【感想・ネタバレ】ふところ手帖のレビュー

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Posted by ブクログ

子母澤寛は、118年前の1892年2月1日北海道石狩市生まれの小説家。

現在ではほとんど読まれなくなったといってもいい存在ですが、それでも近くの小さな書店を覗くと、『新選組始末記』『勝海舟』『味覚極楽』の三冊の文庫が置いてあって、これには、さすが今の時代劇ブームの隆盛を知る思いで感心しました。

でも、他でもなく、子母澤寛の真の真骨頂は、あの不朽の名作・座頭市の生みの親だということにあります。

しかも、それは彼の得意な長編小説のかたちで私たちに提出されたものではなく、随筆集である本書の中の「座頭市物語」という、わずか10頁のショートストーリーが発端なのですから驚くではありませんか。

江戸時代に知れ渡った房総地方の侠客を取材するべく現地を旅した折に、あの飯岡助五郎一家にわらじを脱いでいる盲目の侠客・ばくち打ちがいて、目が見えないにもかかわらずサイコロの丁半を見事に言い当てたという話を聞き及んで、俄然、その座頭の市に関心を持って、あっというまに10頁ほどの物語を作ってしまったというのです。

すべては、そこから始まったのでした。

映画は巷間伝えられる『座頭市物語』(1962年)ではなく、1960年の『不知火検校』からはじまって『新座頭市物語・笠間の血祭り』(1973年)に終わる26本の作品と、1989年に勝新太郎自らがメガホンをとった『座頭市』により、圧倒的な暴力と人情をもって私たちに迫ってきます。

それにつけても、その後、この日本時代劇史上もっとも傑出した物語の栄光と、勝新太郎という不生出の俳優の殺気迫る名演技に感涙してか、少しでもおこぼれ頂戴とばかりに勢い勇んでリメイクした、ビート北野の『座頭市』と綾瀬はるかの『ICHI』は、残念ながら見るも無残な失敗作、というか、前者は、それなりの猿真似は出来るけれど、カツシンの気風と迫力の足元にも及ばないことをわざわざ立証したり、後者は、綾瀬はるかの気丈なりりしい可愛らしさだけが目立って、座頭市の本質である虐げられた者ゆえの非情さをスポイルしてしまっていて問題外の感じですが、もっともアイドルが有名人役を演じるという名作路線というのなら、はるかちゃん、あなたはイケテますことよ。

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2012年02月22日

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