近藤滋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
M.Cエッシャーという画家を御存知でしょうか。有名なのは水の流れに沿って水路を辿ると滝があり、その滝つぼが何故か最初のスタート地点に戻ってしまう「滝」、3階建ての塔の1階部分と3階部分がねじれてしまっている「物見の塔」、回廊状の階段を昇って一周するとスタート地点に戻ってしまう「上昇と下降」といった、一見自然に見えて、実は実現不可能な建築物を描いた”だまし絵”です。一度は御覧になったか方も多いのではないでしょうか。
普通なら一見して”不自然”に見えてしまう不可能建築が、なぜごく自然な印象を与えるのか、エッシャーが仕掛けた数々のトリックについて、著者が分析していきます。
遠近法による仕掛け、物の奥行や立体感を人間の脳が認識する癖を逆手に取った仕掛け、ありとあらゆる巧妙な仕掛けの存在を明らかにして行きます。作品中の、ほんの小さな建物や植物、”なぜ、ここにこんな人が描かれているのだろう”というような要素にも、実は鑑賞する人の意識を巧妙に導く仕掛けが隠されていた事がよく分かります。
文章だけでは表現が困難な視覚効果についてのせつめいでは簡略化した図を多用して、視覚効果をより読者が実感できるようにしているので、非常に納得感を得ながら読み進めることが出来ます。可能ならば、著者には是非他のエッシャーの作品の謎解きをしていただき、本書の続編を期待したいぐらいです。
私もエッシャーの絵は大好きで、大学生の時に行った展覧会で画集を購入しました。本書で紹介されているのは、ほんの5つの作品の謎解きだけですが、著者も述べているように画集をめくりつつ、他の作品のトリックの仕掛けを、自分で考えてみたくなりました。
本書で採りあげられているエッシャーの作品は、ネットで容易に鑑賞できるので、是非その作品を見ながら、本書ごご一読されることをお勧めします。 -
Posted by ブクログ
騙し絵をじーっと見るのは好きでしたが、分析したいとか謎が隠れているとか、そういう発想はなかった。エッシャーの見せてくれるマジックにただ驚くだけの一般人です。ここには庭園がある、ここまで来てみろといわれても、なにをどう解釈していいやら。
本書は、文章と絵を何度も見比べたり、理解に時間がかかったり、すらすらと読めるものではなかったが、一つずつわかる感覚は本当に楽しかった。解説してもらえるのはありがたく、作品への関心度が増す。
エッシャーの苦労、歴史、性格、作品以外のことも含めて庭園をちょっとだけ鑑賞させてもらえたような気分にさえなる。エッシャーの騙し絵は作品というより論文の域だが論文にはせずに、トリックが隠されているとも語らずに、しれっと世に出て、今も存在し続ける。学者にはならず芸術家を貫く、生き方というのかプライドというのか。作品が存在し続けることでつくられていく未来を、エッシャーはどう思い描き、想像していたのだろう。
印象深い作品は「描く手」
できるはずのない影
平面の紙がたわんで立体感を持たせた表現、
立体感のあるはずの手を平面に描いている、と言いたげな、矛盾のある表現の仕方。紙のたわみ、計算だけでは思いつかない人の生活感のような部分、AIが「?」となるようなところ、人っぽさがいいなと思った。 -
Posted by ブクログ
おもしろかった。
「エッシャーの騙し絵には、まだ知られていない——いや、少なくとも多くの人が気づいていない——トリックが散りばめられている」
エッシャーの絵画は、単なる「錯視のショーケース」ではない——
そのことを、見事に種明かししていく一冊。
主に語られるのは、エッシャーがいかに遠近法を“ハッキング”していたのか。
自然に見えるはずのない不可能図形を、どうすれば自然に見せられるか。
その巧妙なトリックの数々が、徹底的に解き明かされていく。
あまりにも緻密で、あまりにも計算され尽くした策略に、本当に驚愕してしまった。
エッシャーは、地元・長崎のテーマパーク「ハウステンボス」で、開園当初から推されていた作家。
「滝」をモチーフにしたアトラクションがあったり、グッズもたくさん売られていて、子供の頃から好きな画家のひとりだった。
……が、「子供の頃好きだったもの」というのは往々にして、その後の中二病、高二病、大二病……的な時期を経るごとに、過小評価してしまいがち。
僕も正直、いつしかエッシャーの作品を「子供だまし」のように捉えていたところがあった。
「技術はすごいけど、なんかアートとしては物足りないんだよなぁ」なんて思っていた。
けど、2018年に上野の森美術館で開催されたエッシャー展が想像以上に良くて、「これ、ちょっと過小評価してたかもな」とうっすら気づかされてはいた。
そして今回、この本を読んでみて、幾重にも仕掛けられた巧みな技術と意図に触れることで、ようやく「過小評価」という呪縛のようなマインドブロックを外せた気がする。
結論:エッシャー、大好き。子供のころから、ずっと❤️
※代表作『滝』の1000ピースパズルを、子供の頃に持っていた。
組んでは崩し、また組み直し……何周も繰り返した記憶があるので、細部までけっこう覚えていたのだけれど、“ほんの一つの角のでっぱり”とか、“ブロックの重なりの数”とか、そのすべてに意味と意図があったなんて、まったく気づいていなかった。
これはもう、30年越しの伏線回収。
本当に心が踊るような読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレものすごい本を読んでしまった!エッシャー展を観て衝撃を受けたので、気になって手に取った。エッシャーの作品への理解が深まり、エッシャーの魅力を再発見することができた。不可能建築のトリックだけでなく、エッシャーの作品傾向、エッシャーの人生、錯視図形、透視図法までを深く知ることができる。エッシャーの作品に対する執念というか、情熱というか、探究心というか、そういうものを強く感じることができて、とてもおもしろかった。不可能建築を可能に見えるようにするためのたくさんの工夫に気づかされ、私はただただ驚くことしかできなかった。エッシャーもすごいけど、エッシャーのすごさを分かりやすく詳しく解説してくれた作者さんもかなりすごい。目からウロコボロボロ本だった。読んでよかった。
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Posted by ブクログ
五つ星では足りない!!
