あらすじ
一九九一年末のソ連邦解体後、新生ロシアは鉄の扉に覆われた秘密文書を積極的に公開した。日本関連の文書も明らかになり、秘められた真相公表が日ソ関係史の書き替えを迫っている。本書は、戦前の社会に衝撃を与えた女優・岡田嘉子の越境亡命事件、日本共産党と日本社会党のソ連資金疑惑、北方領土など日ソ交渉の舞台裏をソ連公文書を基に解明し、理想と幻想の国家・ソ連に憑かれた日本人の悲喜劇を描くノンフィクションである。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ソ連邦崩壊後、大量の機密文書が公になった。日本共産党や
社会党(現・社民党)は、ソ連共産党からの資金援助を必死に
なって否定するが、ロシアの公文書館に保存された膨大な文書
からは日本への資金流入が明らかだ。
ソ連共産党からの援助資金はふたつの党の選挙資金として活用
された痕跡がある。海外からの政治献金は法に触れるので、
ソ連のスパイだったとして100歳にして除名処分になった
元名誉議長・野坂三参個人が勝手にやったことにしちゃって
るしなぁ。
未だ解決の糸口さえ見えぬ北方領土返還にしても、日本側からの
2島返還の提案があったとか、ソ連が売却しようとしていたなんで
話も出てくる。ロマノフ王朝時代に二束三文でアラスカを売却した
国だから、売り払おうとしてても不思議じゃないな。
日本がいかに旧ソ連に振り回されたかが分かる1冊である。
さて、戦前の大女優・岡田嘉子と演出家・杉本良吉が、樺太国境を
越えて旧ソ連に亡命を試みた「恋の逃避行」。しかし、杉本は日本の
スパイとして銃殺され、嘉子も強制労働収容所に送られる。
日本に残された杉本の妻・智恵子は、どんな思いでこの知らせを
聞いたのだろう。肺結核を患っていた智恵子は、ふたりの越境から
9ヶ月後に亡くなっている。合掌。