【感想・ネタバレ】中国共産党帝国とウイグルのレビュー

あらすじ

「中国夢」「一帯一路」のスローガンの下、習近平体制以降ウルトラ・ナショナリズムに傾斜する中華人民共和国。急速な経済発展の陰では、ウイグル人をはじめとした異民族に対する弾圧が強化されていた。中国共産党はなぜ異民族弾圧、自国民監視を徹底し、さらに香港・台湾支配を目指すのか? そもそも中国共産党は法的根拠のない、憲法よりも上位の任意団体にすぎない。その共産党がなぜこれほど力を持つのか? 本書はウイグル問題を切り口に、異形の帝国の本質とリスクを社会学者とイスラーム学者が縦横に解析する。日本はこの「帝国」にどう対するべきか?
◆主なトピック◆◎ウイグルの惨状はどう報じられている?◎問題だらけのイスラーム世界/◎これは宗教対立ではない◎犠牲になったモンゴル、チベット……◎帝国は多様性を包括する◎中国共産党は国家機関でない◎文化大革命から改革開放へ◎一党支配はまだ必要なのか◎一党支配とナショナリズム◎伝統と西洋のキメラ◎膨らむ中華イデオロギー◎宗教としてのナショナリズム◎米バイデン政権は対決を堅持する◎在外華人のネットワーク◎「一帯一路」は何を目指す◎上海協力機構の手の内◎二者択一を迫られる日本

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Posted by ブクログ

俺に何ができるのかは、とどのつまり俺は如何にして生き延びたいのかでもある。自分のための利他である。でもまぁ…それしかないと今は思っている。
碩学と言える橋爪先生の鋭く深い(無意識にまで踏み込む)中国共産党やアメリカの現状の分析とともに中田先生のイスラームから見た世界という視点が加わることで真にグローバルな世界観が得られる。
アナーキストを自称する俺としては途方もなく為になった。今の現状に不服や不満のある異分子であるアナーキストの卵たちに是非も読んでもらいたい!特に中田先生のあとがき…

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2021年11月17日

Posted by ブクログ

覚えておきたいこと。日本語はウラル・アルタイ語族でトルコと言語が同系統。
深い影響を知らないところで大陸からうけているそのことを、大陸をもう少し身近に感じて、同胞という感覚を持って問題を考えていただければと思っている〔橋爪)
日本も韓国もトルコと同じ連なりにあり繋がっていく。〔中田)

中田さんの、おわりに、のところで
カリフが納めるダール・アル=イスラーム イスラーム圏にムスリムは住むべきである。という下りが面白くて少し目から鱗である。その文章の最後は、
ウイグルが移住すべきダール・アル=イスラームはどこにも存在しないのである。となっている。

モンゴル人もチベット人もウイグル人も全て中華民族という雑な整理をして、歴史上の数々の帝国のように包摂、多様性包括という統治ではなく、多民族、漢民族以外の多様な人々の同化、人の中身を入れ替えるというやり方、という論説は実際の今の習近平体制について合理的な説明と思われる。
突き詰めれば、そういうことをやらなければ、共産党不要論、共産党は国家機関ではない単なる任意団体という公共性のなさ、そのよるべなさからの統治システムというのも興味深い。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

知の巨人たちによる対談。中国共産党"帝国"の成り立ちやその性格、そして周辺との関係性がよくわかる。
どうしても西洋的な価値観で考えてしまう我々日本人にとって新鮮でありつつ、分解すれば理解できる中華の思想。それは東的(共産主義的)なものもあれば、広く東アジア的価値観も通底しており、宗教・イデオロギーの対立で浮き彫りになるものもある。
終盤で説明されていた近代の日本の動きも、長く東アジア中国文化圏で行われていた征服王朝の概念で整理すると納得がいった。
そして後書きが非常に濃厚で、面白かった。

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2023年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中国人を妻に持つ中国通の社会学者・橋爪大三郎と、イスラム教に入信したイスラム学者・中田考による、ウイグル問題を端緒とした中国共産党体制をめぐる対談。

中田氏がカリフ制復興を提唱していること、ヨーロッパ・キリスト教に端を発する価値観やアメリカに対して(歴史的経緯を踏まえたうえで)批判的なのが印象的(特に「あとがき」で爆発している)。


以下、印象に残った点。

なぜイスラム諸国がウイグル問題に介入しないのかというのは、イスラム諸国同士で対立していてまとまることができないから。トルコはアメリカやEUとの関係が悪化し、経済状況も厳しくなって、中国への依存が強まっている。そして、現在のムスリムはイスラムの教えから逸脱している。また、ムスリム世界ではパレスチナ問題ほど関心を引かないとも。
(自分は今まで思い至らなかったが、ムスリムは横のつながりが強いことを考えると介入しても不思議ではない)

