三山喬のレビュー一覧

  • ホームレス歌人のいた冬

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    2008年12月、「朝日歌壇」欄にあらわれ、翌年9月の入選作を最後に姿を消した、ホームレスと名乗る公田耕一さん。彼はどんな人だったのか、その後どうしているのかを追うなかで、ホームレスであること、失うこと、表現することなどを考える、得るものの多い一冊だった。

    刺さったのは、「目の前に手立てがなくなれば、生存そのものをあきらめる」人たちがいる、ということ。そんなになるまでに心折れる人生を生きた、生きさせられたのだ、ということ。

    はっとしたのは、表現することが人を救うということ。自分と向き合うことで、人としての尊厳を取り戻すということ。

    母も短歌を詠む人なのだ。彼の短歌をどう読んでいただろう。

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    2022年12月31日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    ネタバレ

    謎のホームレス歌人、公田耕一氏の正体を突き止めるべく、ドヤ街で取材をしたドキュメンタリー。

    取材の最中で出会った人たちや出来事の話が、心を打ちました。

    アメリカで殺人を犯し終身刑で牢屋に入っている歌人、郷隼人さんや、その郷隼人氏の短歌を教材につかって、ドヤ街で識字教育をした大沢敏郎先生、そして、政治家を目指していたがうまく行かず、ホームレス生活をしている田上等さん。

    人生波乱万丈なんてもんじゃない。

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    2021年09月11日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    ホームレス歌人をリアルで見守っていたものの、
    半分冗談かと思っていたが、やはり「連絡求む」の記事で
    急速に惹かれるようになりました。
    「伊達直人公田耕一その人を知りたくもあり知りたくもなし」

    自分は知りたかった。あなたがどんな風に生きてきたかを。

    あなたはいつも自分の心のどこかにいる・・・

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    2011年11月20日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    (柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ (ホームレス)公田耕一

     二〇〇八年の師走、住所欄に「ホームレス」と書かれた歌が朝日新聞の歌壇に載った。「柔らかい時計」は、ダリの描いたひしゃげてしまった時間感覚か。新聞は「連絡求ム」と呼びかけたが、今は連絡をとる勇気がないとのこと。翌年九月までに三十六首が紙面を飾り、そののち名前は消えた。「これは間違いなく共感を集める」と彼を探したが、空振りに終わったマスコミもあったようだ。

     著者は今年五十歳で、十年あまり続けたライター稼業の廃業を考えつつ、公田氏の行方を追う。ドヤ街の施設で、「クデンです」と名乗る電話を受けた職員に出会うも、消

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    2011年11月03日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    ネタバレ

    私は常々、言葉で表現することで絡まった自分の想いを整理し、そのことが自分にとっていかに重要かと実感していますが、著者はもう少し先に行って、どんな苛酷な環境にいても、言葉で表現することができれば、人は自分自身のまま生きていけるのではないかと述べています。

    他人に話すことに長けている人、絵で自分を表現できる人など人それぞれ得意な表現手段があるかと思いますが、私にとっては、それが言葉なのではないかと思います。

    言葉で表現できるうちは、自分が保てるのではないかと感じました。

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    2021年03月20日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    どんな人なんだろう?知りたくて一気読み
    この寄る辺なさは、学生時代聴いたトムウェイツにも感じたな [親不孝通りと言へど親はなく親にもなれずただ立ち尽くす]

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    2020年06月28日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    毎週月曜日の朝日新聞朝刊に、読者が投稿した短歌と俳句が掲載されます。私は短歌も俳句も全く素養はありませんが、何年か前、週明けの辛い出勤の慰めを求めて読み始めて以来、いまでは習慣のように目を通しています。

    その「朝日歌壇」に、2008年の暮れから約9カ月にわたってたびたび採用されたのが、本書の主人公「公田耕一(ホームレス)」です。住所として記される(ホームレス)というカッコ書きが異彩を放つことに加え、印象に残る質の高い作品が何度も入選したため、多くの読者の目にとまったのは自然の成り行きでした。

    ホームレス歌人への想いを歌った歌が投稿され始め、担当記者は住所を教えてほしいと紙面で呼びかけ(採用

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    2013年02月20日
  • ホームレス歌人のいた冬

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     「(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ」
    (ホームレス)公田耕一の名で2008年の暮れに朝日新聞の歌壇欄に載った一つの短歌。その後も「公田耕一」は歌壇欄を飾ることになります。

     短歌の知識も素養もない自分にはわかりませんが,その歌壇欄に自分の歌が載ることというのは相当難しいらしく,立て続けに掲載されたということ自体が驚きなのに,「ホームレス」という肩書きが読者の心を引き付けました。

     しかし,初掲載から9ヵ月後,突然この歌人は消息を絶ちます。著者は,あるきっかけから,果たしてこの歌人は実在したのか,今どこで何をしているのかを探ることになります。

     歌に出てきた言葉を

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    2012年03月13日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    母は朝日歌壇の愛読者なので、「ホームレス歌人・公田耕一」のことも、アメリカの「獄中歌人・郷隼人」のことも会話に上っていた。今、あの冬を思い出してみる。著者は元新聞記者だが、今や不安定な生活だ。もう身近な問題として「ホームレス」がある。数ヶ月、横浜に居ると目される公田を探すルポ。

