【感想・ネタバレ】郊外の記憶 文学とともに東京の縁を歩くのレビュー

あらすじ

戦後の郊外住宅地の開発は、そこにあった地域生活を大きく変容させ、平板で奥行きがない空間を作り出してきた。一方で、近年では郊外や街の何げない場所に過去の痕跡を探り、その土地の固有性に光を当てる「街歩き」や「聖地巡礼」が注目されてもいる。では、郊外という均質な空間に眠る固有性は、どうすれば掘り起こすことができるのだろうか。

多和田葉子や三浦しをん、北村薫が東京の郊外を舞台に描く小説を読み、その街を実際に訪れ、ありふれた風景のなかを1人でゆっくり歩く。そしてあらためて小説を読み、また街を歩く――。この実践を繰り返すことで、場所・時間・物語の交差点に浮かび上がる「土地の記憶」に光を当てる。

東京の縁を読むことと歩くことを通して、郊外に眠る戦争の残痕や失われた伝統、開発の記憶、人々の生活史をよみがえらせ、「均質な郊外」に別のリアリティーや可能性を浮上させる。

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Posted by ブクログ

歴史から、地形図から、昔の地図から…そういった視線での「町歩き」。アニメや漫画、小説等の「聖地巡礼」もそれに含まれる訳だが、副題の通り文学作品を元に、作品内部の登場する人物の心境、作品自体の解説を行いながら、作品に登場する場所を当てはめていき、その土地の近代からはたまた氷河期までの記憶、著者自身の記憶を巡るのが主な内容である。
ブラタモリよろしく、川を見ると崖を探したり州を探したりしてテンションを上げる私だが、自然的ではなく、文化としての境界や記憶を垣間見る戦後の波に飲まれなかった土地を見るのも面白いなと、特に国立の部分では強く思った。

田舎者的には東京近郊というだけで郊外…?と思うこともあるかもしれないが、人が今集まる土地と近郊だからこその郊外的な役割があって、記憶の多さと埋もれやすさが地方よりも強いのではないかなと。故に面白さがあるのではと。思いました。

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2021年10月10日

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