イスラム学者から見ると、マルクス・レーニン主義もアメリカの自由主義も、どちらも広い意味でヨーロッパ・キリスト教の思想であるというふうに見える。

中国共産党の目的は抹殺でなく思想改造である。新疆ウイグルがウイグル人の土地で、ウイグル人が中国人だから、新疆ウイグルが中国であるという主張を正当化するために絶滅することはせず、生かしたまま言語・思想・信仰を抜き取る同化政策を採っている。このようなプロジェクトは内モンゴルでも並行して行われている。このプロジェクトは台湾の解放でピリオドを打つ。

中田氏は、多民族・多宗教が共存し、仁政・徳治による本来の中華帝国に中国を戻すことを解決策として挙げている。

「ここが肝心なのですが、この国家安全維持法がうまく施行されているということは、共産党の一党支配が正当であることの証明に成功していないということなのです。成功しているなら、香港もウイグルも、弾圧する必要がない。論争すればいいわけだから。論争しないで弾圧しているということは、その正当性に問題があるということ。それを中国共産党自身が自覚しているという意味です。」(橋爪 p.102)

改革開放以後、中国共産党は経済成長を自身の正当性の根拠にしてきたが、成長を続けるのが難しくなるとその正当性が揺らいでしまう。そこで中国共産党は、漢民族に各少数民族も含めた「中華民族」というナショナリズムを創り出し、その根拠に加えようとしている。(共産主義は普遍主義なので、ナショナリズムとは真逆)

「政府のほかに中国共産党がある。そして中国共産党が政府を指導している。どこにその根拠があるのか。階級闘争も革命もないのに、なぜ中国共産党が存在するのか。ちゃんと答えられないからこそ、共産党は腕ずくで、文句あるかと脅すしかないのですね。それが国家安全維持法の正体です。」(橋爪 p.141)

アメリカやヨーロッパ諸国が自分たちの都合で人権概念を第三世界に問答無用で力ずくで押し付けることは、ある意味では自分たちだけが真理を独占しているので独裁が許されると考える中国共産党と同じであり、人権問題で中国を攻撃することに疑問を呈する中田氏。それに対して橋爪氏は、あくまでも国際社会のルールとして人権概念以外に有効な方法はなく、国際社会が団結して中国と対峙すべきだと考える。

「本来、中国文明が非常に優れていたのに、世界の国々はどこもそう思ってくれていない。つまり、この偉大な国に、それ相応の尊敬が与えられていないと思っている。そしてこの状態を、これは相手が悪いんだ、自分は悪くないんだと思い続けることによって、非常に尊大なプライドが形成されてくるのです。それを他者に理解させる唯一の方法は、中国が世界でいちばんだということをみんなが認めること。それが『中国の夢』だと思う。」(橋爪 p.205)

日本にはまともな中国研究機関はおろか、アメリカの研究機関すらない。まず日本はアメリカ研究、中国研究を早急に始めるべき。

香港、チベット、内モンゴル、新疆ウイグルについては、具体的にとれる行動は限られている。まだ選択肢が多い台湾を守ることで、それらの地域によい影響があるかもしれない。

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2022年09月21日

Posted by ブクログ

社会学者の橋爪大三郎とイスラム学者の中田考の対談。
共産党支配は実は科挙・官僚政治の相似形であるとか、共産党支配の正統性担保のために中華民族を作り出したら今度は非漢民族を中華民族化しなくてはいけなくなってチベット・東トルキスタン・内モンゴルなどなどで民族浄化せざるを得ないとか、なるほどと腑に落ちる分析であった。
著者はどちらも学術の泰斗であり世俗の嫌中・媚中などは超絶した方々と見受けたが、今の共産党の政策は中国的伝統に照らしてさえ異端ないしは畸形であり危ういと見ている。中国の良いところをたくさん知り愛する方々から見てさえ、である。
現代中国情勢に興味のある方なら読むべき本。

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2022年01月02日

Posted by ブクログ

<目次>
はじめに
第1章中国新疆でのウイグル人弾圧
第2章中国共産党のウイグル人大弾圧
第3章中国的ナショナリズムとは何なのか
第4章専制君主、習近平
第5章中国とどう向きあうか
第6章日本に何ができるのか
おわりに

もっとこの本は、宣伝をして売るべきであろう。
ウイグル問題は、単に園田家の問題ではなくて
歴史観、地政学、政治、経済、米中、日中、イスラム、
世界はどう中国を見ているのかなど、全部が絡む。
お互いに対応を間違えれば、ドミノ式に全部が倒れて
しまう。

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2021年10月24日

Posted by ブクログ

中国共産党とはなんぞや。
新疆ウイグル自治区では何が起こっているのか。
さらに、ここに関わる国々の、歴史や現状、関係性、価値観、思想など。
対談形式で書かれているので極端に難しくはなく、そういうことか、と知ることが出来ました。

が。
この対談が行われたのは2021年の初夏。
そこから4年。この間に
ロシア対ウクライナ、日本の元首相の急逝、中東地域のあれこれ、アメリカの政権交代など、中国のみならず世界はさらに、ややこしい様相を呈しています。

日本の内政への選択が迫ってきていますが、近視眼にとどまらず大局を見て考えたいと思いました。

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2025年07月12日

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