あらすじ
2003年、大手信託銀行で年金基金や運営のコンサルタントに携わる河野が主人公。金融市場低迷期に大企業の代行返上が始まった。その具体的内容と一般サラリーマンが手にする企業年金への影響はどうなるのか――。金融マーケットに蠢く外資系ヘッジファンドの狡猾なスキームや、年金基金で地道に働く人々の姿が緻密な取材のもとに描かれている。『年金改革』に先駆けた企業年金の内幕小説。
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Posted by ブクログ
2003年、企業年金を運用できなくなった企業年金基金が国に年金運用を返上するという「代行返上」が大量発生するという社会背景をベースに、年金をめぐる闇(のちにこれは、年金記録のエラーということで顕在化した)や、社会の混乱に乗じた金融機関のマネーをめぐる暗闘を描く。
小説とはいえ、ストーリー自体は陳腐。ただ、年金の仕組みや金融機関の裏側が垣間見れるという意味ではビジネス書として読んだほうがよいかも。
Posted by ブクログ
【代行返上】 幸田真音さん
企業の年金は「基礎年金」「厚生年金」「厚生年金基金」
の三つよって成り立っている。
基礎年金は国民年金ともよばれ、すべての国民が対象の
定額支給である事に対し、厚生年金は民間のサラリーマン
を対象とした収入に比例した報酬比例型の年金である。
厚生年金基金は企業の実情に応じ、企業が独自に年金の
上乗せを行っているプラスアルファの部分である。。
コレは企業が母体とは別法人をつくり、基金が自分たち
で掛金の徴収や運用、そして年金の給付も行っている。
そしてこの基金は厚生年金の一部を、国に代わり運用の
代行もしている。
厚生年金の一部代行は企業にとってもメリットがあるのだ。
国に任せておくよりも自分たちで運用し、運用益を
あげれば、それは企業の利益となるからだ。
しかし、それは日本が右肩上がりの成長を続けてこそ
享受できるメリットでもあった。
超低金利の今の時代、資産の運用は簡単ではない。
企業にはこの基金が負担に変わってきた。
新規雇用が限られて若年層が減り、その割には人員整理
にも踏み切れない崩れた雇用体系が年金の支給額を
支えきれないという事情もある。
2002年に施行された確定給付型年金方で、その代行の
返上が認められるようになった。
それが「代行返上」だ。
五稜信託銀行年金運用部企画課課長の河野俊輔は年金
改革と代行返上についての問題点を常々言い続けてきた。
彼は講演のつど、国民の年金への無関心にいつも
歯噛みをする思いだった。
代行返上で何がどう変わるのか?
基金は資産運用が上手くいかない場合は積立不足が
生じる。積立不足は企業が穴埋めをするコトになる。
すなわち、企業の収益を基金が喰うコトになるのだ。
企業は基金の解散に際し、代行部分を国に移行する
コトになる。この移行を国は「現金で」と言っている
のだ。
現金で移行するためには、今まで運用してきた株や
債権を売らねばならない。
大企業の持つ基金の資産たるやハンパな額ではない。
その株や債権が一度に市場に出回るのだ。
市場の大暴落は火を見るより明らかだ。
大暴落は企業にとっては痛手だが、ファンドに
とっては大チャンスなのだ。
ファンドは、この暴落を煽り、更なる儲けを
得ようとする。
河野はファンドの思惑が読めるので、事前に警告
を発しているのだが、今ひとつ企業にも伝わらない。
そんな時、株価操作まがいの怪しい取引を行って
高いパフォーマンスをあげている要注意ファンドの
ブレーンに彼の学生時代の親友が居るコトを知った。
河野は学生時代、ある事件がきっかけで彼と仲たが
いをした。そしてそのコトを今でも後悔している
のだった。
☆
代行返上に伴う基金側の調査作業。
過去の、全ての従業員の掛け金の支払い状況を
調べ、国側の資料と照らし合わせていく突合作業。
しかし、国も企業も過去のずさんな管理が災いし、
一向にはかどらない。
今、作業に当たっている基金側の従業員は不運と
しかいいようがない。
しかし、そういうコトって他にも多くあります。
景気の良かった時代、なぁなぁで済ませてきたコト
が多かった。
そのしわ寄せは、本人ではなく、その時、たまたま
その事業に従事した人に降りかかる。
今、国の財政を支えている赤字国債もそうだろうと
思うし、今の東電の問題も、今の社長だけではなく
歴代の社長にも十分責任があると思う。
「逃げ得」や「やり逃げ」みたいなコトには
ならないでいて欲しいな。。