【感想・ネタバレ】中世イタリアの都市と商人のレビュー

あらすじ

海賊さながらに武装する商人、巨大化するガレー船、移住する地主と小作人、都市・農村行政を支える公証人……。
古文書館に眠る証書や帳簿、登記簿などの史料を丹念に掘り起こし、中世イタリア都市社会・地中海世界を生き生きと再構成。のちの中世イタリア史研究の芽はすべてここにあるとも形容される、稀代の中世社会史学者の到達点。
(解説:池上俊一)

* * *

[本書の内容]
1 地中海商業と海賊
2 ジェノヴァ・キオス・イングランド
3 地中海貿易とガレー船
4 イタリア中世都市の「市民」と「非市民」
5 中世末期イタリアにおける職人・労働者の移動
6 中世末期イタリアにおける公証人の活動
7 イタリア中世都市論再考
8 イタリア中世都市論再考――清水廣一郎氏遺稿
解説 かけがえのない細部を慈しむ 池上俊一

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Posted by ブクログ

ネタバレ

地中海貿易は、各地の商人が頻繁に商売先の地へ赴き売買をしていると思っていたが、そこには使用する船の形や力関係が存在することを知った。
船に乗る商人たちは物資が奪われぬよう、また力関係によって相手との格差が生まれる話の箇所がとても興味深かった。
海賊にもまた略奪のイメージを持っていたが、実際は商人が海賊の一面を持っているというところは意外であった。

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2023年05月31日

Posted by ブクログ

 本書は、著者晩年の研究成果のエッセンスを取りまとめた論考が収められている。「遺稿」と記された学会報告を書き起こした途中稿が最後に収録されており、もう少し著者の文章を読みたかったとの思いを強くする。

 中世イタリアの海上商人と海賊が結び付いたものであったこと、ガレー船の形態と大型化の歴史、イタリア中世都市の有り様と市民・非市民の関係、職人や労働者の移動状況、文書から見える公証人の活動や役割等が論じられる。
 最後に、都市にまつわる研究史、研究状況の現在が語られる。北ヨーロッパ都市に対する南ヨーロッパ都市、都市と農村の関係、こうした点について著者ならではの整理、分析がなされている。

 小著ではあるが、興味深い視点、論点がたくさん含まれている好著だと思う。

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2021年11月01日

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