あらすじ
日本サッカーが世界の成長スピードに追い付くために
常勝軍団にあるものは何なのか。
世界のサッカーと日本のサッカー、根本的な「違い」とは?
選手を躍動させるための「言葉遣い」とは?
ハーフスペース、偽サイドバックの有効性と大きな罠……
東京五輪、日本代表、若い日本人選手のビッグクラブ移籍。日本サッカーの潮目が変わりはじめた。
なぜ日本サッカーは成長を始めたのか。そこにあるのは「サッカーの原則」を体感した選手たちの増加だ。
しかし、「体感」だけでは成長の勢いは止まる。
本書はそこにある秘密を体系化し実践的なキーワードに落とし込む。
日本サッカー界、屈指の理論家であり、上武大学サッカー部監督の岩政大樹が、「サッカーの原則」「頭の回し方」「言語化と非言語化」をキーワードに、明快に示すその指針。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
図などがあってわかりやすい
例がありとてもわかりやすい
原則についてわかりやすい
地味に否定しているのがおもしろい
インタビューでいろいろな人と話しているのが良いと思った
サッカーに答えがないことがわかった
Posted by ブクログ
ワールドカップをより楽しく見るために読み始めたが、サッカーの見方だけでなく、チームマネジメントの教科書としても素晴らしい。
原則ー判断・能力ー現象
原則はサッカーの「こうなればこうなる」。例「ボールを受けるときに、正面からアプローチを受けない」
原則をもとに、状況が相手の動きに応じて判断し、選手の能力によりそのアクションの成否が決まり、結果としての現象となる。
現象だけを見て結果論で語っても、改善にはつながらない。
強いチームは、原則を知った上で、外してくる。
原則はチーム全体で共有する。スペインでは小学校から練習を通して体で覚えている。
判断は選手の特権。選手を観察し理解し信頼して、ゆだねる。
最終的なプレー時では、ゾーン状態のような無心状態で最高の結果が出る。そのための選択肢、土台を身体化しておく。
サッカーという、ボールの止まらない、正解のない、判断の連続のスポーツにおいて、自立した選手がピッチで思考し対話し、答えを見つけていく必要がある。
言語化の必要な場所とそうでない場所。
強いチームには、監督に哲学、戦術に明確な絵がある。それは言語化されて、深く練られている必要がある。
現場への落とし込みの際は安易な言語化は禁物。必要な言葉を見極めて定義する。シンプルに。
哲学や戦術を伝えるのは、言葉や映像を尽くして同じ絵を再現しようとすることではない。言葉が選手を縛り、自立性を奪う。
オシム監督の「せざるを得ない」練習のオーガナイズ。
言葉を使わず、具体的な練習メニューで選手に自然と浸透させる。
「走れ」とは言われたことない、走らざるを得ない練習を通して、走ることが意識に刷り込まれる。練習のテーマは言われないが、内容から感じ取れるものになっている。
習得の段階によって、「ただ走る」練習から「どう走る」にシフトしていく。よく練られた練習。
岩政監督:重要だと考えるコツを言葉=コンセプトワードを伝え、練習の随所にちりばめて落とし込んでいく。選手のプレーや反応を見て言葉を追加する。(5レーン→相手からずらす→トライアングル、ダイヤモンド)
もう一つ上の段階で、抽象的で漠然としたスローガンを決めておく「Proactive football」。コンセプトワードを体現した結果、出来上がるチームのイメージ。具体的にしないことで、判断、思考、選択の余地を選手たちに残しておく。
Posted by ブクログ
これだけ言語化に長けている岩政さんが、言語化しすぎることの弊害を語っているのは意外だったけれど、そこはすごく合点がいった。欧州で生まれたパワーワード(5レーンや偽SB)を一人歩きさせず、それは効率的にゴールを目指そうとする結果現れる現象であるべきというのはすごく共感。
また、「ロストフの14秒」を例題に、「原則」か「判断」か「能力」かの話はすごく腑に落ちた。たしかにプロのゲーム観てて、「結局これは選手がそうできると判断したんだから解説が後から文句つけてもな」と思うシーンってある。そういうことだったのか。これを理解して仕分けして見ることで事象が正しく見える。これ分かってるだけでもサッカーがまた違った視点で見れそう。
原則は頭に入れて、とりあえず「2つの選択肢持つ」ことからやってみよう。今日から。
Posted by ブクログ
近くのサッカーを観る人、指導する人、プレーする人、全てに配りたいくらいおすすめ。
ヨーロッパのトップレベルのサッカーは面白い。Jリーグでもそれに近い試合を観れるときはあるが、プレミアリーグと較べたら物足りなさを感じる。代表の試合になるとなおさらだ。
この日本サッカーと世界との差ってなんなの?原因は何?どうしたらこの差は縮まるの?という疑問に対して答えてくれるのがこの本だ。
サッカーには相手が「こうしたらこう」という原則があり、それをチーム全体で共有することでチーム全体の絵が生まれる、という大枠はなんとなくわかっていたが、