    人はどんな境遇になっても「表現」することで人間であることの杭をうつことができることを知る。

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    2011年10月30日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    一時期、朝日新聞の歌壇で注視されていた1人のアマチュア歌人がいた。ホームレス歌人こと公田耕一。住所を記載するのが歌壇の規定であるにも関わらず、住所不定の彼が記した自身の居住地は(ホームレス)だった。

    その特異な肩書きと、ホームレスとしての生活感あふれる歌が多くの人の注目を集め、彼についての歌を寄せる投稿者が現れるまでになった。朝日記者が「名乗り出て欲しい」と呼びかける記事を掲載し、歌壇愛読者のみならず、朝日新聞購読者の間にも、かなりよく知られる人物となった。
    しかし、彼の歌が毎週のように掲載されるようになって9ヶ月、その投稿はピタリと止む。生きているのか、死んでしまったのか。公田耕一はどこか

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    2011年08月02日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    その名を見なくなってからもうずいぶんになるのに、毎週月曜日の朝日歌壇を開くと、いまだに紙面に「(ホームレス)公田耕一」とあるのではないかとつい探してしまう。歌壇を読む習慣のある人なら、そんな人は結構いるのではないだろうか。

    印象的な短歌を次々入選させ、反響を広げながらついに正体を明かさず、紙面から消えてしまった公田さんは今どうしているのだろう。著者の探索も結局は本人を捜し当てるには至らないのだが、それで良かったような、ほっとするような気持ちになる。著者自身もそう感じているようだ。

    「百均の『赤いきつね』と迷いつつ月曜だけ買う朝日新聞」この歌は、朝日歌壇の担当者が公田さんに連絡してほしいと呼

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    2011年10月06日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    いつものように、新聞を見ていたときにふっと朝日歌壇に目が行きました。
    いつもなら、見もしないページ。
    なのに、目が行ったのは野生のカン。
    何だか、注目すべきことがありそうな気がする。

    パーッと目を走らせて釘付けになったのが「ホームレス」という文字。
    通常、投稿され選ばれた短歌とそれを作った人の住んでいる都道府県名または市町村名と名前が記載されています。
    その住んでいる部分が「ホームレス」

    へぇ、風流な家のない方もいるもんだ、とその時は思っただけで。
    本当に、そう思っただけだったのですが。
    気付けば毎週月曜日には朝日歌壇に目を走らせる習慣となってしまいまして。

    新聞には

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    2011年05月24日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    寿町、昔はほんとに怖い街だったけど、今はそんなになったんだ。関内の周りは浮浪者(って昔は呼んでた)たくさんいたもんなあ。どんな事情があって人と関わりたくないのか、わからないけど。ほっといてくれって人に救いの手を伸ばす人たちってすごいよなあ。私なら絶対嫌になる。

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    2025年09月07日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    ネタバレ

     ホームレス歌人、公田耕一(投稿用のペンネーム)、36首を。三山喬「ホームレス歌人のいた冬」、2011.3発行。①鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか ②パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる ③百均の「赤いきつね」と迷ひつつ月曜だけ買ふ朝日新聞 ④温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る ⑤一日を歩きて暮らすわが身には雨はしたたか無援にも降る

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    2023年11月01日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    9ヶ月の間、短歌を朝日新聞に投稿し続けた歌人、公田耕一。
    住所はホームレス。

    彼を探すべく、特定すべく筆者が取材を重ねる。

    本当に探す必要があったのだろうか、
    探さなければ、また投稿があったかもしれない。

    それ以前に彼は本当にいたのだろうか、
    公田耕一は一人なのだろうかなど、
    いろいろ考えてしまった。

    「パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる」
    「日産をリストラになり流れ来たるブラジル人ととなりて眠る」
    「温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る」

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    2020年02月05日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    ネタバレ

     横浜のドヤ街の詳細なレポート……ではあるけれど、結局公田氏には出会えず。インテリなホームレスとして紹介されている田上氏(菅直人氏の旧友で、仲人もしてもらった間柄とか)は、その後色々なメディアに出て、社会復帰されたようですね。ネット上では田上氏=公田氏としている人もいますが、この本の後にそんな発表あったんでしょうか? ち、違いますよね……?
     朝日歌壇の選歌風景が垣間見られたのは思わぬ収穫でした。

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    2011年09月21日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    短歌にまつわる評論や歌人のエッセイ・歌集は、それが凝縮された感情を取り扱う言葉をめぐるものだから、こんなにも余韻が深いのだろうか。
    自分自身の内面に向き合って、言葉をつむぎ表現するということによって、再確認されたり昇華されるものは確かにあるし、それが言葉の力であろう。生きることにとって表現とはなんと大きな意味を持っているのだろう。
    個人的な生活から生まれることばが短歌となることで、全く別の生活を営む私の内面にも端的に飛び込んでひろがりをもってくる。紹介された作品のいくつかは、すっと私の中に入り込んできた。

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    2011年08月21日
  • ホームレス歌人のいた冬

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    三山さんの立場が、バリバリのジャーナリストだとしたら、皆があそこまで心を開いただろうか。公田耕一は全てを分かった上で身を引いた。謎のままが良い。

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    2011年08月05日