あらすじ
大和書房創業60周年・学びの杜プロジェクト「未来のわたしにタネをまこう」
シリーズ第1弾!
「食べる」という限りなく身近な行為と地球規模のさまざまな課題は、じつは密接につながっています。「食」が、私たち自身と世界にどんな影響を与えているのか、経済学の枠組みを使って、分かりやすく解説します!
私たちがどのような世界を残していきたいかを考え、さまざまな課題にどうチャレンジしていくのか、最新の研究や情報をもとに考える未来思考の経済学書です。
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Posted by ブクログ
★食に関する勉強はもちろんのこと、「人間らしさ」について学ぶことができた。
主に3点。
①自身のバイアスを考え直すきっかけとなったリサイクルのこと。
『食品が堆肥(たいひ)になれば、「無駄を減らした」という気になるかもしれないが、必ずしもそうとは言えない。社会全体で見ると、リサイクルしたぶんだけさらに資源を無駄使いしているかもしれない。食べる側と食料生産側がお互いのニーズをよく理解すること、他の様々な可能性も注意深く検討すること。』
単純に食品ロスを減らすことは一筋縄ではいかない。
他の書籍になるが、単純に服をリサイクルに出すことも、役立っているものもあれば、ただ途上国の自立を損なわせていたり、大量の服が山積みになって問題になっているという話もある。また、『食品ロスの削減には必ずコストが発生し、誰かがこのコストを負担する。その食品への支出を減らす=その食品の売り上げが減る、その生産に関わっている人たちや企業の収入も減る。また、食品ロスの処理やリサイクルで収入を得ている人たちや企業の収入も減る。またリサイクルで削減となると、リサイクルするための追加の費用や資源が必要となる』という他のリスクについての懸念。
②途上国での経口補水液への認知バイアス。「誤帰属」「損失回避性」「現状維持バイアス」など。
肥満や環境における「現在思考バイアス」「曖昧回避性」も興味深かった。
③ほんの小さな変化でも大きな効果に繋がるにも関わらず、「認知バイアス」や「現状維持バイアス」に加え、人はできるだけ省エネで物事を考えようとし、よく考えずにわかりやすい結論に飛びついてしまう傾向あるところ。
健康志向の甲さんと肉好きな乙さんとの例が分かりやすかった。ぱっと見では騙されてしまう効果。「変化の量」で実は乙さんのほうがちょっとした行動の変化が大きな影響力につながる。(甲2日に1回を4日に1回へ。乙毎日から週5日。頻度多いが減った量は、甲<乙)
★食の問題だけではなく、将来の食へ向け、DXの活用など著者の考える解決策もあり、学ぶことができた。
まずは自身で取り組める点を少しずつ取り組んでいきたい。
自身のバイアスにとらわれないように。期待のし過ぎは禁物。取っ掛かりを活かし、次の段階、より長期的な変化につなげる仕組みを家庭の中で作っていきたい。
Posted by ブクログ
すぐに答えを教えるのではなくて、まずは考え方やデータについて説明して、読者に考えさせるスタイルは、私は好きだった。食をとりまく社会問題に関する事実だけではなくて、その裏にある仕組みと考え方も知りたい人にはおすすめの一冊。内容の濃さの割には、とても読みやすいと思う。
Posted by ブクログ
「食べる」にまつわる経済学、すなわち食料経済学の入門書。
著者の専門は農業経済学と開発経済学。
それゆえ、特に農と食の流通(市場)において、「食べる」(需要)側と「食糧生産」(供給)側とがどう結ばれるか、そして市場がどう機能し、あるいは何故時に機能不全に陥るかという点に関し、先進国だけでなく途上国の事例もふんだんに交えながら世界規模の視野で語っていく。
経済学の入門書であるが、数式を一切用いず、平易な言葉と豊富な事例をもって語られているのが特徴。
それでいて、経済学のいくつかの重要な概念(需要と供給、負の外部性、情報の非対称性、制度設計・・・などなど)に自然に触れながら、現代社会が抱える食にまつわる課題と解決について次々に話が広がっていく。
個人的には、一時期猛プッシュされた昆虫食がなぜ良いとされたのか理解できたのが良かった。そして、著者が心配しているように、経済的には合理的な解決策であるにも関わらず心理的な問題で、現実に失敗(市場に受け入れられなかった)を目の当たりにしているため、経済学による社会課題解決の難しさもある意味実感できてしまう。(本書が執筆されたときは、コオロギパン問題発生前)
また、食にまつわる問題が、健康だけでなく環境問題や持続可能性に強く関連していることもあまり意識していなかった。
経済学の知識が深まるというよりは、身近な問題から世界の問題を想起する。そんな視野の広がりを与えてくれる良い本だと思った。
Posted by ブクログ
菜食生活をしていることもあり、健康的な食、気候変動、SDGsへの興味から手に取った一冊。
「食べる」という当たり前の行為を取り巻く様々な地球全体の課題に焦点をあてながら、データと共に分かりやすく解説されているので理解しやすかった。先進国と後進国それぞれの課題、人間の心理問題など、一筋縄にはいかない課題も多い。
でも、ひとりひとりが※「健康的で持続可能な食生活」を少しでも意識しながら過ごしていけば、未来は一歩ずつ開けてくるはず!
