あらすじ
【日本推理作家協会賞受賞】刑務所の雑居房で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の3人は、出所するや営利誘拐の下調べにかかる。狙うは紀州随一の大富豪、柳川家の当主とし子刀自。身代金も桁違い、破格ずくめの斬新な展開が無上の爽快感を呼ぶ、捧腹絶倒の大誘拐劇。天藤真がストーリーテラーの本領を十全に発揮し、映画化もされた第32回日本推理作家協会賞受賞作。「週刊文春」ミステリーベスト10/20世紀国内部門第1位。
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Posted by ブクログ
刑務所を出た3人組が紀州の大富豪柳川家の当主とし子を誘拐する話。
なんだこれめちゃくちゃ面白い優勝!何がってさ、誘拐された刀自が主導権を握り主犯となってるのが最高すぎる。家との連絡方法や交渉、もうぜーんぶ刀自!黒幕じゃん!って楽しい。身代金5,000万ね、って誘拐犯に言われ私の命はそんなに安くない舐めとるんか100億じゃ!って啖呵切っちゃうのかっこいい!!こちらの普通とか常識とか一切通じやん感じ憧れる。
って感じでまぁとし子刀自がもう大っ好きで次の展開が楽しみすぎてワクワクする。割と昔の小説なんやけど、だからこそ今とは違う方法で成し遂げられるのではないかという高揚感がある。
和歌山全員が助けようと協力するの、田舎ならではで東京やったら無理やったやろうなって良さを再確認した。この件に関わった刀自の子供達や誘拐犯が一皮剥けて成長してるのも良い。大きくなって巣立てよ。
最後のさ、「1人の金使いを作り出すにはどうしたら良いんだろう」って身代金全部使い切れるような奴を作り出すにはってこと??
Posted by ブクログ
文庫版を藤田和日郎先生の表紙に惹かれて購入。
序盤は古い作品ということもあってか何となく読み進め辛い部分があったが、表題の通り誘拐が始まると一転。そのトリックもさることながら、出てくるキャラクター性が面白く一気に読み進めてしまった。誘拐犯ながら人情味あふれる3人組と強かな老人刀自のユーモラスなやり取りはどこか藤田作品に出てきそうな雰囲気も有り、記念カバーが作られたのも納得の人選であった。
Posted by ブクログ
あまりにも今の時代には即さないお話で、説明がまわり口説く飛ばして読んでしまったところもあったが、エンターテイメントとしては面白かった。
映画やドラマとして楽しまれてきたのは非常によくわかる。今の時代に合わせて作っても面白いかもしれない。
Posted by ブクログ
爆問の太田さんがお薦めしていたので読んでみた。
ネタバレになるかわからんけども、一応。
刀自の気持ちがわかるなあ。
国に取られるだけ取られて死んでゆくのには抗えるものなら抗ってみたい。
何か生きた実感とか痕跡とか、そんなものも感じてみたい。
でもそれが出来たのは、刀自の財産や知能や人望があってのことで、自分のような庶民には無理なんだろうな。
まあ、無理と思ってる時点で無理なんでしょうが。
Posted by ブクログ
誘拐ミステリの古典的名作。この作品の最大の魅力は,誘拐事件の被害者でありながら,誘拐事件のブレーン的な立場になる「柳川とし子」(以下「刀自」という。)のキャラクターだろう。刀自は,持山だけで全大阪府の二倍以上,紀州在住の超大富豪。体重が急激に減ったことにショックを受け,死ぬ前に…と始めた山歩きの最中,三人の誘拐犯に遭遇する。この誘拐犯の三人組のキャラクターも見事に描かれている。リーダー格の戸並健二。知能優秀,身体強健と描写されている。過去に刀自と接触したこともある。そして,肉体労働に適していると描かれる秋葉正義と,妹のためにお金が必要な三宅平太
刀自の略取までは,戸並が中心となって計画を立て,実際に略取に成功するのだから,刀自が終盤で語るように並の悪党ではない。この並の悪党でない三人と刀自が実質的に共謀して,100億円の身代金を奪うというストーリーである。
物 語は大きく3つのパートに分かれている。まずは刀自の略取までのパート。それから,テレビの生放送で刀自が,身代金である100億円の作り方を伝えるパート,そして最後の身代金を奪うパートである。
話のテンポはよく,ユーモアあふれる文体で描かれており非常に読みやすい。反面,生放送の祭のトリック(おとりの放送者を奪って放送をするというもの)や,身代金略取のトリック(ヘリコプターの操縦士を利用して,嘘の供述をさせることで略取したタイミングを誤解させるというもの)は,映像にすればもう少し分かりやすいのかもしれないが,正直,文章だと分かりにくかった。
誘拐モノとしては,プロット部分がやや弱い気がする。キャラクターの魅力,文体など総合的な評価は高いが…。評価としては★3か。