五十嵐敬喜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
表題の「土地は誰のものか?」という問いを今まで意識することなく暮らしてきた。「まぁ誰かのもの」くらい。本書を読み終わって街を歩いていると、街の風景の見方が変わった気がする。「土地」を意識して歩くようになった。
本書を通じて、明治時代に確立し現代にまで残る個人の「絶対的土地所有権」は、日本の歴史で見ても、海外と比較しても、主流とはいえないということがわかり、時代の要請に応じて変遷すべきものだと認識した。少子高齢化が猛スピードで進む中、東京一極集中により東京の地価は上がり続ける一方、地方の空き家空き地は増えていく現代において、筆者のいう「現代総有」は検討に値すると思う。
また、本書は「土地」に -
Posted by ブクログ
令和二年、30年ぶりに改正された「土地基本法」。これまで自由主義的な「不動産所有=権利」という発想のもと運用されてきた日本の土地政策が、不動産所有には権利のみならず「管理義務」が付随するとの概念構成のもとで転換点を迎える。
著者によれば、昨今の所有者不明土地や耕作放棄地などの土地に関する問題の根源は、高度成長期の「日本列島改造論」に象徴される生活・産業インフラの大規模な整備過程において、それまでの住宅・生産の基盤としての土地の性格が後退し、代わって公共事業の対象、換価可能な資産としての土地がクローズアップされたことにあるという。過度に市場原理が適用されてしまった結果、市場性の高い都市圏の -
Posted by ブクログ
首都圏の高層マンション群、狭小住宅、地方都市の駅近傍のマンションや建売住宅などが建て続けられ、その住人は人生の大半をかなりの額のローン返済の呪縛にとらわれることは必定だ。
著者よればマンションは巨大な廃墟(廃棄したくてもできない)と化す運命だという。直観はしていたがやはりそうか。30年先なのか40年先なのか、詳しくは語られていない。なんとも絶望的な雰囲気が漂う。
そして急速に増加しているのが空き家・空き地だ。日本の絶対的所有権に基づく日本の法のもとでは行政も手をこまねいている、というか策がない。
一方、東日本大震災では復興のための都市計画が立てられた。しかし、著者はその計画は耳障りのよ