「じゃあその原則ってどういうもの?」「観る側は何を基準にしてピッチで起きる現象を見ればいいの?」「指導者は選手にどう落とし込むの?」という中身の部分をよくわかっておらず、曖昧だった。そのもやもやしてる部分をどんどん言語化していってくれる岩政さん。読んでいて気持ちよかった。
読んでてハッとさせられた部分は、
原則の選手への落とし込み方。言語化は必要だが弊害もあるとのこと。ポステコグルーやオシムなど、論理的に見えるチームを作る監督ほど、選手たちに落とし込むときに言語化していない。言わなくても分かるよう、工夫して伝える。サッカーに限らず、教える側に立つときに意識したいことだと思った。
どんなものでも、背景や理論がわかれば魅力的になる。サッカーも自分なりに論理的に解釈できれば、魅力をより感じられるだろう。そういう見方ができる指導者やサポーターが増えれば、日本のサッカーももっと楽しくなるだろうなと期待させてくれる本だった。
Posted by ブクログ
ピッチレベル、フットボールインテリジェンスに続けて拝読したが、3冊目ともなると、岩政さんのスタンスの一貫性がインストールされてくる。
「相手を見てサッカーをする」「原則を共有した上で、判断、技術と切り分けて語る」といったことは、これまでにも耳にタコができるくらい、刷り込んで頂いた感がある。
これらは、ある種、基本とも言えることだろうが、サッカーの現場では意外と語られていないため、岩政さんのサッカー界への貢献は大きい。(監督、コーチは全員読んでほしい。読んでなくてもいいから、知っていてほしいし、現場で、プレーヤーにシェアしてあげてほしい。でないと、サッカーにおける教育格差にすらなりそう)
今回、登場しているゲストたちもとても有益なことを共有してくれてる。鎌田さんの絶妙なポジショニング、内田さんのスペース作り、柴崎さんの遠近把握と相手を見た最適な一手など。
原則が9つ出てきたが、自分が自然とやっていたけど、言語化までしてなかったものもあれば、曖昧だったものもある。
例えば、ゾーンでマークの受け渡しをしていたから、FWの斜めのランに背後のやつが付いていくという原則にはやりきれていなかった。守備の5人目も、シフトさせていたが、追いついてなかったり。相手のボランチに誰が行くのかも決めてはおらず、甘かった。
けっこう地味に衝撃だったのは、今思えば基本のような、「相手を自分に引きつけてから、パスを出す」というのが慌ててしまっていたりで不十分だったなと。それをスペインでは7歳で教えられているなんて。。
この本の1番のメッセージは、原則を共有すること。
そして、判断は選手に委ね、練習でその判断を磨く機会を多く持つこと。それが、選手にとっても、チームにとっても、資産になっていく。
サッカーチームにとって本質的に重要なことって、会社経営に通ずるから、サッカー好きはもちろん、ビジネスマンにとっても読み甲斐のある本になっていると思う。
以下、個人的な見返しメモ↓
・「バリエーション」ができると、相手の動きに対して、次の展開を設計できる。逆をつける強さになる。
・「中途半端」は「徹底」に分が悪く、「徹底」は「バリエーション」に分が悪い。
◎現象がなぜ起きたのか?原則?判断?能力?
・日本において、サッカーの原則について語られることが少な過ぎる。
・ロストフの14秒で気になったのは、どういう判断をしたか、どういう能力の差があったかではなく、そもそも「サッカーの原則」が頭にあったかどうか。
◎数的不利の状況で3人で守るとき、ペナルティエリア5m前まで下がる。(ミドルシュートと裏のスペースをケアできるため)【原則1】
◎相手の背中側で対応できる後ろの選手がマークする。(ラインブレイクを狙うFWの斜めラン)【原則2】
◎判断について指導してしまうとそのチームが成長しない。躍動感がなくなる。
・スペインでは2対1で引きつけて出すというのは7歳で学ぶ
◎各エリアで数的優位を作る。引きつけて出すのを繰り返せば、全体が崩れていく。
・「自分で考える」。そのために教えない。あるいは真逆のアプローチ、全てを教える。どちらかに振り切れてしまっている指導者は多い。
◎指導者が与えるものは原則。選手に考えさせるところは判断。
◎ボールを受ける前に、ゴールと結んだ線上にディフェンダーが立とうとするならば、そこから外れる。(ベクトルがズレ、逆をつきやすくなる)【原則3】
◎『攻』から『守』を早くするためには、相手の横にいない。(カウンタースペースを与えるリスク)【原則4】
◎横幅68mは4人では守れない(どのエリアを5にしようとしているのかを見る)【原則5】
◎低い位置の守備の5人目が誰かを決める(中盤なら逆サイドを捨てる)【原則6】
◎高い位置の守備は、ボランチに誰がいくのか決める(あらゆる選択肢が生まれる場所をつぶす)【原則7】
◎ボールを受ける時に、角度をつける。(真っ直ぐ寄るとプレスを受けやすい。スペースを失う)【原則8】
◎近くと遠くに選択肢を持つ【原則9】
