【感想・ネタバレ】カルト村の子守唄のレビュー

あらすじ

自由だった村は、どうして「カルト」化してしまったのか?
村の過渡期を描く、人気シリーズのエピソード0!

親子が離されて別々に暮らし、子供も朝5時半起きで労働をさせられ、布団はふたりで一組、食事は1日2回のみ、すべての物は共有で服もお下がり、男子は丸刈りで女子はショートカット、お金を持っていたら即没収、ビンタ・正座・食事抜きなど体罰は当たり前……。そんな「お金のいらない平和な社会」を目指す「カルト村」での驚愕の日々を描いた人気シリーズの最新作。

今回描かれた時代は、著者が生まれてから小学校に上がるまでの幼少期。このころの村はもっとゆるくて、のちにNGとなる「お酒、タバコ、テレビ、漫画、ゲーム」はすべてOKで、村の外の温泉に行ったり、デパートにクリスマスプレゼントを買いに行ったり、いち早く宇多田ヒカルのCDを手に入れたり……なんて思い出も。
ところがある日突然「新しい世話係さん」が現れて、漫画やゲームは没収され、テレビも禁止になり、髪を短く切られて、両親に会える回数も減っていき……。
のんびりしていた村が、過酷で理不尽なカルト村に変化していく転換期のエピソードを、丁寧な絵と手書き文字で描いた「実録コミックエッセイ」。
両親がなぜ村に入って結婚したのかを、著者自らが探る「カルト村で出会いました。私の両親編」も収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は「カルト村」のシリーズ最終巻として刊行されたものです。
この著者独特の、物腰柔らかなのにこの上なく自我と意志の強さが漂い、淡々としているのに子細で赤裸々な語り口は本書でも健在です。
今回は、カルト村は著者の幼少期は村外の一般社会の文化も自然に共存していたものの、ある時期から子供たちを厳しく管理するタイプの世話役が送り込まれ、外の文化の遮断も急速に進んだという話が語られていました。
ただ、あくまで子供の目線での記憶(詳細な記憶力に驚かされます)に基づいて語られているので、「なぜそうなったのか?」の追究には至っていないのが残念です。
せっかくご両親の入村のきっかけや結婚の経緯なども語られていたので、あの村の運営で、実際にその時期何が起きていたのか? という大人の視点での歴史解説があればもっと良かったのに、という隔靴掻痒な感が否めません。
ただ、そうすると本当に「告発」になってしまい、それは著者の意図する所ではないため、そういう構成にはしていないのだろう、と推測しています。
また、声高に語られていないからこそ、特に関係に問題のない親子を強制的に隔離し、兄弟同士でも共に過ごせず距離を埋められない状況にすることの怖さがひしひしと感じられ、ぞっとしたのも確かです。著者の実父はかろうじて肉親との交流を保ち続けていますが、親族や故郷との関係を破壊し尽くした上で入村した実母はそうではなく、子供世代である著者も未だに正式には親族に受け入れられないというエピソードも然りです。
読後に心にずしりと重いものが残される一冊でした。

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2021年11月13日

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