【感想・ネタバレ】荘園 墾田永年私財法から応仁の乱までのレビュー

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「荘園」そういえば、どうしてできたのかは習ったけれど、どうしてなくなったのかは習ってなかったなと読んでて思いだした。
それにしても、「荘園」を「小さな地域の自治権を最大に、国歌や地方政府の役割を最小にした場合、何が起きるかという四百年にわたる社会実験」とはよく言ったものである。

結局、細分化された小さな地域単独では対処できない災害(の続発)には、対処できずに、広域化で対処することになった。これが、荘園崩壊につながっていたのかと、要約応えにありつけた。

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2022年10月15日

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専門用語や固有名詞が多くて理解しづらかったが、非常に興味深い内容だった。1000年近く前にこれほどの行政、経済制度が整っていたことに驚いた。
荘園についての専門書と聞くと、すごく狭い範囲のニッチな印象を受けるが、荘園とは中世日本社会そのものと言ってよい。大方の歴史書や教科書が御所や幕府内部の事にしかフォーカスを当てていないが、そちらの方が実は日本社会のごく一部を切り取っただけとも言える。

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2022年10月08日

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奈良時代から延々室町時代まで続く荘園について1冊にまとめた本です。確かに歴史の授業では荘園が何度も出てきましたが、奈良の荘園と平安末期の荘園は違うように見え、室町になると荘園が消えるように見えてましたが、なるほど、その時代の情勢で荘園もいろいろ変質があったのですね。
あとこの本では、時代や荘園の変化の原因として気象環境の影響を見ていることがあり、気象好きとしてはその点も参考になります。

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2022年07月04日

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ネタバレ

記述が厚い。あとがきにもある通り、私にも一行一ページの後ろに何篇の論文があるかと思いをはせるように促すものがありつつ、淡々と解説されていく。新書ってこういうものだよね、と往年の岩波新書を思いながら読んだ。

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2022年01月28日

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荘園の成立(墾田永年私財法)からその解体(応仁の乱後)までの750年余を辿る通史。その変遷をわかりやすく解説するのは至難の業であろうが、本書はその点、非常に明快であった。

とくに院政期における「領域型荘園」の領主権=本家—領家ー在地領主による三階層の支配体制としてとらえて説明し、この「領域型荘園」の成立を在地領主の開発と院政という新たな王権(中央権力)の介入との合作物としてとらえることで鎌倉期における荘園制が安定していった流れが把握しやすくなっていると思う。そこでは西欧の封建制と類似した性格を見て取ることができるのと同時に、中央権力との関わりにおける日本型の特徴も見いだすことができる。

以上が第5章まで。第6章は鎌倉期に安定する荘園の農業生産力の発展、荘園における消費の様子、流通と貨幣経済の発展、人びとの生活(主として信仰)との関わりなどが多面的に描写されている。そして、第7章以降が鎌倉後期における荘園の変容から最後の解体までについて叙述されている。飢饉などの危機について最新の気候歴史学の成果も取り入れつつ叙述されているのは、本書の大きな特徴のひとつである。

鎌倉後期から職の重層的な構造が崩れ一円化が進み、一円領では次第に領主から任命された名主に代わって土豪という独自の支配身分が成立、また荘園のなかの「村」が惣村として集合して領主からの自立をはたしていく。さらに国人領主は国衆へと変化、最後にはその国衆を束ねる戦国大名が成立していく。荘園の最終的な解体である。

日本の農村風景は荘園によってその原型が形成された。今でもそうした歴史的景観を味わえる箇所もある。本書の最後ではそうした場所の紹介もされているので、機会を見つけて訪ねてみたい。

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2022年01月18日

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日本中世史を本当に理解するには荘園の変遷を正しく把握することが不可欠。本書は歴史に興味を持っている一般人に最適。説明も丁寧で分かりやすい。引用している古文も現代語訳のみなので読みつかえることもなくスラスラ読める。良い本に出会えて良かった。

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2021年12月26日

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内藤湖南が応仁の乱以前は現代と連続してない的なことを言ったという話があるが、現代とは非連続かもしれないが奈良時代から応仁の乱までの荘園の視点からの流れ方はやはりこの国のありようだと思った。

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2021年12月03日

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荘園に関するコンパクトな通史ではありますが、過去の気温や降水量の推定に関する近年の研究を引きながら荘園の成立と発展を自然条件と関連づけて考察したり、院政期に成立した「領域型荘園」を荘園史の1つのターニングポイントとして位置づけたりと、従来とは異なる新たな視点も提供してくれます。また、荘園を切り口とした徴税の仕組みやそれを巡る様々な人々の人間模様が史料に基づいて具体的に語られており、堅いテーマでも読んでいて飽きないです。