・ブンデスではバックパスがプレッシャーのスイッチになる。
・鎌田「わりとこの辺が空いてるな」というのが頭の中にある。「このフォーメーションでこのタイミングだから、ここが空く」というのはある。
◎裏へ抜けると、ボランチが付いてくるか、ディフェンスが付くか、曖昧になる。足が速くないなら、ここで勝つ。
◎相手のボランチとかディフェンスが「なんか嫌だな」と思うポジション取りをする
・いい位置にいれば、相手がどんなに良い選手でも戦い方はいろいろある。
・同じ方向を向くには理念。アントラーズは「すべてはかつために」。ファジアーノでは「子どもたちに夢を」。
◎名詞ベースの「パスサッカー」「ポゼッションサッカー」「カウンターサッカー」などのような具体的なものは必要ない。選手たちの頭を固定させてしまう。
・自分が出したいプレーを開示する。それを仲間も理解する。
・「やり直す」はいけなかったから止めるというネガティブな印象を含む。既存の言葉を疑いながら伝える努力をする。
・5レーンの原理は、相手の間に立つことが原点にある。ボールをもらうとき、相手とズレることだけを考える。
・マーカーから少しズレていれば、出しては最後にも
出せるし、ケアすれば、縦方向にパスを出せる。
◎多くの人が安易に言葉を選び過ぎている。特に「いい〇〇」はマジックワード。「いいサッカー」「いいシュート」「いい距離感」「いい崩し」「いいパス」「いいポジション」。
◎内田「ボールを持ったとき、基本的には、味方も含めて全員邪魔。適当でもいいから動き出してほしい。」
まずは裏。下げさせる。不用意に味方に近づいてほしくない。
◎柴崎「練習ではいろんなことをめちゃくちゃ意識しないとダメ。試合は自分を解放する場所。」「決め打ちすることはない。相手に反応する。」
◎選択肢はつねに1つだが、それがどんどん変わっていく。あえて言うなら、「遠いところと近いところ」に選択肢
を作っておく。
◎指導者が伝えるべきは、判断に必要な「判断基準」
Posted by ブクログ
本書で紹介されていたプリンシパルを一言で表するなら「原則をチームで共有した上で個別判断に任せる」ということになる。
これはサッカーに限らず、仕事も同じ。もちろん、私生活も同様だ。個人的には自分の家族には「7つの習慣」を必ず読んでもらうことにしている。何か悩みを相談されると、コヴィー氏の原則である「7つの習慣」ではどのように考えると良いと説いているだろう?と一緒に読み解き、考えることにしている。
本書に話を戻そう。岩政さんは原則をチームに浸透させることが日頃のチーム練習の目的であり、その手段として理想的な連携プレーを切り出して反復練習し、本番で無意識でできるようになることを目指すという。
その結果として、そのチームらしさが宿るんだろうなぁ。そこまでサッカーを理解できると観戦の楽しさの深みに手が届くんだろうなぁ。体験してみたい。
Posted by ブクログ
原則、判断、能力と3段階の構成要素のうち、サッカーの原則とは何かに焦点を当てた本。
また、様々なタイプの選手と対談において岩政氏のいう原則を各選手色々な言葉や感覚で感じており、概念は皆共通であると思うが、その言語化、感覚は各者各様で興味深い。原則を育成年代に指導する際も言語化した方が理解できる選手、感覚で感じる選手などいるので伝えかたも重要と考える。
Posted by ブクログ
ピッチの中で起きる「現象」に選手が対応する際に必要なことを「原則・判断・能力」の三つに分けることでサッカーという競技を明快に「言語化」してみせながら、一方では指導するに当たっては安易に言語化することを戒める。曰く「判断は選手の特権である」。当時の鹿島のチームメイト達との対談を通じて持論を肉付けしつつ、強豪だった頃の内情が窺えるエピソードが面白かった。
Posted by ブクログ
著者の岩政さんは現役時代から好きな選手の1人です。
今回、初めて岩政さんの本を読みましたが、選手時代の経験があるのはもちろんなこと、言語化することに非常に優れている方だなと改めて思いました。
今までは選手の能力や戦術などを中心にサッカーを見て評価することが多かったですが、サッカーの原則などにも視点をむけた上で改めて観戦してみたいと思いました。
Posted by ブクログ
「現象」だけで「判断」を話してしまうと、結果論ベースになってしまう。そのためにも「サッカーの原則」を前提として理解し、判断の評価をしなければならない。岩政はこの「サッカーの原則」が日本サッカーには欠けていると指摘する。自由度の高いスポーツであるサッカーは、瞬時の出来事に対応し、「判断」しなければならないため、原則を染み付かせなければならない。
現在は上武大学ん指導者としても活躍している岩政だが、その指導者のあり方についても面白い持論があった。それは選手に判断を委ねる姿勢。指導者はリーダーとも言われ、強い影響力を持つが、それゆえに言葉で選手たちを縛ってしまう恐れがある。「言われたことをしっかりやる」文化を持つ日本においてはなおさら。日本サッカーは早くそれに気づくべきだと述べられている。