あらすじ
藤原道長が栄華の絶頂にあった一〇一九年、対馬・壱岐と北九州沿岸が突如、外敵に襲われた。東アジアの秩序が揺らぐ状況下、中国東北部の女真族(刀伊)が海賊化し、朝鮮半島を経て日本に侵攻したのだ。道長の甥で大宰府在任の藤原隆家は、有力武者を統率して奮闘。刀伊を撃退するも死傷者・拉致被害者は多数に上った。当時の軍制をふまえて、平安時代最大の対外危機を検証し、武士台頭以前の戦闘の実態を明らかにする。
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Posted by ブクログ
最後まで興味深く読めた。
永井路子さんの「この世をば」でチラッと出てきた時に気になったものの、調べることもなく、今になって良い本が読めました。
日本の外交姿勢が1000年以上経ってもあまり変わらないような気がしてしまって、何といったら良いのやら。
Posted by ブクログ
平安時代の外敵の侵攻事件を学術的に取り上げた本
平安時代における地政学といってもいいですかね。
歴史好きの理系として、単語は知っていたものの、特に気にも留めていなかった一幕であったので、マニアックな本だなぁ~と思い手に取ったところ存外に面白かった。
「小右記」(小野宮右大臣(実資のこと)の日記という意味らしい)の記載をベースに、様々な文献的考察を踏まえ、どいう経緯で起こったのか、さらに歴史の文脈の中でどう解釈されていったのかを述べていて、なんというかスタンダードな歴史研究の書という感想です。
女真族の侵攻ルートが「日本史サイエンス」で触れられていた蒙古襲来のパターンと非常に似ており、これは女真の海賊を討伐にあたっていたのが高麗軍で、元寇も高麗軍が主力だったことから、やっぱり「歴史は繰り返される」と。月並みですが。
翻ってみると、現代においても地政学的リスクは変わってないじゃんと思い立ち、地形によって民族の攻防は自動的に決まってしまい、人って進歩しないんだな、と少し気持ちが沈んで閉じました。
本は面白かったんですけどね。