えーっ!もう終わりーと思ってしまうほど面白かった。エッシャーのだまし絵「物見の塔」、「上昇と下降」、「滝」を中心にエッシャーの仕掛けたトリックを暴いていく。
小学生の頃に「滝」をみてから、展覧会にも何度かいって長い間エッシャーのファンだったにもかかわらず、エッシャーのことを全く理解してなかった。こんなにも計算し尽くしていて、過去の自分を乗り越えようとしていて、作品への執念ともいえる姿勢を保ち続けた人。しっかりと作品をみればもっと理解できていたであろうに。
画集を横に置いて、読みながら、調べながら、時に他の作品もみながら、エッシャーの作品
もこの本の解読もともにたっぷり味わった。
いい時間だったなー。
下手な推理小説よりずっとドキドキするし、満足もする。
エッシャーの庭園に少しだけ足を踏み入れることができた気がした。
近藤滋さんの洞察力と勇気に感謝! -
Posted by ブクログ
ネタバレエッシャーの絵は好きだけど、苦手だ。すごく自然で、いかにもありそうなのに、どうにも現実にはあり得ない、見れば見るほど分からないあの感じを、どうなってるの?と3周くらい眺めたところで、ふと現実が揺らいでいく感覚に陥ってしまう。
自分が見えているものなんて、どこまで信じていいか分からないかもしれないよ、なんて。
錯視の謎は、きっと数学的で、私の理解がさっぱり及ばないところにあるような気がしていたけれど、それを丁寧に解説してくれるなら、そんなの絶対読みたいじゃないか。
数学的な解説だったらどうしようか、難しい数式が出てきたら完全にお手上げだと思っていたけれど、そんなことはなく、どうやってこの不可能な絵を作っていったのかが、著者がたどった試行錯誤とあわせて書かれているので、すごく分かりやすかった。
謎を解き明かされてしまえば、そういうことなのね、という感じ。
解説を経てひと通り納得しても、再度絵を見ればやっぱり不思議で、ちょっとだけ現実がグラっとはしなくなったけれど、多分自分の部屋にはエッシャーの絵は飾れない。
最近、クレイジージャーニーで立体錯視の方も出ていて、あれもあれで、気持ち悪い(誉め言葉)のだけれど、少し角度を変えてみたら、まったく違う形をしていることが分かるだけに、二次元の気持ち悪さは別格と、改めて思う。
それにしても、人間の視覚の曖昧さよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「完全解読」の名に恥じない好著。
騙し絵で有名な、誰もが知るエッシャーの絵は、錯視図形の応用で具象的な光景を描き実在するかのようで、実際はありえない風景の中に観る者をいざなうのが魅力であるが、本書は、そこに錯視、錯覚以外の驚くべき仕掛けが隠されていることが明らかにする。
答え合わせをしてみれば、なんだそんなことか、という感じで、本書の中でも著者は、手品の種明かしをしている無粋な行為かもと反省弁も述べているが、3つの秘密は実に簡単なというか、えっ、そんな細工で騙されてたの? と思うようなもの。
だが、それを推理し、エッシャーの心理にも迫り、なぜそこまで拘ったかを、さかのぼり読み解いていく過程が読み応えある内容になっている。
エッシャーもそうとうな完璧主義者であるが、
「どう考えても存在しえない構造の建造物を、限りなく自然に描くことで、実在しうると錯覚させること」
という、エッシャーの究極の目的に辿り着いた著者の執念も見事だ。
その著者、生命科学の研究者であることに驚かされる。逆に、美術の専門でもなく、エッシャーが応用した数学の専門家でもなかったところが、謎解きに奏功したとも思わせる。科学者の目を通してエッシャーを読み解くことで、美術の深淵をのぞき込むことができるというもの。その探求の過程や、異分野からの視点も思わぬ糸口になるという、新たな気づきも得られる。
「遠近法自体がある種の錯覚である」
この、当たり前だが、2Dの絵画を見るときに、もはや疑問を呈することもない遠近法(正確には線遠近法)そのものが、「錯覚である」とエッシャーが考えた、というエッシャーの思考の内側にまで踏み込んだ、著者の大いなる勝利の賜物の一冊。 -
Posted by ブクログ
なかなかの読み応え。
美術館で1度エッシャー展を訪れたことがあるが、そのとき少しは解説されていたのだろうか。20年ほど前で記憶が定かではなかったので、改めて解読し、難解な部分も沢山あったがとても楽しめた。
エッシャーの絵は緻密で数学的だと思っていたので、数学が苦手だったことにはビックリ。
天才の一言で終わらせず、筆者の想いも少々上乗せされているかもしれないが、エッシャー作品を鑑賞する際の補助本として面白い1冊だった。
筆者は生物学者とのことなので、
エッシャーの昆虫の作品、架空生物のでんぐりでんぐりなどについての解説も触れてほしかった。