【感想・ネタバレ】ウルトラマンの伝言 日本人の守るべき神話のレビュー

あらすじ

君は強大な敵に、いかにして立ち向かうか? 日本は、巨大な力に苦しめられ続けてきた。闇に怯え、打ちひしがれ、夢や希望を無くしている時代だからこそ、民族の神話が必要なのではないか。本書は、過酷な現実を生きていくために、架空の物語からの伝言を読み解く書である。現実世界にウルトラマンはいない。だから、ウルトラマンを知らねばならない。そして、日本人としてウルトラマンを語ることに意義がある――。著者は皇室史学者としてウルトラマンを日本人の「神話」と見なし、大切なものを「自らの手で守り抜くとは、どういう意味か」「力を得るには、何をしなければならないか」を問う。「私は大人になっても、巨大な力に叩きのめされそうになった時にウルトラシリーズを見直し、ウルトラマンの伝言を振り返ってきた」。文明と狂気の世界を描き、そして神話へと至る『ウェストファリア体制』『ウッドロー・ウィルソン』に続く著者の三部作、ここに堂々完結。

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ネタバレ

現在進行形の間接侵略に対して

・現実の人間社会において、正義は人の眼を曇らせる。
人間社会は矛盾と摩擦によって成り立っている以上、どこかで妥協しなければならない。
もし神の正義を実現しようとしたら、悲惨な宗教戦争が巻き起こるだけだ。
・地球侵略を狙うメフィラス星人の手口は、インディアンから土地を奪ったアメリカ人そのものである。
メフィラス星人は、最も純情な年齢にあるサトル少年を選んで、
「どうだね?この私にたった一言、”地球をあなたにあげます”と言ってくれないかね」と語りかける。
友好的な口調で話しながら、一方でバルタン星人、ザラブ星人、ケムー人を巨大化させてみせ、
「みんな私の命令で地球を攻撃することができる」と有無を言わせぬ態度で脅してくるのである。
腕力には自信があるので実力行使も辞さないが、大人しく従うなら穏便に奴隷にする、と言った態度である。
軍事力を使う直接侵略だけでなく、それ以外の方法による間接侵略である。間接侵略の要諦は、心を支配してしまうことだ。
メフィラス星人は人間の心に忍び寄った。しかし、地球人は撥ねつけた。間接侵略されていなかったからだ。この時は。
・戦時国際法では「疑わしきは殺せ」が鉄則である。なぜなら、そうしなければ自分が殺され、祖国が滅ぼされるかもしれないからだ。
・現実の国際政治は「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」そのものである。強力な兵器には、それを上回る強力な兵器で対抗するしかないのだ。
・子供達を奪い取り、子供達さえいなくなれば、人類の未来を奪ったことになる。子供を奪うという手段で、人類の未来を奪う作戦だ。
迂遠なようでいて、人々の価値観そのものを支配した者が、真の支配者なのである。
・戦争とは、相手に我が意思を強要するために行う力の行使である。
・一度でも失われた戦う心は取り戻せない。だから武器が強くなっても、軍隊が強くなることはない。
・人間の思考―哲学は審美眼に行きつく。何を真善美で偽醜悪とするのかの根源は、そこに価値を見出すか、
そこにある灯をこれからも守り続けることが美しいと感じるか否かの感性でしかありえない。
・巨大な力に押しつぶされそうな時こそ、神話に立ち戻り、この守るべき価値とは何なのかを見つめ直すことこそ、何を成すべきかを思い出せるのではないだろうか。

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2022年11月18日

Posted by ブクログ

ウルトラマンはゼットしか知らないので、買ってはみたものの、正直「失敗したなあ…」と考えてたんだけど、読み始めてみると、丁寧な説明が面白く、飽きることなく読んでしまった。
時代とともに変わるウルトラマン像と、ストーリーにこめられたメッセージを読み解ける本だと思いました。

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2022年03月29日

Posted by ブクログ

「ウェストファフリア体制」「ウッドーウィルソン」に続く三部作完結って煽ってるけど、ちゃう気がする。
どう見ても、それ枕にした、ウルトラシリーズの解説。
むっちゃ面白い。国防という点で。科学特捜隊から、ウルトラ警備隊、MAT、からZATまで見事に社会を反映しとったんや。
シナリオも、左から右まで、大人が真面目に作ってきてたのがすんごいわかる。

1から見直したいなあ。
バンダイチャンネルの有料しかないのか。

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2022年01月14日

Posted by ブクログ

全体の9割がウルトラマンシリーズの流れの解説。子供の頃はただ怪獣を倒すウルトラマン達に注目していて、こんなにも血生臭い話が散りばめられていることにちっとも気づかなかった。今じゃこんなの放映できないだろうな。こんなにもまとめてくれてありがとうございます。

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2022年01月11日

Posted by ブクログ

ウルトラマン、自分が生まれる前の怪獣もの、特撮ものが流行った時期の詳細な解説。マニアックすぎる、けど、そういう時代だったんだなーと痛感。

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2022年11月16日

Posted by ブクログ

<目次>
はじめに  ~過酷な現実にこそ神話を
第1章  円谷英二と『ゴジラ』と『ウルトラQ』~神話の創造
第2章  ウルトラマン~異端を受け容れる正統
第3章  ウルトラセブン~軍神の記憶
第4章  帰ってきたウルトラマン~なぜ日本は敗戦国のままなのか
第5章  ウルトラマンエース~史上最も成功した「失敗作」
第6章  ウルトラマンタロウ~本格派だが異色作
第7章  ウルトラマンレオ~たった一人でもお前を欲している間は死ねない
第8章  ウルトラマン80~日本「特撮」の金字塔
第9章  ウルトラマンメビウス~歴史の完結と新たな神話の創造
終章   なぜウルトラマンは自分の星でもない地球のために戦ってくれたのか

<内容>
ウルトラシリーズを丹念にトレースしながら、企画や脚本、設定などに突っ込みを入れ、当時の政治と絡めながら、その作品を解いていく。なんともこそばゆい気がするのは、そんな風に作品を見ていなかったからか。同じように見てきた大人が、寄ってたかって崩しているようにも見える…。

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2021年12月17日

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