になるような中身が未熟な人はまだ沢山いて、特に二十歳そこそこで大人だなぁと思える人間なんて皆無に近い。勝利は年齢にしてはかなり大人な方だ。
だからもう就職していて、さらに将来の為に転職も考えているかれんを見ると、めっちゃ焦るだろうなと。勝利の性格なら相手をリードしたいぐらいだろうに、自分の方が周回遅れだなんて。
だからこの年齢、年齢差で、人生の岐路に立たされたり困難にぶち当たると、よっぽど人間ができていないと難しいよなぁと急に思った。
この巻はネアンデルタール原田が意外に人をよく見ていることが分かったり、りつ子さん目線の悲しいけれど可愛いサイドストーリーが読めて良かった。
あとやっぱりあとがき。私のその時その時の悩みに合わせてくれているのかと思うぐらい(そんな訳ないのに)、ぴったりとした言葉をくれる。
本編でも何度か、携帯でいつでも連絡が取れることについて書かれているけれど、私はさすがに家の電話しかなくて約束もままならないのは嫌だけれど、SNSでほぼリアルタイムで四六時中メッセージをやり取りするのはもう卒業することにした。
自分や他人がオンラインかどうかまで知られたくないし、会話が途切れないように永遠に返信し続けるのは苦痛すぎる。学生時代にラインやインスタがなくて良かったと心底思っている。
けれどその反面、日本中だけでなく世界中と繋がれるのはとても便利で、例えば友達にしても恋人にしても、ネットが無ければ一生出会えない人と出会える。
昔は自分が偶然生まれた環境の中で出会って、異性との出会いは学校や会社しかなくて、そんな狭い地域で皆が皆相性の良い人なんて見つかるはずがないのに無理にでも結婚して・・・それも十分不自然なんだよなって思う。
だから今は友達付き合いなんかは気の向く時で良いし、合わない人とは会わない。スマホじゃなくてガラケーでも良いし、メール機能のみになっても問題ない。(でもPCは必要w)
私は今はその段階に居るんだ。20代ならあり得なかったと思うけれど、私は変わったし、これからも変わる。流れるように変化していって良いんだと改めて思った。
20251104