あらすじ
岩手県にある「なかほら牧場」の牛たちは、一年を通して山で生活しています。糞尿処理は自然まかせ。糞を肥料にして育った農薬なし・化学肥料なしの野シバを食べ、自然に交配・分娩し、山林と共生しています。人間は、子牛の飲み残しを分けてもらうだけ。――牧場長の中洞正さんは、なぜこんな牧場をつくったのでしょうか。自然と人間がともにすこやかに生きていくすべを考えるノンフィクション読み物です。
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Posted by ブクログ
岩手県岩泉町にある「なかほら牧場」。牧場主の中洞正(なかほらだたし)さんは、幼い頃から牛を普通に飼って生活してきて、大人になったら牛飼いになると決めていた。ほとんどの友達が成長するにつれ都会に出ていき牛飼いになる夢など持たなくなってからも、中洞さんは牛のことしか考えていなかった。16歳で、埼玉の牧場で近代酪農を学びました。牛飼いに勉強はいらないと思ってきた中洞さんだったが、高校・大学で酪農を学ぶ事にしました。
近代農業を学び、最先端の酪農をしようと意気込んだのですが、効率的に、牛をモノのように扱う近代農業に疑問もあった。そんな時、山地酪農を知り、これこそ自分が本当に求めていた牛と一緒に幸せに暮らす美しい酪農だと確信した。
はじめは貸してもらった、電気も水道も通っていないジャングルのような山で、数頭の牛からはじめた酪農。貯金がたまるはずもなく、数年を過ごした。
限界かと思った時に、酪農家を増やすという国の事業が立ち上がった。国のお金で、50ヘクタールの土地と牧場施設、牛舎、冷蔵庫、トラクター、酪農家が生活する家までも揃えてくれる。総経費は2億円だけど、そのうち1億3千万円を国が払ってくれる、残り7千万は酪農家の借金で働きながら返していく事になるという。
中洞さんは、このチャンスに賭けた。
国の指導も入って近代酪農のやり方を押し付けられる事もあったが、中洞さんが理想とする、日本のもともとの草を育ててそれを牛たちが食べる酪農。牛たちは山で自由に動きまわり、氷点下にまでなる冬でも山で過ごせる強い牛たちが育っている。ふたの裏にクリームができる自然な牛乳。
今の牧場になってからも、たくさんの困難を乗り越えてきた中洞さん。熱い思いが伝わるノンフィクション