あらすじ
道具や手法ではない。工夫や忍耐など、単なる道筋に過ぎない。人がものを作るときの最も大きなハードルとは、それを作る決心をすることだ――小説執筆も物作りの一つと語る著者が、その発想法を明らかにする。ソフトをハードに語るエッセィ集。
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Posted by ブクログ
『日経パソコン』という雑誌に掲載されていたエッセイを書籍にしたもの。道具というテーマで1枚の写真と共に森さんの思考が言語化されたもので、凡人にない発想を垣間見ることができる素敵な本。
私の印象に残ったものをいくつか紹介すると、、
タイトル:測らない計ります図る量るとき謀れば諮ろう
では、天秤について語っていいます。その中の一節を抜粋する。
「さらに、天秤を見て感じるのは、バランスがとれている平衡状態が、いかに不安定なもの、奇跡的な条件か、ということである。」
バランスが取れている状態から不安定を感じ取る感性に驚く。
タイトル:いろいろなものが回っていた時代、それが20世紀
「人間の歴史、文明は、とにかく回転によって作られてきた。それは、コロによって重いものを運んだときに始まっただろう。」
技術、工学のツボをとらえた視点の鋭さに唸った。
風車、轆轤(ろくろ)、ドリル、扇風機、洗濯機、タイヤ、モーター等あげて、私たちにこれまでの文明を振り返ってもらい、これからの世界に想いを馳せる。
「つまり、回るものは、今や減少する方向にあるようだ。「頭の回転が速い」などという表現も、じきに死語になりそうな気がする。」
ユニークな視点から繰り出される発想、アイデアへといたる思考の歩みを見ているような気分になる。表紙の「一匹の犬の目の前に続く道の写真」が本書の全てを言い当てているように感じた。
Posted by ブクログ
今作は著者のエッセイである故に、彼の環境や考え方、物事(この場合は道具)に対する捉え方が1ページごとに記されていて、且つその都度写真もカラーで添付してあるため、読めば読むほど面白い。解説者(平岡幸三)も感動したように、森博嗣の言葉は道具(ツール)の説明から話がより深奥に変転していき、時に称賛、時に皮肉らしく人間の道具や物事に対する姿勢について楽しんでいる。この本を読むと思わず「ふふっほんとうになあ」と知的楽しさに駆られることだろう。
Posted by ブクログ
文庫本にて再読。しかし、こうも忘れるものかというくらいに新鮮に読みました。感覚としては氏の講演会か。とにかく、きちんと考えて、きちんと見よう、と。
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森博嗣の小説って実は読んだコト無くて名前もそんなに知らなかったんだけど、本書はその作家の随筆集。
タイトルの道具とは文字通り道具であり、『森博嗣のTOOL BOX』からの改題。
パソコンだとか電卓だとかその他工業用の道具について森さんの持ち物を紹介しつつ思い出話ししてる本
割と興味が持てた
文庫なのに定価が千円と高いのはカラー写真がばんばん使われているから
Posted by ブクログ
森博嗣の座右の銘「工作の極意は固定にある」。この一冊を集約するようなお言葉…ぷぷ。自分の趣味に存分にお金を投じられる程稼いだ彼は幸せだな〜。そして”あえて奥様と敬称を使う”肩身の狭い感じがもう可愛い。
Posted by ブクログ
道具とは何か?
道具を変えることで、自分が変わることがある。
デザインについて考えることで、モノへの認識が変わることがある。
文系の私には斬新な考え方がたくさん。同じものを見ても、こうも違う視点があるとは。
森さんという人を知るにもいいコラム集。
Posted by ブクログ
日経パソコンに連載のエッセイ
。所有している道具の写真とともに。
写真が、懐かしいものから珍しいものまでわくわくする。
電子書籍を購入したが、ダウンロード期間が1年というのが難点。謎。
Posted by ブクログ
デジタル雑誌に連載されたエッセイをまとめたエッセイ集。
道具をテーマにしている。
1章ごとに、著者のMy道具が1つ取り上げられており、また著者の意見も方々なものに向いており、興味深い。
それにしても、自宅のガレージにフライス旋盤まであるとは・・・恐れ入る。
個人的に特に気になったのが鉛筆削りの章。
「僕的には、デザインとアートは正反対に位置する存在」
メーカーは、アートでなくデザインをしている。
「形」ではなく「性能」をまず考え、「素晴らしい性能には、素晴らしい形を」という意気込みとして、製品の形が作られる。したがって、僕たちの目に見えるのは、その意気込みに他ならない。
自分は、デザインな人間なのか、はたまたアートな人間なのか。
Posted by ブクログ
だいたい「モリログアカデミィ」を読んでいれば、事足りるような内容。
しかし、この人は相変わらず着眼点が凄い。解説でも述べられていたが、天秤のくだりは本当に面白い発想だよなあ。
ところで、この本には文章と一緒に、著者の撮影した写真が掲載されているのだが、その対象である小物類を欲しいと思ってしまったのは俺だけでは無いだろう。
粗大ごみを漁りに行きたいと思ってしまった。
Posted by ブクログ
「Tool」をテーマに雑誌に寄せたエッセイをまとめたもの。スカイクロラで描いた世界観は本当に美しく、純粋で、本書はその元となったオリジンを感じる作品だ。理系なんだろうなあ。エンジニアリングにあこがれた少年期と、それを具現化するツールとしてのモノを通じた作品。万力からヤスリ、ロゼッタストーンに至るまで、ツールとコンテンツについて考察されている。「パソコンは作らないの?」と聞かれて、「パソコンで何を作るの?」聞いていただきたいという文章は、ツールを愛し、更にコンテンツに対して夢をはせる筆者の感性が伝わってくる。
文明の進化によって、環境が破壊汚染されていくのではなく、テクノロジーが環境を守っていくという考え方。過去を信奉する論者たちに対してはっきりとNOという姿勢だ。地球にいる人間がなぜ下に落ちないのか?引力だよと答えるなら、引力とは何なのか。大人がごまかして、理解を途中で投げ出していないか?それを教えて何になるのか?宗教に至っては、10センチ浮き上がって何ができるのかと。森博嗣の哲学は、それで何ができるかというコンテンツにある。