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2021年12月02日

購入済み

歴史小説の理解が進む

情報量の多さに驚いています。墾田永年私財法の設立時の状況から、富士の噴火や地震に加えて、最新の気象歴史学に基づいた降水量の変化による荘園の変化など、知らなかったことが多く、鎌倉、室町辺りの歴史小説のファンにも必読の書籍ではないかと思います。

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2022年01月20日

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かつて、教科書で習ってもなかなか理解ができなかった荘園とは何か、そして、地頭と荘園領主の関係など。目から鱗、とてもクリアに理解できた。なぜ今までこのような本がなかったのかと思うくらい画期的な書。何度も読み返したい。

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2021年11月27日

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これは全ての日本史教員が読むべきだ。教科書ではいまいちわかりづらい寄進地型荘園に対する理解が格段に深まる。荘園のことだけでなく、中世の流通や農業技術、気候変動などにも触れていてポイントが高い。素晴らしい本に出会えた。感謝。

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2021年11月25日

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約750年に渡る荘園の歴史を様々な実例から描き出す内容。今までの断片的な理解を補ってくれるもので、特に中世の社会理解について大きな助けになってくれたと思う。古気候学の知見を元にしたアプローチも興味深い。

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2021年10月12日

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ネタバレ

書籍で漠然・もやもやとしていた知識が得られた時って気分イイデスよね(´・ω・`)
本書は時代に合わせて、同じ「荘園」でも、内容が違う
この当たり前の事を丁寧・具体的に語り続けていて、幾度か「荘園を理解したい」ことに挫折したアタクシへ光明をみせてくれた(理解したとは言ってない)

また、時代背景を短文で説明されており、小気味よく、なんだか賢くなった気がする(なってないケド)
忘れないうちにφ(. . )メモメモ

一般にイメージする荘園が拡大した時代は院政期で、領域型荘園と呼ぶが、支配者も御願寺造営(建築ブーム)のために使える財源を増やさねばならないという事情があったからである(仕方ないね・・・とは言ってない)

(1)まずは、これを理解していきたい
(2)それまでの荘園は、律令制度維持のため変容していく過程で生まれたものであるし、
(3)領域型荘園も武家の時代を迎え国家体制が転換する中で形を変えていった
(4)更に荘園の解体していく必然的な理由という段階を分けて考えることにしよう

最後に気候変動と農業の関係を書く時代毎に記述されているのも本書の特徴であるが、頭が悪いのか、グラフの読み方が理解できないためか、記事とグラフの相関関係がピッタリくるものではなかったのは自分への大きな宿題として残る

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2021年10月02日

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荘園は中央集権的な公務員的発想では否定的評価になるが、むしろ荘園には民間感覚があり、それは発展の原動力になるものであった。「荘園は国の役人から干渉を受けることなく自由に経営でき、その成果を子孫に伝えることができたので、農地開発や農業経営の進化が促された」(「はじめに」)。

九世紀後半には農村が荒廃した。税を納められずに村落から逃亡し、戸籍から離れる農民が続出した。その中でも貧しい農民を使役して富裕になった農民が現れた。彼らは「力田の輩」と呼ばれた。

菅原道真は冤罪で左遷されて亡くなり、怨霊になったと恐れられ、祀られた。この怨霊の鎮魂や慰霊は仏教主導で行われていた。北野天満宮は朝日寺(東向観音寺)の神宮寺であり、僧侶が別当職に任命されていた。「祭神も、天満大菩薩として観音菩薩の化身とされた」(158頁以下)。

畠山重忠の領地があった埼玉県さいたま市桜区道場では建久年間に土の中から観音像が出た。これを過去に大伽藍があった時の本尊だったとして守護仏とし、持仏堂(道場)を建てた。これが金剛寺になる。金剛寺の境内には天満宮もあった。これが道場天満宮になった。

鎌倉の最大の宗教施設の鶴岡八幡宮も寺であり、鶴岡八幡宮寺と称された。八幡神は八幡大菩薩となり、仏であった。源頼家の息子で出家した公暁が鶴岡八幡宮寺別当に就任したように僧侶が運営していた。これらは明治時代の神仏分離後に純粋な神社になった。

天満宮は播磨国矢野荘にも存在した。矢野荘では領家と地頭が対立して、下地中分が行われた。下地中分は荘園を領家方と地頭方に分けることである。天満宮は地頭方に含まれたが、天満宮は双方の領域から侵攻を集めた。天満宮で行われる流鏑馬の費用は領家方が負担した。

「下地中分はあくまで年貢・公事の収取や検断などの支配の面に限られ、荘民の生活には大きな影響はなかったようだ」(171頁)。領域として一体という感覚が持ち続けられたことは、地頭による荘園侵略は下地中分でも終わらず、続いていっただろう。

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2023年04月13日

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 独特な土地制度である荘園に関してよくわかる。難読人名・地名や専門用語に関して、初出の時だけでなく、章改めた時などにも、ふりがなが振られていて、著者の配慮に好感が持てる。終章で全体の流れの振り返りがあり、大枠は確認できるが、やはり素人には難しい点も多く、再読は必須である。

