松濤明のレビュー一覧

  • 新編 風雪のビヴァーク

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    叙情的ではあるが感傷的ではない。パリッとした記録としての文章もあれば、分析的、感情的な一面もあり人間味に溢れる。
    詩人ではないけれど雄弁な言葉を持つ登山家であり、その語彙力と表現力は随一。
    山を登らない人間にもその凄みが伝わるのではないか。
    死の間際のメモはどこまでも生命に溢れており逆説的かもしれないが死が生を生たらしめているのではないかと感じざるを得ない。

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    2023年12月21日
  • 新編 風雪のビヴァーク

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    山岳用語がたくさん出てきて、岩登りをやらない自分にはわからない言葉ばかりだったけど、それが問題にならないほどの筆力と意志の強さに惹きつけられて一気読み。
    加藤文太郎と同じ北鎌尾根で遭難したのを知らずに読んでいて、「何トカ湯俣マデト思フモ」というところで「孤高の人」の最後のシーンが蘇ってきた。
    風雪の中でしたためられた手記の最後は、借りたお金の覚え書きで終わっていた。雪山で死ぬつもりは毛頭ないけども、果たしてこんな境地で最期を迎えられるだろうか。

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    2013年06月03日
  • 新編 風雪のビヴァーク

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    学生と社会人の、登山への考え方の違いを論じた部分(p443/563 S23.7)が印象的だった。
     自分で働いて(稼いでから)山に行く人間は、初めから権利の概念が強い。汽車賃だって、、、みな俺が稼いだものだ。わずかな暇を盗んで山に行くのは俺自身の努力でかちえた当然の権利だ。・・・どうしても享楽的になる。・・・楽しいということが第一になる。 (順番は逆だが)学生で親の脛を齧って山に行く奴は、山に行けば行くほど良心がとがめる。・・・せめて遊びに終わらないようにと考え、やり甲斐のある登り方、文化的意義のある登山をしようと努力する。そこに登山の進歩が生まれる。・・・(以上引用)とあった。
     自分の登山

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    2013年01月01日
  • 新編 風雪のビヴァーク

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    松濤明の名著が文庫で復活。
    学生時代にどれだけ、この本を捜し歩いたことだろう。

    戦前、戦後時代の登山記録だが今の次代に見ても凄い記録を数々うちたてた天才クライマーだと思う。
    いつかは彼の歩いた道を追ってみたい。

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    2010年11月22日
  • 新編 風雪のビヴァーク

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    遭難を美化できないが、文学的なセンスが彼の真っ直ぐな生涯を際立たせ、最後は涙なしでは読み進められない。

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    2024年04月20日
  • 新編 風雪のビヴァーク

    Posted by ブクログ

    まず、「しょうとう あきら」だと思ってた。登山界の伝説みたいな岳人の名は「まつなみ あきら」。遭難死した時、若干26歳10ヶ月。
    とは思えないレベルの文章力と山行の両立ぐあい、と、それらしい若い情熱。
    学生登山と社会人登山の流れや、極地法への疑問など、昭和初期の開拓の空気や、その上に立った松濤の先進的な思想がよくわかり、読みものとしてもまとまっている。

    本人の筆による山行報告とコラムがいい。それに付随する解説も助かる。最期となった「風雪のビヴァーク」部分の考察はまさに「後進の参考となる」内容。グラム単位で重量計算し、事前に荷上げし、緻密に緻密に練り上げた山行でも、計画通りに進められない状況に

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    2012年07月18日