改めて日々の食生活を意識しようと思った。
※これからの「食べる」を考える上で特に重要になってくるのが、「食べる」による健康への影響と、「食料生産」による環境への負荷。この2つの側面考え合わせた食生活を「健康的で持続可能な食生活」と呼ぶ。「健康的」と「持続可能」は同時に改善できる。
Posted by ブクログ
食料に関する社会課題について、多角的に考察している本。
食料自給率、貿易、人口、SDGs、行動心理学、心理的バイアス、などなど様々な視点で食料を起点として課題をわかりやすく解説されている。
ページ数がそれなりにあるが、社会常識としての知識を得たい人は、一読されたし。
Posted by ブクログ
健康な食事、食の安全、SDGs、経済学、ナッジなどに関心が少しでもある方にはぜひ読んで頂きたい本。
食に関して、生産、消費、廃棄にいたるまでの全プロセスのこと、国内だけでなく海外も含め世界的な話題、食と人間の行動心理や市場、環境との関係、などといった様々な領域の話題を、経済学という切り口で紹介されているのが本書です。
その根底には「社会にとって望ましい食とは?」という問題意識があります。
全体を通して非常にわかりやすく、特に専門的な知識がなくてもスラスラと読むことかできます。
現在の多くの問題と、問題の解決策として現在世界で試みられている活動や研究が紹介されていきます。
消費者としての私たち個人は具体的にどんなことができるでしょう?
それに関しては、ややわかりにくいです。原因としては文章の構成と、文中で指摘されているようにそもそも消費者は生産や廃棄の広範で複雑な過程に関与していないという理由からです。
しかし、食にまつわるあらゆることを行なっているのはほかでもない私たち人間であり、その人間は完璧でも合理的でもない存在であるということ、その「人間らしさ」を受け入れて、そんな私たちでも望ましい社会にするために食に関して活動しなければいけないしそれができる、というメッセージはしっかり伝わってきました。
著者の本書の目的は明確ですが、冷静に様々なデータを提供し、でも人間愛を感じる、温かな文章でした。
社会にとって望ましい食のために何ができるか考えていきたい、本当にそう思える本です。
Posted by ブクログ
将来の理想の食生活の在り方として「健康的で持続可能な食生活」がある。①健康的な食生活による病気リスク低減・医療費負担の削減 ②持続可能な食生活による環境負荷の削減
どちらも大事で今後の食の未来を考える上では避けては通れない。かつ両者はEATランセット基準などの専門的な考え方がある通り、同時に達成可能である。
一方で地球規模でみると貧しい国では栄養不足に陥っている人が大勢いる。生きるか死ぬかの毎日の中、「健康」や、ましてや「環境」が二の次になることは当然である。でも、豊かな国で肥満が多い(食べ過ぎ)からといってそれを貧しい国に分配することは経済合理性から難しい。「いかに安く供給できるか」という経済的な要素が非常に重要であることを学んだ。
本書で触れている行動経済学的な要素の一つに、人は目先のことを優先して選択する傾向があるということがあるが、日々の食生活の中で地球全体の未来について目を向けることなどほとんどない。そんな中でも、皆が少しでも本書で触れられているような内容を知り、少しずつ行動を変えていくことが「食べる」の未来を考えていくうえでとても大切だ。