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2023年01月19日

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日本の荘園成立から崩壊までを辿った概説書。日本史の教科書に載っていた専門用語が多く出てきて、懐かしさを感じるとともに意味をかなり忘れてしまっていた。
それでも史料本文を引用せず平易に解説しているので分かりやすい。

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2022年12月07日

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荘園は墾田永年私財法から750年続いた!!
墾田永年私財法、租庸調、守護地頭、摂関政治、院政…訳も分からず覚えてた。

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2022年06月15日

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50才以上男性に読まれているらしい。墾田永年私財法により私有地が認められると天皇摂政神社仏閣地元豪族の寡占が進み国の半分が荘園に頼朝率いる鎌倉幕府は朝廷を無視して地頭を任命し全国制覇も気候変動による飢饉災害多発、応仁の乱後地元武士の侵略村の発達により消滅。どんな制度も必ず劣化するらしい

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2022年04月20日

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 荘園史の概説書。教科書的知識の詳述に留まらず、気候的背景を含めて多方面から解説する。日本史学習の難点となる荘園制のバイブルになりうる存在。

「終わりに」に全てがまとまっているのでそこを読めばよい...
古代荘園→初期荘園→免田型荘園→ 領域型荘園・知行国制→地頭制鼎立→職の一円化→守護への納入請負→地縁強化、惣村形成→荘園解体
の壮大な流れを追えるのはなかなか爽快。自分の中では荘園制とヤマトがまだ理解不十分だったが、その一つが潰せた形になって満足。
2022/3

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2022年03月23日

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日本の中世史において、欠かせないキーワードとして出てくる「荘園」がメインテーマの本。

私は中学時代に「班田収授法」「墾田永年私財法」を暗記単語として覚えていたくらいで、それ以上の知識は無かった。
ただ、大人になってこの本を読んでみると、如何にこの荘園が政治経済に影響し、引いては日本の歴史を左右したのかを感じた。言い換えれば、「だから中学レベルで班田収授や墾田永年私財法を覚えさせていたのか」をようやく理解した。
とはいえ、内容は難しい。大河ドラマと並行して、理解を深めていきたい分野。

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2022年02月14日

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茶寮が出してる抹茶カフェみたいな一冊。とっつきにくそうな難しい分野が実に分かりやすく著されていて、理解が浅いところは思わずひとりでに読み返してしまう程。そのため、内容を理解するためにうつらうつらしながら行う例の「気の進まない努力」を要することはなかった。

土地所有って分かりやすい強さよね。強いやつは土地を持つし、お金があるやつは土地を持つし、土地があるやつはすごいのよ。だからこそ所有地は後世に引き継がなければという通念に足元を掬われる人って現代はとてつもなく多いですよね。

首都圏住み&両親郊外住みのご長男の皆さん、どうします?中古建売ってことで競売出す訳にもいかないし、賃貸収入得ようとしても飢饉おきたら横領されちゃうだろうし、困ったもんですよね。こりゃもう菩提寺に寄進するしかねぇな

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2021年12月11日

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古代律令制の初期荘園から院政期に始まる領域型荘園を経て、応仁の乱以降の国人領主の誕生、農村の集村化に至るまで、長い期間の土地制度史をよく纏めたものだ、と感嘆。
日本の歴史は、一つの見方として、土地を誰が管理するかの歴史であるのだな。

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2021年10月06日

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荘園の成り立ちから解体までを歴史や気候変動を含めてわかり易く書いてあった。特に支配する特権階級の貴族、寺社や武士と農民らの関係も興味深かった。

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2023年09月01日

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荘園を巡る駆け引きは、今にも通用する。本旨から外れるが、869年の貞観地震が2011年の東日本大震災のもとと言われている中で、878年に関東地方で地震、887年に南海トラフ地震と推定されている仁和地震が発生した点に触れられているのが気になる。

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2021年11月28日

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 日本史というと、荘園制研究が花形という時代がかつてあったものだが、マルクス主義的な捉え方に馴染めず敬して遠ざけていたので、良く理解できないままに来てしまった。
 しかし経済のことを考えると、荘園の問題は避けて通れない。荘園とは実際どのようなものだったのか、国司や公領との関係、本家・領家と現地との関係はどのようなものだったのか。武家の擡頭によってどのような変化があったのか。
 こうした様々な問題に対して、本書は荘園の実態を明らかにしてくれる。いくつかの専門用語が理解できないと、仕組みが分からないところもあるが、そこは正に勉強だ。
 古代から中世にかけての荘園の変容に、当時の気候状況が影響しているのではないかとする新たな研究動向も興味深かった。当時であれば、今以上に気温や降水量
、自然災害の影響をダイレクトに受けたであろうし。

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2021年09月20日

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