あらすじ
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コンテクスト読解力を
高める最良の教科書
ハーバードビジネススクール(HBS)流のケースメソッドに独自の工夫を加えて、戦略の本質を描き出した実践的ケース集。
本書では、巨額の特別損失をもって定義する「戦略暴走」をテーマに該当する日本のケースを網羅的に集めている。経営のコンテキストを読み解いて、最適な手を打てる経営者になるための、MBA・経営幹部必読の書。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
179件の戦略暴走例(多額の特別損失計上)を1ケース数ページでまとめてある。
「暴走」にも不動産バブルに合わせてリゾート開発を行ったような例もあれば、国際化・多角化等、当時の状況をふまえれば真っ当な打ち手にも見える(実際に上手くいった競合もいる)が、最終的に撤退することになった事例について、経営者の考えとその盲点を簡潔に記載してあり、多額の投資の難しさが伺える。全て終わった現在の視点だからこそ、不動産や半導体への投資が上手くいかないであろうことは予想がつくが、現代もITベンチャーへの投資が再び過熱しており、これらのどれが暴走につながるかは判断が難しい。
各経営者は大きな投資を行う前にこの本を読んでいただきたい。
Posted by ブクログ
膨大な企業事例をもとにして、個別の問題点を深掘りしながら、共通する組織や個人の問題を抽出し、体系化した力作。著名な企業が多数登場し、非常に分かりやすく、身につまされる思いがする。
個別事例もいいが、最後の終章の総括が更にいい。なぜ戦略が暴走するのか、経営者の立場、企業のステージなどの要因に基づき分析している。また、過去の類似した研究との相違点を示しながら、研究のあるべき姿も提示している。取締役会が監督機能を果たせていないことが定量化されているのも説得力がある。
結果を見て、それをまとめているだけという批判もあろうが、個人的には高く評価したい書籍である。
Posted by ブクログ
戦略不全の因果で、三品氏が指摘したのは、「驚くほどの多くの日本企業が、インフレーションの効果をのぞいた実質利益額の漸減が露呈した」という分析結果であった。
しかも、利益漸減に苦しむ戦略不全企業は、特定業種に固まる傾向が異様に目立つことも明らかになっている。これは、戦略不全症の第一義的な原因が主力事業の衰退にあることを物語っている。
地盤沈下し始めた事業立地にいつまでもしがみつくのは経営陣に他ならない。持続的な利益成長を達成する企業のなかには、沈下の兆候が見える立地を見限って、興隆する立地に転身したところが散見される。問題の核心は、経営体制の変容が事業立地の転換を妨げるところに潜んでいる。
本書は、転地を勧める三品氏自身が、転地が暴走を誘発することになってはいけないと、暴走ケースを検証した分歴レポートである。
「単純な乱発経営という戦略暴走を招く訳にはいかない」という怖れを抱いていた三品氏は、本分析を通じて、そのような落とし穴にはまり込むケースは少ないことに胸をなで下ろしている。
さらに、暴走と化した戦略は、基本的に「後ろ向き」で、攻めの一手ではなく守りの一手が暴走と化する図式であったことを発見している。
暴走の始動機構は、M&Aのケースでは持ちかけられた受動的案件が過半であり、多角化のケースではIT系の盛り上がりなどに反射的に反応している物が多い、同じく国際化ではプラザ合意に端を発する円の急騰が契機となり、反射的に反応しているケースが散見される。
「ここで動かない企業は馬鹿だ」という力学が働く中で、「みんなで赤信号を渡る図式」が始動構造に見られる。
それが暴走の結末を迎える構造には、将棋でいうところの無理筋、つまり攻める手に見えて、実意は相手の反攻を呼び込んでしまう悪手に走り、負ける形態が見られるという。
手の見えない弱い棋士と同様、ということであろう。
本書を通じて、「社会の動向を読み続ける未来シナリオ型戦略」「転地上手な未来志向の柔軟組織」の構築を、研究してみたいと思うに至った。