感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
歴史小説のお手本。
もう何度も読んだのに、やっぱり手元に持っていたくて、電子書籍にて購入しました。
一応大河ドラマの原作扱いに成っていますが、余りそこには拘らなくて良いかと思います。
自分の武田好きは、中井貴一さんの方の『武田信玄』から始まっているのですが、ドラマ先行で原作を読んだせいか、新田次郎と云う作家の感性とはちょっと合わない部分を感じました。
その後の『武田勝頼』も読みました。
「つまらない」「嫌い」というのではなく、「合わないなぁ」という感じです。
と云う訳で本書は、初め殆ど期待せずに読んだのですが、この文量でこの物語の芳醇さは何処から出てくるのか、本当に唸らされました。
決して(お話の)視界が狭い訳でもなく、キチンと目配せの利いた人物の扱い方をしているし、
それでいて合戦シーンみちゃんと書き込まれています。川中島の「風」さえ感じられたと言っては褒め過ぎかなw。
こういう「手練れ」の作品に出会ったのは、その当時殆んど無かったので、一読して驚きました。由布姫と勘助の関係も、変にベタベタしていないところが素晴らしい。寧ろ大河ドラマの内野聖陽さんの方が力みかえって演じられていたので、原作の良さが活かされていない感が有りました。
とにかく武田好きの方には、絶対に読んでほしい名作だと思います。
Posted by ブクログ
このような生き様、死に様があるのだ。それに比し我が人生の平々凡々たる事よ。これも幸せの内。勘助が散ったのは今の私より4歳も上だ。ほんじゃも少しシャキッとしてみるか!「おもしろい」で片づけられると小説の品が下がるとか言われるそうだが、おもしろかった
Posted by ブクログ
武田信玄の軍師だったと言われる山本勘助が、武田家に仕えて川中島の合戦において討死するまでがまとめられた作品です。
信玄、諏訪の姫、勝頼にほとんど恋をして、彼らのために生き続けた勘助。老人ながら奮闘したのに、上杉謙信を倒すまで生きてられなかったのが悔やまれますね。
最期を悟った勘助が上杉勢との戦いに臨む前から描写にただならぬ緊張感がありました。啄木鳥戦法を見破られ負い目を感じるも、死に際に高坂や馬場が駆けつけてくる希望で終わる感じがよかったです。
Posted by ブクログ
山本勘助の物語。
300ページほどの本だったので数日で読めました。
本書では軍師として描かれています。
間者より軍師の方がピタッときますね。
今川家で士官が叶わないところから、武田家で召し抱えられ、軍師となり川中島の戦いで死去するところまでが描かれています。
物語の導入が上手かったです。
青木大膳という浪人者を最初描いておいて、少ししてから勘助を登場させるところが上手く話に引き込まれました。
信玄との関係性の他に由布姫(諏訪御料人)と勝頼に忠誠を誓うところも話の柱となっていますね。
信玄は於琴姫も妾としたので、勘助は一度於琴姫の命を奪おうとしたりもします。
軍師としての活躍も十分描かれており、評価の高い本であるのがわかりました。
Posted by ブクログ
本当は五つ星だが、井上靖の不運がある。『甲陽軍鑑』という江戸時代の軍記物などを参考にしたため、間違いがある。
間違い1.登場人物の戦死する順番
『風林火山』と『甲陽軍鑑』
甘利虎泰と横田高松が戦死→板垣信方が戦死。
史実及び2007年のNHK大河ドラマ『風林火山』
甘利虎泰と板垣信方が戦死→横田高松が戦死(横田はドラマには登場せず)。井上靖原作の間違いをドラマでは修正していた。
間違い2.上杉謙信・山形昌景・高坂弾正の名前
山本勘助が戦死した時は、上杉政虎・飯富昌景と名乗っていた。改名するのはもっと後。これは大河ドラマでは修正されていた。高坂(香坂)弾正は一時的な名前で本名は春日虎綱。
本の感想
山本勘助は「武田信玄の軍師」とされるが、伝説上の人物。ただし、武田家には「山本某」という家臣はいたし、墓もある。
井上靖の山本菅助は人間嫌いのくせに武田信玄と側室の諏訪御料人(由布姫)、二人の息子・勝頼を愛する孤独な老人。大河ドラマで内野聖陽が演じた山本勘助よりも陰気な性格だが、人間臭い。大河ドラマで修正された間違いは研究が進んだ結果であり、井上靖の責任ではない。
史実は研究が進めば、また変わるもの。「軍師・山本菅助」を一読する価値はあると思う。新田次郎は小説『武田信玄』で「スパイ・山本菅助」にしており、読み比べるのも面白い。