あらすじ
長いことテレビ報道の第一線で社会問題に対面しつづけた著者は、現在のコロナウイルスに見舞われた日本人の心理的対応のなかに隠された怖さを見出す。パリ支局長時代に経験したイラク人質事件に見られた日本人の「自己責任」という名の官民あげての暴力的なバッシングは、世界の目からは異常な日本人の心性として目に余るものと見られた。海外でそうした批判や疑問を身近に目撃した著者は、「同調圧力」「自粛警察」などのいまにいたるも変わることのない日本人の精神的な抑圧構造を見抜いている。日本人とは何かを根底から問う警世・警告の書。
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Posted by ブクログ
自己責任の追求のされ方はいくつかの特徴
①追求者が利害関係のない第三者であること
②攻撃する第三者も攻撃をうける当事者も同じ共同体に属すること
③国や世間という共同体としての立場の代弁
④均衡を欠いた感情的で執拗な攻撃
⑤旺盛な正義感、高潔な道徳が透けて見える言説
⑥ジャーナリストやボランティアの公共的役割に対する軽視、蔑視
Posted by ブクログ
日本人の一員であることが恥ずかしいことに思われるような出来事の数々を、改めて思い知らされる。「自己責任」という言葉が多くの人口に膾炙した当時の記憶は残っている。そしてその渦中に置かれた当事者が、後にその当時を振り返って残した言葉の数々も。「世間」という得体のしれない、しかし強力な同調圧力を加えて、言論の自由も、行動の自由も制限する大きな要因となっているのがメディアだろう。謝罪会見大国日本を生み出している元凶となっている。そして最近は、ネットという新たなメディア空間の無法地帯ぶりには恐怖を感じずにはいられない。ファシストとしか呼べないような人々が、ジワジワ賛同者を集める様を、寒々とした現代社会の現象を、暗澹たる思いで手をこまねいて見ているしかない。そんなことを思い知らされる本でした。